自虐とみせかけて自慢するのはNG イラスト/上田惣子

 人と話すことが減っている今こそ、勘違いされないコミュニケーションが必要だ。うっかり使ってしまいがちな言葉、クセになっている言い方。自分では気づかないうちに相手の心証を悪くしていることも多い。ちょっと変えるだけで、よりよい人間関係を築ける言い方をプロが伝授。

大人としての配慮が印象を悪くする原因に

「会話をするときはシンプルでストレートな言い方を心がけると、印象もよく、誤解も生まれにくいですよ」と話すのは、心理カウンセラーの五百田達成さん。人は年齢を重ねるにつれ、回りくどい表現や押しつけがましい言い方、リスクを回避するような言葉選びをしてしまいがちだという。

作家、心理カウンセラーの五百田達成さん

「気遣いや責任逃れなどからくる処世術でもあるのですが、かえって悪印象を与えることが多いです」(五百田さん、以下同)

 原因となるのは、大人特有のいくつかの心理的原因。

「まずは見栄や自意識からくるもの」

 例えば「私なんて学歴もないのに、うちの子は有名大学に入れたのが不思議で~」という会話。

ここでいちばん言いたいのは、わが子が有名大学に入ったという点。直接自慢するのは憚られるけれど、うらやましがられたい……。それゆえ“自虐”に見せかけて“自慢”をする、いわゆる自虐自慢になります

 聞くほうとしては真の狙いが透けて見えるので、聞いているだけでうんざりしてしまう。

気を遣っているようですが、好感度はダウンします

 2つ目は、嫌われるのを恐れての気遣いのしすぎや、空気の読みすぎ。メールの文章を深読みしたり、よかれと思ってアドバイスしたりすることがそれに当たる。

「旅行のお土産を友達に渡したときに、メールで“ありがとう”と送られてきたとします。このとき“いつもなら!マークがついているのに今日はついていない。気に入らなかったのかな……”と気をもみ、“口に合わなかった?”などと探りを入れるようなパターン。相手からしてみれば、“ありがとうって言ったのに何?”と面倒に感じます」

 また女性によくありがちなのが、「〇〇したほうがいい」という押しつけ。相手を思って「冷たい飲み物はやめたほうがいいよ」などとアドバイスするのだが、言われたほうとしては余計なお世話。人によっては「説教された」と捉えられかねない

 最後は自分の立場を必要以上に気にすること。

立ち位置を意識しすぎて、上から目線の言い方をしたり、へりくだった言い方をしたりすることです。女性は“私はしょせんパートだから”のように、卑下するパターンが多いです

 謙虚にへりくだっておけば、敵をつくることはないが、相手にしてみれば「そんなことないよ」とフォローを入れなければならず、面倒な人と思われがち。

「経験値を積んだ大人だからこそ、ストレートな言い方ができない人が多い。シンプルな表現は、一見すると配慮がないようですが、相手に伝わりやすく、好感度も高いんです。会話術でよく言われる、悪口や噂話をしない、人の会話を横取りしないなども、当然気をつけてくださいね」

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 人間関係は話し方ひとつでよくも悪くもなる。ここで紹介しているNG表現を多用している人は、「得する話し方」にチェンジして、ぜひ人生を好転させて。

(NG)自虐とみせかけて自慢する
(OK)「1分だけ自慢していい?」

「あからさまな自慢は嫌われるのでは?」と思われがちだが、ほめてほしいときは、ストレートに「自慢していい?」と言ってしまおう。聞くほうも「ほめられたいのね」と素直に聞くことができる。

 例えば「みんなに童顔って言われるの。私って子どもっぽいのかな~」と言うより、「ちょっとだけ自慢していい?この間、街で娘と姉妹に間違われたんだけど~」とシンプルに表現を。自虐しつつ自慢をするのは、まわりくどく、かえって悪印象だ。

自虐とみせかけて自慢するのはNG イラスト/上田惣子

(NG)「〇〇したほうがいいよ」
(OK)「〇〇してみて」

「この本は読んだほうがいい」「身体は冷やさないほうがいい」などの言い方は、単なる自分の意見を「あなたのため」というスタンスで押しつけている印象に。「この本、読んでみて!」と気持ちをまっすぐに伝えるほうが好印象。

 また、この表現に似たセリフで「私はいいんだけど、(ほかの人は)~」も。こちらも相手に偽善的な印象を与える。勇気がいるかもしれないけれど、素直に「私はこう思うよ」と伝えるほうがいい。

大切なのは“気持ちに寄り添う会話”

(NG)「若~い!」
(OK)言わない

 例えば、ママ友同士で話しているとき、ひとりだけ世代が違うママに「え~30代なの? 若~い」などと言うのはNG。若さへの憧れを含んでいるとは思うが、言われた側にしてみれば、「私たちとは別」と一線を引かれたような拒絶感を覚えてしまう。

 さらに「私が30代のころは、毎日忙しかったな~」などという昔話も避けて。昔話はたいてい自慢話となりやすく、聞き手をうんざりさせてしまう。

(NG)「要するに○○なんでしょ」
(OK)「そうなんだ」

 人の話を聞いて「それって、こういうことでしょ」と要約できるのは、頭の回転が速いともいえる。けれども相手は「ただ悩みを聞いてほしい」「たわいのない会話をしたい」と思っているのに、要約をしてズバッと解決策を提案してしまうと、「共感してくれない」「自分の頭のよさをアピールしたいの?」と不快に思われがち。

「そうなんだ」「大変だったね」と気持ちに寄り添う会話を心がけよう。相手からの信頼度もアップするはず。

(NG)「私なんて」
(OK)「私は」

「私なんて顔が大きいからショートヘアは無理!」「私なんて仕事が遅いから、みんなに迷惑かけてばっかり」など、自分を卑下する言い方は要注意。「そんなことないよ」とフォローを期待した言い方でもあり、聞き手はそれを感じて「面倒くさい……」と疲れてしまう。

「私なんて」と言いそうになったら「私は」に変換を。「私は仕事が遅いかもしれませんが、頑張ります」というように最後はポジティブに締めるとグッと好かれる話し方に。

「私なんて」はNG イラスト/上田惣子

●自慢だけじゃない!自分の話をしないのも悪印象

「あなたはどう思う?」と意見を求められたり、プライベートな質問をされたりしたときに、答えをはぐらかすことはありませんか? 自分の話や自慢話ばかりする人は嫌われるが、逆に自分のことをひた隠しにするのも損な話し方。

「自分のことはあまり明かさないよ」という防衛反応は、相手との距離を広げてしまうことに。適度に自分の話をすることで、「あなたを信頼しています」というメッセージが伝わり距離が縮まりやすい。

お話を伺ったのは……五百田達成さん
作家、心理カウンセラー。人付き合いやコミュニケーションに関する実践的なアドバイスが評判で、メディア出演や講演など多方面で活躍。近著に『超話し方図鑑』(飛鳥新社)

《取材・文/樫野早苗》