眞須美死刑囚の長女と孫が心中した関空の連絡橋

「帰ってきたら娘の意識がない。血みたいな黒いものを吐いている」

 昨年6月9日の午後2時過ぎ、女性から119番通報が入った。

 和歌山県和歌山市のアパートで倒れていたのは、鶴崎心桜(こころ)さん(享年16)。病院に搬送されたが、全身打撲による外傷性ショックで死亡。明らかな虐待死で、通報は心桜さんの母親によるものだった。

 救急車に同乗した継父は病院へ付き添ったものの、その後は行方不明。和歌山港近くで発見されたが、意識は朦朧とした状態だったという。継父は警察の取り調べに、

「カフェインを飲んで死のうとしたが、死にきれなかった。大変なことをしてしまった」

 などと、心桜さんの死との関わりを認めるような供述をしていた。

眞須美死刑囚の長女が飛び降り心中

 一方、心桜さんの母親は到着した救急車には同乗せず、4歳になる次女とともに姿を消していた。のちに二人は車で大阪府泉佐野市の関西国際空港連絡橋(関空連絡橋)へと向かっていたことが判明する。そこで飛び降り心中を図ったとみられ、夕方にはともに遺体となって関西空港近くの海に浮かんでいた。母親は全身打撲による多発外傷、次女は水死だった。

 この亡くなった母親、実は'98年に起きた『和歌山毒物カレー事件』で逮捕された林眞須美死刑囚(60)の長女A(享年37)だった。つまり、虐待死した心桜さんは眞須美死刑囚の初孫であり、その名は眞須美死刑囚が刑務所で命名したものだった。

鶴崎心桜さんは虐待の果てに…

 事件発生から半年以上たった16日、和歌山県警は同県有田市の派遣社員で心桜さんの継父だった木下匠容疑者(40)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。さらに、Aも容疑者死亡のまま、同じ疑いで書類送検。地元紙社会部記者はこう説明する。

「心桜さんはAと前夫の間の子どもで、離婚後は前夫と暮らしていました。ですが、Aが木下容疑者と再婚すると、'18年10月からは彼らが心桜さんを引き取りました」

長女一家が住んでいたアパートの玄関前には、今でも幼児の遊具と自転車が並んでいる

 すると、少なくても昨年5月末あたりから、木下容疑者とAが共謀して心桜さんに身体的な虐待を加えるようになったという。

「昨年6月には、断続的な暴行によって心桜さんは衰弱し、身動きができないほどの状態になっていた。しかし、両容疑者は彼女を保護すべき責任があったにも関わらず、医療措置も受けさせず、放置して死亡させた」(捜査関係者)

 地元の児童相談所には、複数回の相談があったとされている。心桜さんの同級生はこう話す。

「中学校のときは不登校で、ほとんど学校には来なかった。卒業アルバムにさえ写真は載っていない」

 初孫を失い、さらにその母親で心中を図った自身の長女は保護責任者遺棄致死の疑いがもたれている。林眞須美死刑囚は獄中で何を思う−−。