『元気が出る野菜炒め』(主婦と生活社より)撮影/鈴木静華 スタイリング/駒井京子

 家庭料理では定番中の定番おかずである野菜炒め。それがいま飲食業界で注目されているという。2月22日のNHKニュースの記事「反撃の“野菜炒め”~経済復活のカギは食にあり!~」によると、渋谷に野菜炒め専門店がオープンして話題を呼んでいるそうなのだ。メニューは「野菜炒め」のみという潔さとたっぷりのボリューム感、そしてもちろんおいしさが口コミで広がって、行列ができるほどの人気店になっている。

 運営するのは野菜の卸売会社。飲食店の注文が減少したことにより余りがちになった野菜を活用すべく、自ら運営に乗り出したのが野菜炒め専門店だった、というわけだ。スーパーで販売されている野菜も近ごろは安価なのも、豊作だったことも相まって、市場に野菜がたくさんあるからである。この冬は白菜や大根などが特に安く、例年よりも多く食べたという方も多いのではないだろうか。そして引き続きこの春もにんじんやキャベツが安値傾向にあるという。

野菜炒めの魅力は「価格」「栄養」「時短」

 そう、野菜炒めをいま作るべき理由の1つめは「価格」。安価で作れて大満足のボリューム。不景気の時代にあってこれほど高コスパの料理もなかなかない。そして第2の理由は「栄養」だ。3月18日発売の新刊『元気が出る野菜炒め』(主婦と生活社)の著者である料理研究家・栄養士の牛尾理恵さんはこう語る。

「炒めものというとギトギトの油にまみれた不健康なおかず、といったネガティブなイメージがあるかもしれませんが、フッ素樹脂加工がなされたフライパンでは、少量の油で十分に調理できます。しかも火が通った野菜はコンパクトになりますので、多くの野菜を摂りやすいのも大きなメリットでしょう」(牛尾さん)

 野菜炒めは下手をするとべちゃっと水っぽくなってしまうのが悩みの種だが、ちょっとした心がけでみるみるみるおいしく作れるようになるという。

「炒めすぎると水分が出てくるので、少し早いかな、と思うくらいで調味料を加えて仕上げます。短時間で炒めるためには野菜を効率良く加熱することが必要。ポイントは『“炒める”というより“焼きつける”』『“混ぜる”というより“持ち上げて落とす”』『“強火”ではなく“中火”』という3点です。野菜炒めはスピード勝負のため、材料と調味料は必ずあらかじめ準備しておきましょう」(牛尾さん)

 火をつけてから完成まではわずか5分ほど。そしてこれがいま野菜炒めを作るべき第3の理由でもある。「時短」にぴったりの料理なのだ。自炊する機会が増えた今だからこそ、料理はさっと作りたいもの。安価で、栄養満点で、短時間でぱぱっと作れる野菜炒めは、まさに今の時代にマッチした料理だと言えるのではないだろうか。

牛尾さんおすすめ!基本の野菜炒めの作り方

基本の野菜炒め(『元気が出る野菜炒め』より)

〈材料と下準備〉2〜3人分
玉ねぎ…1/4個
 →薄切りにする
にんじん…4センチ
 →短冊切りにする
しいたけ…2枚
 →軸を落として薄切りにする
白菜…葉大2枚(200g)
 →軸は長さ3センチのそぎ切り、葉は長さ3センチに切る
もやし…1/2袋(100g)
 →できればひげ根を取る
豚こま切れ肉…150g
 →大きい場合は長さ3センチに切り、塩・こしょう各少々をふる
サラダ油…小さじ2
酒…小さじ2
塩…ふたつまみ
こしょう…少々
しょうゆ…小さじ1

〈作り方〉
1.フライパンにサラダ油を中火で熱し、豚肉を広げ入れ、1分〜1分30秒焼く。焼き色がついたら上下を返し、片側に寄せる。

肉はできるだけ重ならないように広げ、動かさずにじっくり焼く。焼きつけることで火が早く通り、脂が出やすくなる。下の面に少し焼き色がついたら上下を返す。

2.空いたところに玉ねぎとにんじんを加え、それぞれ1分ほど焼き、徐々に全体を炒め合わせる。

野菜も入れてからしばらくはいじらない。30秒ほどで上下を返す。1分焼いたら、先に玉ねぎとにんじんを合わせ、次に豚肉を少しずつ合わせて、全体を肉から出た脂に絡ませていく。

野菜炒めの出来上がり!

3.玉ねぎに火が通ってきたら、しいたけを加えて1分ほど炒め合わせる。強火にして白菜の軸、葉、もやしの順に加え、そのつどさっと炒め合わせる。

フライパンはあおらずに、トングなどで具材を持ち上げて落とし、全体を少しずつ混ぜるように炒める。火を通すというよりも表面に脂をまとわせるイメージ。

4.全体に油が回ったら酒を回し入れ、塩、こしょうをふり、しょうゆを鍋肌から回し入れてさっとからめる。

炒めすぎると水分が出てくるので、少し早いかな、と思うくらいで調味料を加える。具材の表面にからめばOK。

 フライパンに入れっぱなしにしておくと火が入ってしまうので、すぐに器に盛って出来上がり。

 手軽に作れる野菜炒め、ぜひお試しあれ!

撮影/鈴木静華 スタイリング/駒井京子

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