ヤセる朝食とは?(写真はイメージです)

 

「ヤセたいなら、ダイエットをするよりまずは朝食を見直して」と断言するのは91Kgから20Kgも体重を落とした内科医。ではその朝食、太る食べ方、食べ物は? 和食と洋食それぞれで気をつけるポイントは?キモとなるのは「糖質コントロール」だ。

太る原因は糖質のとりすぎ

 いままで数多くのダイエット法を試しては挫折し、すでにあきらめかけている人も多いだろう。でも、今度こそ!と期待できるのが、医師の大塚亮先生が提唱する方法だ。

大塚亮先生・おおつか医院院長。医学博士。循環器専門医。

 私たちはやせようと思うと肉類を避けたり、カロリーを控えたり、運動に頼ったりしがち。

 だが、大塚先生は「カロリーを気にするなんてナンセンス。糖質のとりすぎによる血糖値の乱高下が太る本当の原因です。それは朝食のとり方で改善できる」と言う。

 糖質は私たちの身体にとっては必要な栄養素だが、とりすぎると脂肪に変わるというのはご存じだろうか。

 そのメカニズムはこうだ。糖質をとりすぎると、血糖値(血液中にどのぐらい糖が存在するかを示す値)は急上昇する。消化器官で糖はブドウ糖に変換されるのだが、このブドウ糖は生命維持に欠かせないエネルギー。だから身体はインスリンを分泌させ、これを蓄えようとする。

 ところが、糖が体内に蓄えられる量には限界がある。これを超えてしまうと、今度は脂肪に変わってしまうのだ。

血糖値が急上昇するとインスリンが大量に分泌され、糖をどんどん脂肪に変えてしまいます。糖と違って脂肪は貯蔵の上限がないので、増えるいっぽう。糖質をひんぱんにとることでこの状態が1日に何回も起きると、どうなるか考えてみてください。太りやすくヤセにくい体質ができあがってしまう」(大塚先生、以下同)

 日本人の食生活はここ何十年で、糖質の摂取量が圧倒的に増えている。手軽に食べられるパン、おにぎり、麺などは満腹感を得られやすく、それだけで食事をすませてしまう人も少なくない。

 それに加えて問題となるのが日本人のおやつを食べる習慣だ。スイーツや清涼飲料など、糖質をとる機会はそこここに転がっている。

「僕自身、忙しい勤務医時代は、食べられるときにコンビニ弁当やパンをかき込むように食べていたら、とうとう90Kg台に(笑)。あきらかに不規則な食生活と糖質のとりすぎが原因でしたね」

●糖質が脂肪に変わるワケ

・糖質をたくさんとる
 ご飯、パン、麺などのほか、甘いものや果物にも糖質は入っている。清涼飲料水のブドウ糖果糖液糖には要注意
    ↓
・血糖値が上がる
 血液中のブドウ糖が増加、あっという間に高血糖状態に
    ↓
・インスリンが分泌される
 血糖値をコントロールするインスリンが分泌され、体内にブドウ糖をため込もうと指令を出す
    ↓
・糖が蓄えられる
 インスリンの指令により、糖が蓄えられるが、糖の体内貯蔵量には上限があるので……
    ↓
・余分な糖が脂肪になる!

血糖値コントロールは、朝食のとり方がカギ

 糖質の過剰摂取がよくないのはもちろんだが、空腹が長く続いたあとに食事をとるのは輪をかけてよくない。これは規則正しく食べたときに比べ、「血糖値スパイク」といわれる血糖値の急上昇を起こし、肥満につながる最悪の食べ方だ。そのうえ、脳梗塞や心筋梗塞、がん、認知症などさまざまな病気を引き起こすとまでいわれている。

「食欲が出ないから、時間がないからといった理由で朝食を抜き、昼にペコペコになった状態で大量に食べるなんていうのは、いちばん太りやすい食生活。ヤセたいなら、朝食を見直すのがいちばん効果的。朝食さえ工夫すれば、血糖値の急上昇を防げるだけでなく、その日1日の血糖値をコントロールでき、太るメカニズムから脱出できます」

朝食を食べた人と抜いた人の血糖値の推移のグラフ。朝食を抜くと昼食後に急激に血糖値が上昇しその後も変動する「血糖値スパイク」が起きることがわかる

 では、ダイエットのための朝食とは、どんなものをどんなふうに食べればいいのか。

いちばん大切なポイントは食物繊維をたくさんとること。これにタンパク質と適度な糖質を加えたバランスのよい朝食が理想的です。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、それぞれ役割を持っています。前者は小腸で粘性を増して糖質をからめとり、後者は便のカサを増して糖質の吸収を遅らせ、排出を促してくれる。この相乗効果で食後でも血糖値の急上昇が起こらないのです

●食物繊維は2種類あり!
→両方をバランスよくとるべし

・水溶性食物繊維が多い食材
 こんにゃく、もち麦、大麦、玄米、アボカド、ひじき、わかめ、納豆、オクラ、きくいも
・不溶性食物繊維が多い食材
 大豆、セロリ、ごぼう、ブロッコリー、きのこ類、いんげん

 さらにうれしいことに、この効果は朝食後だけではなく、昼食後まで持続するそう。

「昼食はどうしても糖質の多い麺類や丼ものなどになりがちですよね。本来、このような食事をすると血糖値が急上昇して太る原因になりますが、食物繊維たっぷりの朝食をとってさえいれば、『セカンドミール効果』といって、血糖値はゆるやかにしか上がりません。1日を通して血糖値が安定していれば、糖が脂肪に変わることを避けられる」

 つまり、朝食にさえ気を配っておけば、お昼は気にせず好きなものを食べてもやせられるということ。たとえ糖質主体の食事であっても、だ。

「さすがに夜まで効果は続かないので、夕飯は糖質少なめを心がけてほしいのですが、これだけでも2か月程度で4~5Kgは減ります」と、大塚先生は太鼓判を押す。

「ヤセ朝食の条件は3つありますが、あまり厳密に考えず、最初から頑張りすぎないこと。続かなければ意味がありませんから。無理に品数を増やそうとせず、丼ものにしたり、パンにのっけたりしてできるだけ簡単に。献立が1パターンだってOK。便利な食材や調理器具をフル活用し、できるレベルでとにかく継続しましょう。そうすれば必ず効果が出てきます」

ヤセ朝食を続けることが大事 イラスト/陶山みづほ

ヤセ朝食で太りにくい体質に

 食物繊維は水溶性と不溶性、2種類合わせて1日20g前後とるのが理想的なので、朝食で5~10gはとりたいところ。

「朝食を食べていても、野菜ジュースで野菜をとったつもりになっていたり、美容にいいとフルーツをたくさん食べたりしているのなら逆効果。これらには内臓脂肪を増やす果糖が入っています。確実にやせるには、太るメカニズムをしっかりと理解し、それにのっとった方法を実践すること。このヤセ朝食は太りにくい体質に改善されるので、リバウンドもありません。僕もこの方法で20Kgダウンに成功しましたよ」

 いまから始めれば春までにはきっと結果が出るはず。さあ、トライあるのみ!

【要注意】こんな食べ方&食べ物は太る!

・忙しくて朝食を抜くことが多い

 空腹のあとの食後は血糖値が急上昇する

・野菜は野菜ジュースでとる
 不溶性食物繊維はないに等しく、添加物の果糖がたっぷり

・菓子パンやおにぎりだけの食事がある
 ほぼ糖質なので血糖値の急上昇は避けられない

・朝はフルーツとヨーグルトをたっぷり
 フルーツには果糖もそれなりに入っている

・フレーバーつきのミネラルウォーターをよく飲む
 甘味は添加物のブドウ糖果糖液糖。血糖値を急上昇させる

●ヤセ朝食の3条件
【原則1】食物繊維をたっぷり!(5~10g以上)
【原則2】タンパク質をしっかり!(10~20g以上)
【原則3】糖質は適度に!(30~50g)

《パン食》
・全粒粉パン
→白い食パンよりは食物繊維が豊富なこちらをチョイスして
・ほうれん草と玉ねぎのチーズオムレツ
→スキレットで野菜を炒めたら卵液を回しかけ、チーズをのせて仕上げの加熱はオーブントースターで。野菜はなんでも応用が効く

「ほうれん草と玉ねぎのチーズオムレツ」と「全粒粉パン」 イラスト/陶山みづほ

〜ほかにもこんなメニューで〜

・ミネストローネ……材料と作り方(2人分)
(1)にんじん、セロリ各1/4本、玉ねぎ1/4個、ベーコン1枚は1cm角に切る。
(2)鍋にオリーブオイルを熱し、(1)を炒めたら、トマト水煮缶半分、水1/2カップ、顆粒コンソメ小さじ1を加える。煮立ったら弱火で5分煮る。
(3)塩・こしょうで味を調える。

ミネストローネ イラスト/陶山みづほ

・キャベツの巣ごもり卵……材料と作り方(1人分)
(1)キャベツ3枚はせん切りにし、耐熱皿に盛って中央をくぼませ、卵を割り入れる。
(2)ラップをかけて電子レンジ(600W)で1分半加熱し、塩と粗びきこしょうをふる。

キャベツの巣ごもり卵 イラスト/陶山みづほ

《ご飯食》
・アボカド納豆わさび丼
→アボカドを切って納豆と混ぜたら、添付のたれで味つけしてご飯にのせるだけ。ご飯は血糖値が上がりにくいもち麦入りがおすすめ
・わかめとレタスのサラダ
→乾燥わかめを使えば、混ぜるだけでできるサラダ。味つけはごま油と塩だけ。レタスの代わりにサラダ野菜ならなんでもOK

「アボカド納豆わさび丼」と「わかめとレタスのサラダ」 イラスト/陶山みづほ

〜ほかにもこんなメニューで〜

・ツナとピーマンのごまマヨあえ……材料と作り方(2人分)
(1)ピーマン4個を縦半分に切って種とワタを除き、せん切りに。耐熱容器に入れてラップをかけ、電子レンジで2分加熱。
(2)ツナ1/2缶は汁けをきり、白すりごま、マヨネーズ各大さじ1、しょうゆ小さじ1と混ぜ、(1)とあえる。

ツナとピーマンのごまマヨあえ イラスト/陶山みづほ

・梅とわかめのスープご飯……材料と作り方(1人分)
(1)鍋に水250mlを入れて火にかけ、煮立ったらしょうゆ、ごま油各小さじ1を加える。乾燥わかめ大さじ1、梅干し1個は種を除いて加える。
(2)ご飯1杯を加え、4分ほど煮たら器に盛り、半熟卵をのせる。

梅とわかめのスープご飯 イラスト/陶山みづほ

ヤセ朝食を続ける4つのコツ

(1)作り置きをしておく

 朝の忙しい時間にすべてイチから作るのは大変。そこで、活躍するのが作り置き。冷蔵庫から出して器に盛るだけで食べられるものが1品あれば、心と時間にグンと余裕が生まれる。そのまま食べるだけでなく、野菜とあえたり、オムレツの具にしたりとアレンジが効くおかずならベスト。作り置きが難しいなら、ゆでるだけ、切るだけといった半調理だけでもやっておくとグッと楽に。

作り置きをしておくと楽 イラスト/陶山みづほ

(2)ワンパターン上等! 続けることが大事

「理想を求めて頑張りすぎて挫折しては元も子もありません。毎日同じメニューだってかまわない、くらいの気持ちが続ける秘訣です」(大塚先生)。おすすめなのは自分なりのパターンを決めること。例えば、卵で1品、切るだけの野菜で1品、作り置き1品などとあらかじめ枠を決めてしまったほうが、メニューが考えやすい。

(3)便利な缶詰や乾物を活用

 調理の工程を省くためにも積極的に使いたいのが、缶詰や乾物。缶詰でおすすめなのはさば缶やツナ缶。さば缶はみそ汁に入れたり、丼にしても。ツナ缶は野菜とあえるだけで立派な1品ができる。乾物なら、わかめ、切り干し大根、高野豆腐が栄養的にもグッド。カットわかめはどんな料理にも使いたい量を入れるだけでOKと、超手軽。切り干し大根や高野豆腐は汁ものやオムレツの具にもなる。

便利な缶詰や乾物を活用 イラスト/陶山みづほ

(4)洗いものを少なくして負担を減らす!

 ヤセ朝食を続けるためには負担を減らす工夫が必要。まず、鍋やフライパンをできるだけ使わない。そのまま器になるスキレットや、器のまま調理できるオーブントースターや電子レンジを駆使して。洗う手間を減らすには仕切りのついたランチ皿がお役立ち。また、ご飯なら丼ものやスープご飯、パンならピザトーストなど、主食とおかずを一体化しても。

洗いものを少なくして負担を減らす! イラスト/陶山みづほ
教えてくれたのは……大塚亮先生。おおつか医院院長。医学博士。循環器専門医。『ダイエット&糖尿病予防に効く! 簡単レシピで血糖値をコントロール「お医者さんが考えた痩せる朝ごはん」』など著書多数。

〈取材・文/野沢恭恵〉