『マジカル頭脳パワー!!』司会者だった板東英二(左上)をはじめ、出演者としておなじみだった所ジョージ、加藤紀子、今田耕司

 数々の人気番組を生み出してきた日テレだが、その“黄金期”の幕開けを作ったとされる伝説のバラエティー番組があった。「マジカルバナナ♪」のフレーズなど、社会現象も巻き起こした『マジカル頭脳パワー!!』だ。しかし、視聴率低迷を前に番組は終了。復活を望む声も多いが、それが実現しないのには理由があった。放送コラムニストの高堀冬彦さんが解説する。

「マジカルバナナ」で珍回答が続々

 民放のリーディングカンパニーといえば日本テレビ。視聴率もそれと連動する売上高もトップだ。

 日テレを王者に押し上げた番組を1つ選ぶとすると、局内外のテレビマンたちは『マジカル頭脳パワー!!』(1990月10月~1999年9月)と口をそろえるはずである。

 9年間の放送の平均視聴率は19・3%。1996年5月2日放送では31・6%という驚異的な最高値をマークした。放送終了直前まで合格ラインを超える11%前後の視聴率を維持していた(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 1980年代までのクイズ番組は知識を問うものばかりだったが、『マジカル』は違った。ひらめきや頭の回転の早さが問われた。

 だから子どもからお年寄りまで楽しめ、番組が独自に考案したユニークなクイズにタレントたちが真剣に取り組む姿を観るのも面白かった。

 番組を観ていた方なら誰でも覚えているコーナーは「マジカルバナナ」だろう。前の回答者が口にした言葉と関連するモノをラップのリズムに乗って答えるクイズだった。

 例えば「おサルさんといったらバナナ」「バナナといったら滑る」「滑るといったら氷」「氷といったらスケート」といった具合である。

 前の回答者の言葉と関連しないモノを答えたらアウト。ラップのリズムに乗って回答しないと、やはり失格。「東京といったらコワイ」といった本人の思いこみに過ぎない答えもダメ。7人前後の回答者のうち、最後まで間違えなかった1人が勝者となった。

永井は、板東の身長が小さく見えないように意識しながら、わずかに姿勢を変えていたという

 「砂糖は白い」「白いは雪」などと、関連するモノをつないでいく言葉遊びは古くからあった。

 「マジカルバナナ」が画期的だったのは、前の回答者の言葉と直結しないモノでもよかったこと。例えば「砂糖といえばぜんざい」でもよかった。言葉をつなぐ助詞が「は」ではなく、「といったら」だったのがミソ。可能性が大きく膨らんだ。

 ラップに乗りながら瞬時に答えるのは難しく、珍回答が次々と生まれた。番組開始とほぼ同時にレギュラー回答者になり、以来6年間にわたって出演し、番組の人気を支えた所ジョージ(67)の場合、「髪の毛といったら」の次に「ない」と答えた。もちろん失格した。

 1991年から最終回まで出た同じくレギュラー回答者の間寛平(72)は「首といったら」の次に「締める」と言った。当然、失格に。普段はにこやかに番組を進行させる司会の板東英二(81)がえらく怒った。

 珍回答はまだあった。回答者が4人1組となり、出される問題から連想する言葉が一致したらOKとなる「マジカルインスピレーション」でのこと。問題は「頭に『う』の付く長いモノ」だった。

 3人は「うどん」と答えて一致したものの、もう1人の回答は「うんこ」。いや、長いかどうかには個人差や体調の違いがある訳で……。答えたのは加藤紀子(49)。スタジオは大爆笑の渦に包まれた。

 9年間に登場したコーナーは実に250以上。口の動きとポーズだけで言葉を伝えていく「マジカル伝言バトル」や2つの映像の中の違いを見つける「エラーを探せ!」などが人気だった。すべて番組が独自に考えたものだ。

番組が終わった“きっかけ”

『マジカル頭脳パワー!!』の収録風景('99年)

 クイズを考える中心にいたのは総合演出担当の五味一男氏(65)=日テレ系制作会社の日テレアックスオン執行役員・ジェネラルクリエイターだ。CM界から中途入社した人で、この番組に限らず、『投稿!特ホウ王国』(1994年~1996年)『エンタの神様』(2003年~2010年)など数々のヒット番組をつくり上げた。

 『マジカル』が視聴率低迷を前に終わったのは五味氏の意向だった。

「五味君が『もう出し尽くしました』と言ったので、その言葉を尊重し、終わらせました。日テレは昔から、そうなんです。番組をつくり上げた人の意向を最大限に酌む」(元日テレ幹部)

 だから視聴者から復活を望む声が上がっても実現せず、スペシャル版すら2001年12月に1度放送されただけなのである。フジテレビの『クイズ・ドレミファドン!』(1976年10月~1988年4月)のスペシャル版が今も改編期に放送されているのとは対象的だ。

『マジカル頭脳パワー!!』の収録風景('99年)

 2012年10月から『マジカル』のコンセプトの一部を受け継いだ『快脳!マジかるハテナ』が放送されたものの、『新マジカル』などのタイトルにはならなかった。これも五味氏への敬意から。番組内容も似て非なるもので、ヒットには至らなかった。

 『マジカル』は今田耕司(56)、田中律子(50)ら、レギュラー回答者たちの個性も魅力だった。SMAPも準レギュラーだったのだから、豪華だった。

 1990年から1995年までレギュラーで出演した俵孝太郎氏(91)は所と並ぶ人気者となった。表情も口調も硬いものの、発想は柔らかく、難問・奇問をズバズバと解いた。その日の放送で一番の成績優秀者には「トップ頭脳賞」が贈られたが、これが所に次いで多かった。

 所はあまりに成績がいいため、心ないヤラセ説まで流された。だが、所が頭の回転が早い人なのは今では誰もが知るところ。それが生かされ、現時点でMCを務める番組は5本もある。『マジカル』での活躍は造作もなかっただろう。

 今、クイズ番組は学歴を前面に出し、知識を問うものばかりになった。ソニーなどが学歴不問採用を定着させ、学歴フィルターへの批判も高まる中、日本で最も学歴を重んじる場はクイズ番組ではないか。だが、視聴率はというと……

■テレビ朝日『クイズプレゼンバラエティーQさま!! 3時間スペシャル』(2月14日放送)世帯7・5%(個人4・4%)
■TBS『東大王スペシャル』(2月16日)世帯8・2%(個人5・1%)。

 時代が違うとはいえ、『マジカル』の半分にも達していない。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立