工藤静香と愛犬の散歩をするKoki,(2020年)

 2月18日に公開された、木村拓哉と工藤静香の次女・Koki,の主演映画『牛首村』。女優の道を歩み始める“大型新人”の華々しいデビュー作になるはずだったが、思ったほどの結果を残せていないようだ。

「初週の興行収入ランキングは4位と悪くはない印象を受けますが、年末年始と春休み前はいわゆる“谷間”とされていて、話題作の公開が比較的少ない時期でもあります。

 そして肝心の興行収入は約1.2億円ほどと、同じく清水崇監督の『犬鳴村』(2020年公開)が初週2位で1.5億円と思えば検討した数字に映るかもしれません。ただ、大体的な宣伝活動やスクリーン数を踏まえると少々物足りなさは否めません」(映画情報サイト編集者)

 興行収入が見込める、期待される映画は全国の上映館数を増やすのが定石で、最終的に14億円を超えた、ホラー映画としては大ヒットとされる『犬鳴村』が210館であるのに対して、『牛首村』はというと321館。ちなみに木村拓哉主演の『マスカレード・ナイト』(2021年)は352館で公開されたことから、Koki,のデビュー作は成功ありきで製作されたのは容易に想像できる。

 2018年には『エル シネマアワード2018』にて、映画未出演ながら「エル ガール ライジングスター賞」を受賞したKoki,。もちろん、まだ公開1週目だけに今後“大化け”する可能性もある『牛首村』。

女優デビューしたKoki,の演技

 しかし、同作を鑑賞した映画ライターは「ちょっと、どっちつかず感が……」と言葉を濁らせる。やはり、モデルから鳴り物入りで女優“転身”したKoki,の演技に問題が?

「いえ、少々オーバーな部分は見受けられましたが、初演技とは思えない安定したお芝居だったのでは。細やかな演技を多くは必要としないホラーは、しばしばアイドルやモデルの“登竜門”として用意されがちですが、Koki,さんはすでに女優の雰囲気があるというか、さすがはキムタクさんの娘といったところ」

 では、何が“どっちつかず”なのか。同ライターは「公開間もないのでストーリーは差し控えますが」としつつ、感じた違和感を明かす。

ホラー映画は少なくともレイティングとして“PG12”、つまりは12歳以下の鑑賞には保護者の指導、付き添いなどが求められることが多い。アニメ映画『鬼滅の刃 無限列車編』(2020年)もこれに指定されていて、主に性や暴力、残酷な描写や違法行為などが含まれることを示し、さらに視聴規制がきびしくなるのが“R15+”や“R18+”といった、いわゆる“R指定”です。

 ところが、『牛首村』は全年齢が鑑賞できる“G”。レイティングを定める映画倫理機構が“刺激を与えるシーンはない”と認定した、言ってしまうと“怖くないホラー”だということ」

映画『牛首村』撮影で演技をするKoki,(YouTube『東映映画チャンネル』より)

 それでも作品全体を包む不気味な雰囲気や世界観、忍び寄る呪いの恐怖などの心理的描写は伝わるだけに、『牛首村』は子どもが鑑賞するには十分怖い作品と言える。家族揃って、もしくは子どもたちだけでも安心して観に行けるホラー映画のように思えるが?

「そうですね。ただ、ホラー好きな大人にすれば物足りないと言うか……。子どもに観てほしいのか大人に観てほしいのか、ターゲットがどっちつかずになってしまったような気がします。これまでの清水ホラーを期待して足を運ぶと“あれっ?”と思ってしまう部分があるかも」(同・映画ライター)

 確かにSNS上には、映画を観覧したネットユーザーからの好意的、否定的な感想も含めて《全然怖くない》《ホラー感弱かった》といった声が多く見受けられた。

“G”指定でKoki,を広くPRしたい

 観るものを恐怖させた『呪怨』シリーズなど、多くのホラー作品を手掛けたジャパニーズホラーの巨匠として、ハリウッドでも名が知られる清水監督。そんなホラーの申し子がなぜ、全年齢対象の「G」作品を撮ったのか。

 映画配給会社営業スタッフは、本来の清水監督は「恐怖演出には人一倍こだわりが強い」と事情を明かす。

必要ならば、過激な表現やグロい描写も取り入れることも惜しまない。まあ、監督自身が一番苦手とする分野なんですが(笑)。なので普通にメガホンをとれば、『牛首村』は少なくとも“PG12”作品になったと思います。小説版がそのまま完全実写化されれば“R指定”扱いでしょうからね」

 しかし、『牛首村』はただのホラー映画ではなかった。木村と静香の次女の記念すべき女優デビュー作なのだ。

ホラーに傾向すると苦手な観客から敬遠されて、ホラーファンばかりが楽しむ作品になりがち。他ジャンルとは違って興行収入が大きく伸びにくいのもそのためです。よって“女優・Koki,”を広くアピールするために、万人が観ることができる“G”作品として撮る必要があったのではないでしょうか。

 良くも悪くも彼女のために撮った印象。これはKokiさんサイド、つまりは静香さんの意向とは言いませんが、デビュー作にホラー映画を選んだのであれば、また女優として本格的に活動していくのであれば、世間のイメージを180度変える、あっと驚くような描写があってもよかったのかな、とは思いますね」(同・映画配給会社営業スタッフ)

 モデルか女優か、Koki,自身が“どっちつかず”にならなければいいけども。