「お見送り芸人しんいち」(『R-1グランプリ2022』HPより)

 3月6日、ピン芸人のナンバーワンを決める『R―1グランプリ2022』(フジテレビ系)が行われ、決勝初進出のお見送り芸人しんいちが第20代王者に輝いた。

「ぺこぱのブレイク以降、お笑い業界では“人を傷つけない笑い”が主流になりましたが、しんいちさんは“M-1グランプリの1回戦でスベっている小学生コンビ好き〜”と、好きと言いつつも毒が効いたネタです。過去には、番組で女性アナウンサーを皮肉るようなネタを披露し、失礼すぎると炎上したこともあるほど」(お笑いライター)

 王者という栄冠を手にしたしんいちだが、これまでの芸人生活は決して順風満帆なものではなかった。

「大阪の松竹芸能に所属し、2009年に『しんいちけんぢ』というコンビでデビューしました。2011年のコンビ解散後、ピン芸人に転身するも上手くいかなかったようで1度引退。2年半後に再び活動を再開しましたが、事務所所属のためのオーディションになかなか受からない日々が続いたそうです。ようやく受かったのが当時、サンドウィッチマン以外は誰も売れていなかったグレープカンパニーでした」(同・お笑いライター)

事務所をクビ寸前だったしんいち

 拾ってくれた事務所では、クビ寸前になるほどの劣等生だったという。

「事務所主催のライブでも10か月連続で最下位になり、契約解除寸前に。そんな彼を救ったのが、現在も担当する女性マネージャーのAさんでした。彼女が“クビにするのは、もう少し様子を見てからでもいいのでは?”と会社にお願いしたことで、契約解除を免れたんです。その後、サンドウィッチマン富澤さんの助言を受け、ギター片手に歌う芸風になったことで注目を集めるようになりました」(放送作家)

 Aさんは、業界では敏腕マネージャーとして知られる人物だ。

「サンドウィッチマンの初代マネージャーを務め、今でも2人は全幅の信頼を寄せていますね。その後は永野さんやカミナリを担当し、担当した芸人が次々にブレイクしているんですよ。“あの人が担当して売れないなら、芸人のほうに実力か運がない”と言われるぐらい、業界でも評判がいい人物です」(テレビ局関係者)

事務所先輩のサンドウィッチマン・伊達に絡んでうれしそうなしんいち(公式ツイッターより)

 そんなAさんは、5年前からしんいちを熱心に売り込みしていたと制作会社関係者は語る。

「フジ系『さんまのお笑い向上委員会』の“モニター横芸人”として、しんいちさんが2017年から出るようになったんです。モニター横芸人はあくまで収録を勉強のために見学に来たという設定のためノーギャラ。そこから平野ノラさんやサンシャイン池崎さんなどがブレイクするなど若手芸人にとってはチャンスではありますが、彼女はノーギャラにも関わらず時間の許す限り収録にも立ち会って、熱心にスタッフに売り込みを続けていた。あそこまでやるマネージャーはなかなかいませんよ」

躍進するグレープカンパニー芸人

 大会直前に放送された『R-1直前!霜降り明星の今年のファイナリストは正直エグいよSP』でも、Aさんに感謝の気持ちを述べていたしんいち。

「『M-1グランプリ』でも、最近はグレープカンパニー所属のカミナリや東京ホテイソン、ランジャタイが決勝に進むなど賞レースのファイナリストを次々に輩出しているため、同事務所には所属希望者が殺到しているといいます。

 それでも所属タレントは40組ほどとそう多くないのは、“多く抱えすぎると、1組1組に目が行き届かないから”なのだそう。Aさんを筆頭に、マネージャーたちが所属タレントに愛情を注いでいるからこそ、次々ブレイク芸人が生まれるのでしょう」(前出・テレビ局関係者)

 優勝者会見では「グレープカンパニーに1円でも多くお金を落としたい」と抱負を語ったしんいち。“事務所のこと好き〜”な気持ちがあれば、その思いは叶えられそうだ。