尾上松也 撮影/吉岡竜紀

「鈴木おさむさんとは以前から“何かご一緒できたらいいですね”とお話しさせていただいていました。それが今回ようやく念願叶って。決定したときは、まずそれがとてもうれしかったです」

 3月4日から公演開始の舞台『怖い絵』に主演する尾上松也。作・演出の鈴木おさむとの初タッグが決まったときの喜びをこう語る。今作は、名画に隠された恐怖の背景を解説したベストセラーの美術書『怖い絵』(中野京子著)をモチーフにしたミステリー。松也は、投資家、絵画コレクター、復讐代行人という3つの顔を持つ主人公・絵田光を演じる。

「この3つの顔を持っている人間って、どう考えても変ですよね(笑)。ですが、僕もコレクションしているものがありますので、コレクターの気持ちがとてもわかります。普段は静かなトーンで話しているのに、その話になると急にワントーン上がって声が裏返ったりする気持ち悪いところを持っていて(笑)。そういう“ならでは”の感じが、自然に出てしまうようなリアリティーを出せたらなと思ってます」

尾上松也 撮影/吉岡竜紀

キャンドルにハマってます

 松也が声が裏返ってしまうほど熱く語るものとは?

「今ハマっているのは、スニーカーとキャンドル。スニーカーは200足くらいあって、もちろん全部履いたことがあります。キャンドルも常にストックが100個以上」

 キャンドルの魅力を尋ねると、熱い語りがスタート!

「香りとかではなく、あの火を見たいだけなんです。一時期はキャンドルをつけて、テレビのモニターで焚き火の映像を流していたことも(笑)。火は同じ動きがなく、ずっと見ていてもまったく飽きません。ですので、灯している間は何もせずに、ただぼーっと見ているだけ。火のゆらめきに癒されています。病んでいるわけではありません(笑)」

 共演は比嘉愛未、佐藤寛太、崎山つばさ、寺脇康文。全員、今回が初共演という。

絶対にスベると思ってたのに…

「寺脇さんは舞台を何度も拝見させていただいたり、楽屋でご挨拶させていただいていましたので、とても楽しみですし、比嘉さんは今回ただひとりの女性ですので、肩身の狭い思いをさせたくはないなと。佐藤さんはこの中でいちばんお若いんですよね。劇団EXILE、僕も入れてもらいたいです(笑)。崎山さんは、2・5次元でずっと活躍されていらして。2・5次元の舞台は僕もちょくちょく拝見します。漫画原作を歌舞伎にすることもあって、2・5次元はいろいろな技術を用いて新作を作られているので、ヒントをいただいていたりします。その中でも、崎山さんはとても表現力のある方だなと思っていましたので、ご一緒できることがうれしいですね」

 そして、念願の初タッグを組む鈴木おさむについては「とにかく面白い方」と語る。

「もはや何の職業がメインかわからない(笑)。放送作家なのか、プロデューサーなのか、演出家なのか、タレントなのか、大島美幸さんの旦那さんなのか。多才すぎですよね。常に楽しいことを探り出そうと、いろいろなところに目を向けていらっしゃるところを尊敬してます」

 バラエティー番組などで楽しいトークを聞かせてくれる松也だが、実は「普段は人見知り」なのだとか。

尾上松也 撮影/吉岡竜紀

「知らない方としゃべるのは得意ではないと言うと、みなさん“また〜”って言われるんですが、本当なんです。友達と話しているときに知らない方が来たら、会話しなくなってしまう。ですのでバラエティー番組で、面白いな、素晴らしいなと思う方はたくさんいらっしゃるのですが、“もしよかったら今度飲みに行きませんか”なんて、絶対に言えないんです」

 世間と自身とのズレについては、こんなことも。

「僕がバズったと言われているものって、僕自身は何ひとつ面白いことをしていると思ったものではなくて。最たるものが、どぶろっくさんと“大きなイチモツ”を歌わせていただいたとき。友達から“おい、バズってるぞ”と言われて動画がたくさん送られてきたのですが、僕は、もともとはイチモツ反対派だったんです(笑)。いろいろな方がなさっているから絶対スベるよと思って。でも番組の方もすすめるし“じゃあ、やるなら一生懸命やらせていただきます!”と、やったんですけど。まさかあんなにバズるとは。わかんないものですねえ」

 最後に舞台への熱い思いを。

「やはり僕の根本は舞台人ですので、お客さまの前で何かを披露することにいちばん幸福感を得ます。また演劇は、今よりさらに苦労が多い時代を生きた、全世界の先輩・先祖たちが歴史を紡いできてくださったおかげで、現在がある。進んだテクノロジーのおかげで実際に見に行かなくても見たような気分になれるツールもあって、そういう見せ方も試みていかないといけないのですが、そこだけになると生の舞台ではなくてもいいかとなってしまうような気がします。ですので演劇は残していくべき文化、やり続けるべきだと思っています」

“怖い”と思うものは?
「何だろう? 霊感があるほうではないので、幽霊も別に怖くないですし……。あ! 週刊誌(笑)。前に、1人でNIKEショップに全身NIKEで行ったときの写真が載っていたんです。たまたま見つけちゃったということだと思うのですが、神出鬼没感が、こわっ!て思いました(笑)」

家に飾りたい絵は?
「“休みになったら美術館に行きます”とか、そういうことは全然ないのですが(笑)。部屋を明るくしてくれるような絵が好きかなという気がしてます。村上隆さんのような明るさは好きですね。『怖い絵』に登場する作品は、背景を探るという見方がとても面白くて興味深いんですが、自分の部屋に飾るのはちょっと……(笑)」

 

舞台『怖い絵』
■3月4日(金)〜3月21日(月・祝)東京・よみうり大手町ホール
■3月24日(木)〜3月27日(日)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール