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 全国の男女3000人以上を対象にした調査によると、4人に1人が“コロナ太り”に悩んでいるという。春に向けてダイエットを始めようと意気込んでいる人も多いだろう。

10万人をやせさせた「やせグセ」

 そこでおすすめしたいのが、体重を記録するだけでやせる「ダイエットカレンダー」。これまでに10万人をやせさせた実績を持ち、自身も25Kgの減量に成功した、くどう内科院長でダイエット専門ドクターの工藤孝文先生が提唱するダイエット法だ。

1日1回体重を量り、専用のカレンダーに毎日、結果を書き込んで、折れ線グラフにするダイエットです。グラフの線をつなぐと成果が目に見えてわかり、その快感でβ-エンドルフィンという“やせホルモン”ともいうべき快楽物質が分泌されるので、長続きしてダイエットが成功しやすくなります」(工藤先生、以下同)

 さらに、このカレンダーをつけると、やせホルモンだけでなく、リバウンドしない「やせグセ」も手に入れることができるという。

ダイエットにおけるもっとも大事なポイントは『やせグセ』を身につけること。自分の食の行動を自己分析するクセさえ身につければ怖いものなし。二度とリバウンドしない身体になります。

 ただ、食の行動を自分で分析するのはなかなか難しいもの。そこでこのダイエットカレンダーの出番です。体重だけでなく、その日食べたものも書き込むので、簡単に振り返ることができ、自分で分析できるようになります

 実はこのダイエット法は、日本肥満学会が肥満治療で推奨している『行動療法』と呼ばれるもの。ダイエットの方法には、食事療法と運動療法、そしてこの行動療法があり、学会では食事療法→運動療法→行動療法の順に行うよう指導しているが、先生がいちばん効果を実感しているのは3つ目の行動療法だという。

「私自身も勤務医時代にストレスで食に向かい、92Kgまで増えたことがありましたが、行動療法に取り組んで、67Kgまでやせました。

 最近も忙しくて10Kgくらい太ってしまったんですが、原因がわかっているので2週間くらいで難なくやせられました。行動を見直して自己分析するやせ習慣が身についていると、10Kgくらいあっという間に落ちますよ」

 カレンダーをつける前に、まず理解しておくべきことがあるという。

体重が増える原因は、たったひとつ。それは食べすぎです。必要以上のエネルギーをとってしまうために人間は太るのです。

 それなのに、自分が太っている原因を、運動不足や太りやすい体質のせいだと勘違いしている人が多くいます。

 運動は筋肉を増やして代謝を上げるには有効ですが、カロリー消費の効率は悪く、やせる効果はありません。また、やせやすい体質の人はいても、太りやすい体質の人は存在しません。食べすぎるから太るのです

 では、食べすぎはなぜ起きてしまうのか。

食べすぎの原因は「ニセの食欲」

身体が必要とする本来の食欲に従っていれば、食べすぎは起こりませんが、ストレスや不規則な生活習慣で脳内ホルモンの分泌が乱れると、“ニセの食欲”が生まれて、食べすぎてしまいます

 ニセの食欲を引き起こす脳内ホルモンは複数あるが、特に注意すべきなのが、セロトニンの不足と過剰なドーパミンだという。

セロトニンは、幸せホルモンと呼ばれ、心を安定させ、食欲を抑える働きがあります。しかしストレスを感じると不足するため、脳はセロトニンを手っ取り早く補うために糖質を欲するようになります

 イライラしたときに甘いものが食べたくなる現象は、セロトニン不足が原因なのだ。

ドーパミンは、やる気や向上心を高める快楽ホルモンで、セロトニンによって分泌が調整されています。ですからセロトニンが不足すると、ドーパミンの分泌が過剰になり、食欲を暴走させて食べすぎを引き起こします。このほかにも睡眠不足は、過食ホルモンのグレリンを増加させるため要注意です

 脳内ホルモンの乱れによる食べすぎを防ぐには、カレンダーを見直してまずは自分の食べ方のクセに気づくことが大事。

「食べ方のクセというのは、無意識に習慣化している食行動のこと。例えば、仕事が始まる前日の日曜はたくさん間食してしまうとか、夜勤明けはドカ食いしてしまうなど、ストレスによる食べすぎが見えてきます。また、食後に必ずデザートを食べる、家族の残りものを平らげているといった習慣もわかります」

 食べ方のクセは、体質や性格、ライフスタイル、家族構成、ストレスなどによって人それぞれに異なる。カレンダーの記録を見直して自己分析をすることで、自分のクセを把握できるのだ。

「自分はあまり食べていないと思っていてもカレンダーをつけると想像以上に食べていたという人が多くいます。自分が食べすぎて太っていることを認識する必要があります」

ダイエットカレンダー

ダイエットカレンダー【はじめるための3ポイント】

(1)まずは体重を線でつなげるだけでもOK!

 食事内容などはいったんつけずに、まずは体重の折れ線グラフをつけるだけでもOK。これだけで“やせホルモン”が分泌され、体重が自然と減少していく。

(2)食べたいものを我慢せず食べる!

 ダイエットに我慢や制限は禁物。大切なのは食べたいものを食べること。幸福ホルモンのセロトニンが増えて長続きしやすくなる。

(3)「太りやすい体質」なんてない!

 太るのは体質ではなく、あなたの毎日の食行動が原因。このカレンダーをつけることで自然と自分のクセを見つけることができる。

ダイエットカレンダーの記入の仕方

【STEP1】体重を測って線でつなげる

 初日の体重の小数点以下を四捨五入した数値を「スタート体重」欄に記入。つぎに、スタート体重にプラス1kg、プラス2kg、マイナス1kg、マイナス2kgした数値をそれぞれの欄に記入する。翌日から起床時に体重を測り、前日の体重と当日の体重を線でつないで折れ線グラフにする。

【STEP2】3食+間食をメモする

 朝食、昼食、夕食、間食の内容を具体的に記入する。お酒類は間食欄に書いてもOK。毎日書くことで、自分の食生活を客観的に把握することができる。好きなものを自由に食べて記録しよう。

【STEP3】その日あったことを書く

「孫が遊びにきた」、「病院に行った」、「ウォーキングした」など、その日あったことを記入する。血圧や歩数を毎日計測している場合はここの欄に書くと便利。

【STEP4】7日おきにカレンダーを見直す

 決まった曜日に折れ線グラフと食事内容、できごとの記録を見直そう。「自分が思っている以上に食べていた」や「孫がきた日は間食が増える」といった、自分では気づきにくい食行動がわかると、それを改善させることがダイエット成功のいちばんの近道になる。

ダイエットカレンダー記入例

ダイエットカレンダーの見直し方

(1)体重が増えた日の前日の食事内容を見る

 朝体重を量って体重が増えていたら前日の行動に原因があるはず。まずは食事内容をチェック。ほかの日と比べてご飯をおかわりしていたり、間食が多かったりしないだろうか。また、調理中につまんだり、家族の残りものを食べている場合はそれもしっかりと書いてあるか確認。単純な「食べすぎ」はこの段階で解消すべし。

(2)ほかの日の食事内容と見比べる

 体重が増えたほかの日の食事内容も要チェック。「夕食後の甘いデザート」など、同じものを食べた翌日に決まって体重が増えている場合もあるので、共通したものがないかを確認。

(3)「できごと」との関係をチェック

 体重が増えた日の前日のできごと欄に「孫が遊びにきた」や「お稽古事」、「夜勤」など、決まったできごとが書かれていないだろうか。孫と一緒に遊びながら無意識にいつもよりおやつを食べていたり、寝不足によるホルモンの乱れによって食べすぎている場合が。食べたものはその場でメモするなど、カレンダーに記録し損ねないようにしたり、ライフスタイルを変えることで食べ方のクセを改善しよう。

空腹感も大事なポイント

 カレンダーでやせグセを身につけてダイエットを成功させるカギがもうひとつある。それが「空腹感」だ。

「私のダイエット外来では患者さんに食べたいだけ食べてくださいとお伝えしています。ダイエットで食事を我慢するとストレスが増え、過食を悪化させてしまうためです。

 ただ、ここでいう『食べたいだけ』というのは満腹になるまでではなく、空腹感が消えるまで。空腹感を感じたら食べる、そして空腹感が消えたら食べるのをやめる、という感覚を頭の片隅に置いておくと、リバウンドしづらくなりますよ

 空腹感が消えたら身体に必要なエネルギーは摂取できているということ。それ以上は不必要なエネルギーだと認識したい。

「このカレンダーのゴールは、一時的な減量でなく、リバウンドしない身体を手に入れることですが、長い目で見れば多少のリバウンドは必ず起こります。生きていればやむをえないストレスが必ず襲ってくるものですし、特に女性は月経などの体調変化で過食リスクもあります。

 また日々の体重も一直線に下がることはなく、上がったり下がったりを繰り返します。そのため、カレンダーのグラフはギザギザになると思ってください。きれいに右肩下がりにならなくても中期的に見れば必ずやせられるはずです」

《ダイエットカレンダー成功談》 H・Sさん

 以前の私は、糖質オフダイエットなどを行うたびにストレスで甘いものやフライドチキンをドカ食いし、リバウンドを繰り返していました。また中途半端な時間に食べたあとに、次の食事の時間がくるとまたしっかり食べてしまうなど、食べすぎる習慣が身についていました。

 そのせいもあってか血糖値が高くなりすぎ、工藤先生の外来を受診。体重や血糖値の測定、グラフのつけ方や服薬指導を先生に行っていただいたところ、体重が数キロ減少し、糖尿病の指標となるヘモグロビンA1cが3.5%低下。

 また、ストレスで過食していた菓子パンやスイーツなどの間食をとる量が自然と減りました。よくある減量指導のように、「○○は減らして」という指導ではなかったので、食事の内容に困ることはありませんでした!

ダイエットカレンダー【Q&A】

Q.いつ量ればいい?

A.体重は1日1回起床後、1日のうちでいちばん体重が軽くなるトイレをすませたあとに量るのがおすすめ。

Q.朝、量るのを忘れたら?

A.気づいたときに量ればOK。ただし、食後は体重が増えるので空腹を感じたときに量るようにしよう。

Q.ストレスで食べすぎてしまったら?

A.ニセの食欲で食べすぎは必ず起こるもの。自分を責めないことが大切。原因を分析して、次回は運動や趣味など食事以外のストレス発散をして過食しないよう心がけよう。

Q.どれぐらい続ければいい?

A.まずはカレンダーが埋まるまで続けて。自分の傾向がわかったらそれで終了。不十分なら、カレンダーをもう1枚分続けてみよう。書き込む前にコピーしておくのがおすすめ。

Q.おすすめの体重計は?

A.50~100g単位で量れるデジタルタイプがおすすめ。メータータイプよりも体重の細かな変化を知ることができ、記録に適している。

工藤式ダイエット【応用編】

 手軽に試せる工藤先生おすすめのダイエット法を応用編としてご紹介。カレンダーと合わせると効果大!

(1)食事中に箸を置く

 早食いで一気に食べると、空腹感が消えたことに気がつかず、満腹まで食べてしまう。早食いを防ぐために、ひと口ごとに箸を置くことを心がけよう。箸を置くと噛む回数が増えて食欲抑制の効果も。

(2)食事は「家族の人数マイナス1人分」

 家族がいると、足りなくならないよう多めに作る人も多い。すると食べ残りが出て、もったいないからと残り物を食べる習慣が生まれやすい。食事は家族の人数からマイナス1人分を作るつもりで。

(3)栄養バランスは無視

 健康的にやせようとして、納豆やアボカドなど栄養のある食べ物を取り入れ、食べすぎにつながる人も。やせることは飢餓になるリスクを生む行為であり、健康的にやせるのは無理。栄養バランスは無視してOK。

(4)食べるならチロルチョコ

 甘いものを食べたい欲求が起こったら、我慢しないことが大切。そこでおすすめなのがチロルチョコなどの個包装のお菓子。板チョコのように包装が大きいお菓子は、食べすぎを招きやすいため避けよう。

教えてくれたのは……●工藤孝文先生●内科医・糖尿病内科医・漢方医。くどう内科院長。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。ダイエット治療・糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療専門。NHK「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。近著に『身体ミニマリスト』(インプレス)、『神やせ習慣』(主婦と生活社)。

(取材・文/井上真規子)