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 食べ方には育ちや品性、人柄までも出る!むかえ舌や犬食いなど見た目の汚い食べ方、大人は絶対やっちゃダメ!!気取ったつもりの勘違い所作や飲食店側が困惑する下品な注文例など、知っておきたいドン引きな食べ方&NGマナーをご紹介。

食事は相互の思いやり!

 大人でも見た目が汚い食べ方をする人は少なくない。“その根底にあるのは、自分本位な気持ち”と語るのは、マナー講師として数多くのメディアに出演する西出ひろ子先生だ。

「そもそもテーブルマナーというのは、食卓を囲む人同士が気分よく時間を過ごすための気遣い。そして食事を提供してくれた方への感謝の気持ちを込める行為でもあります。形式がどうこうということでなく、楽しくおいしそうに、残さずキレイに食べるのがマナーだと思います

 確かに“マナー”というと茶道の所作のような堅苦しさをイメージしがちだ。

「もちろん、一部のマナーには伝統文化的要素も入っていますが、マナーには年代や地域によって変化が生じるものもあるので、あまりそれ自体にとらわれなくて大丈夫ですよ」(西出先生、以下同)

 その代表例が、フォークの背にのせて口に運ぶマナー。

「最近ではフォークの腹にのせるのが正解といわれていますが、それはフランス式。昔のイギリスでは背にのせるのが正しいマナーなので、どちらも間違いではないんです」

 あまり肩ひじ張らず、柔軟性をもって対応するのがベターだという。それでも近年では、自称・マナー講師が新たに生み出す“社会の常識”なるものも大量に出現。例えば“乾杯のときに自分より目上の人よりグラスを上にして重ねてはいけない”などだ。

「これは相手を敬う気持ちを表現しているので悪くないのですが、常識として強要するのはどうかと思います」

 相手を形だけ立てる常識や、気にしすぎでみんながマナー警察のようになってしまったら、そんな心のない食事の時間は楽しめない!

「それよりも重要なのは“TPPPO”です」

 従来の“TPO”に、ポジションとパーソンを加えた西出先生考案の造語だ。

「招待された席での地位や、集まる人々の関係性によって、振る舞いは変化するもの。最低限のマナーの型は大事ですが、型にばかりとらわれすぎると場の雰囲気を壊してしまう。大事なのは、おいしい料理をおいしそうに食べて素敵な時間を共有すること。そして作り手に感謝すること。まずはこれを念頭に置いて食事を楽しんでくださいね」

TPPPO(R)が大事です!

T= タイム(時)
P= プレイス(場所)
P= ポジション(立場)
P= パーソン(人)
O= オケージョン(場合)

一流有名人たちの残念食事スタイル図鑑 

報道陣の前でまさかのベロ出し。“美しい国”はどこに⁉
むかえ舌類 前屈み科 安倍晋三サマ


 前屈みになって舌を突き出し、背を曲げて食事に没頭。かつては国を代表する内閣総理大臣。政治家一族の流れをくむのにこんな姿勢で食事するとは、ガッカリ通り越して悲しくなる!

「一国の元首相として残念! 立場上、きちんとしたマナーを学んでいただきたかったですね」(西出ひろ子先生)

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美人顔が台無し!頰袋を膨らませる姿が話題に
口中パンパン類 ハムスター科 北川景子サマ


 ほおが膨れ上がるくらい詰め込んじゃった!しかもそのまま会話しちゃっているけど、絶対に口からこぼれちゃうよね? 天下の美女、北川ならこんな一面も可愛いといえば可愛い?

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レジェンド・オブ・箸使い!振り切れた匠のワザに驚け!
握り箸持ち類 野蛮人科 桑野信義サマ


 彼にとって、箸が2本セットであることに意味はある……? 箸と箸の隙間にご飯をのせて口にするそのワザは、誰もまねできない(したくない)。ただし現在は持ち方を矯正しているそう

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逆に超器用⁉その箸さばきはある意味、奇跡的!
ナゾ箸使い類 巻麺科 平 愛梨サマ

 
 ラーメンをパスタのごとく箸にグルグル。いや、フォークとパスタでもその巻き方はありえない。そもそもラーメンはすするもの。素敵な美女だが、一緒の外食は遠慮したい

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舌をペロッと出す姿、セクシー通り越して残念です(涙)
むかえ舌類 ネコ背科 木村拓哉サマ


 食べ物を口にする直前に舌を出す「むかえ舌」で、100年の恋も冷ます達人・キムタクさま。パフォーマンス中の舌出しはセクシーだけど、お食事中はご勘弁!

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食通のイメージとその食べ方にギャップが……!
クチャラー類 箸ヘタ科 中尾彬サマ


 元祖・美食家キャラの中尾サマ。食レポもこなしつつ食べる大変さからか“クチャクチャ食べる”とネット民からは評判が悪い。箸使いも気になる、という意見も

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“やんちゃ可愛い食べっぷり”を目指した結果?
大口類 バキューム科 高畑充希サマ


 目玉をひんむきながら大口で食べる姿、やんちゃを超えて怖さを感じる。そんな勢いで口に運ばなくても誰も取らないし、制作サイドも教えてあげて~!

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「むしろアウト!」なマナー10選

和食編

●逆さ箸 「じか箸での取り分けは不衛生だから、逆さ箸で取る!」

 大皿料理をシェアするときは取り箸を使う、もしくはほかの料理に箸がつかないように取ればOK。なにより逆さ箸で箸の反対側を使うのは今のご時世、不衛生かも?

じか箸での取り分けは不衛生だから、逆さ箸で取る!

●手皿 「口もとまで距離があったら手皿を使うのが上品!」

 上品な所作のつもりで手を小皿のように添えてしまいがちだが、これは完全にマナー違反。口に運ぶまでにこぼしてしまいそうならば、手皿でなく小皿を手に持って。懐紙があればなおよし。

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洋食編

●ワインサーブ待ち 「いい女ぶってグラスを傾けワインを注いでもらう」

 飲み物のグラスは置いたままサーブを待つのが基本。海外では男性が注ぐものなので、女性がお酌してしまうのは厳禁。乾杯でグラスをぶつけると破損の原因にも。物にも思いやりを!

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●炭水化物残し 「炭水化物は手をつけない、または少しだけ食べて残す」

 糖質制限ダイエット中の人にありがちな光景だがお店に失礼。そもそも手をつけない、大半を残すつもりなら「いりません」もしくは「少なめにしてください」と注文のときに伝えて。

炭水化物は手をつけない、または少しだけ食べて残す

●ハンカチ使い 「いい店の布ナプキン。汚すと悪いからハンカチで口を拭く」

 店が用意したナプキンを使わないのは「このナプキンは汚い」という意味があり失礼。最後はテーブルの上にクシャッと置いて。キレイにたたむと「美味しくなかった」のサインに!

いい店の布ナプキン。汚すと悪いからハンカチで口を拭く

●串はずし 「気遣いできる大人は焼き鳥を串から全部はずすのが常識」

 流行歌にもあったが、大勢でシェアするときなど、食べやすさや取りやすさを優先してやりがち。しかし焼き物は本来、串についた状態を計算して調理されているもの。基本的には串のまま食べて。

気遣いできる大人は焼き鳥を串から全部はずすのが常識

●割り箸しごき 「割り箸は割った後、しごいて使うのが粋でしょ!」

 かつては割り箸の素材が粗悪で、しごく人もいたが、これは無作法。木くずをまき散らす行為であり“この箸は質が悪い”という意味もあり、店側に失礼。

割り箸は割った後、しごいて使うのが粋でしょ☆

●衣はがし 「胃が上品すぎるから、揚げ物は衣をはがしていただきます」

 “じゃあ揚げ物頼まなきゃいいのでは?”とツッコみたくなるこの食べ方。から揚げはもちろん、とんかつ、天ぷらの衣をはがして残す姿は見た目も汚い!

胃が上品すぎるから、揚げ物は衣をはがしていただきます

●カップ両手持ち 「ティーカップはあざとく両手で持って飲む!」

 取っ手のついたカップは片手で持つのが正解。左手をカップに添えていると冷めているというサインになる。“可愛く上品に見えるかも”など、あざとい考えは捨てよう。

ティーカップはあざとく両手で持って飲む

●ステーキシェア 「頼んだ大皿の肉料理。シェアは女子の役目です!」

 女子力アピールで女性が肉料理をカットして取り分ける行為はアウト。肉の解体はホストたる男性の役目であり、洋食はレディーファーストが基本。余計なサービスは不要なのだ。

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飲食店従業員が激白!「これが私たちの嫌いな“下品な客”」

 外食での下品なしぐさを見ているのは同行者だけではない、その店の従業員もしっかり見ているものだ。

「常連客が金持ちアピールなのか毎回、大量に頼んでは大量に残す。“金さえ払えば”って意識が見えるけど、もったいないんだよ!」(居酒屋店主)

 フードロスが騒がれている今のご時世を考えても、この頼み方はいただけない!

「そしてもっと嫌なのが、その食べ残しをもらおうとして、近くに座る女性客。いい年をして毎回、上目遣いでおねだりしている姿もゲンナリする」(同)

 ハイエナみたいな客、飢えすぎ!ほかにも“元を取ろう”とする精神は嫌われる。

「ウチのうどんは他店に比べるとやや高めなので、天かすやねぎは無料にしている。それをここぞとばかりに大量に入れてカサ増しする輩が多くて……有料にすべきか悩んでます」(うどん専門店経営)

「オーダーバイキングは人間性が出る!特にラストオーダーで何皿も頼んでたくさん残す客。2度と来るな!って思う」(中華料理店スタッフ)


 話を聞いて、こちらの気持ちまで荒む残念エピソードの数々だ。そして意外と多かったのが、調味料を何にでも大量に使う「味変」族!

「多少ならいいが、毎回大量のマヨネーズを4回おかわりする常連がいる。マヨラーだとしても何でもマヨをかけるのは厨房に失礼。さらに鍋のだしもおかわり。なぜかわさびを溶いてガブガブと飲む姿がキモイ」(鍋料理店店員)

 味の魔改造は厨房スタッフに嫌われると心得て!また、高齢女性に多く見られるのが、食品の持ち込み。

女性同士の集いだと、自分の手土産を広げて食べ始めることも。コーヒーだけ頼むのやめて~」(喫茶店店主)

 同じ持ち込みでも、ゴミの持ち込みもご勘弁!

最近の若い人は外で飲み終わったコーヒーのプラカップを当然のように持ってきて、店内に置いて帰る。事業ゴミは処理にもお金がかかるので困りますね」(居酒屋経営者)

 外置きのゴミ箱が少ない昨今だが、自分のゴミは自分で持ち帰って~。そして迷惑マナーで最も多く聞かれたのは、食器の下げものについて。

「気遣いかもしれないけど、油ものの食器の上にグラスを置かれて、ウワッて思った。それと空の食器を、隣の空きテーブルにそっと置くのもやめてほしい」(和食店アルバイト)

 悪気なくやっているので強く怒れもしないが……。

「食器の上にのせられた大量のティッシュが不快。また、それを残り汁の中に入れる人も。汁物が吸収されてさらに気持ち悪い!」(同)

 さまざまな本音が噴出した。

 トンデモ客認定されず、店側にも迷惑をかけず、おいしく楽しい食事を心がけよう!

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 お話を伺ったのは…西出ひろ子先生 ●ヒロコマナーサロン、マナー美人倶楽部主宰。参議院秘書などを経て、マナー講師として独立。NHK大河ドラマや映画など、多くの著名人のマナー指導を務め、数多くのメディアでも活躍。著作は100冊以上。

〈取材・文/三輪順子〉