山田悠太郎容疑者が事件を起こした自宅兼美容室

「事件の2日前の朝、おじいちゃんが日課の散歩をされていてね。少し前までは犬と一緒だったんですが、死んでしまってね。“お元気そうですね”と声をかけたら、ニコッと笑っておられたのに……」

 と、近所の主婦は突然の不幸に言葉をなくしていた。

 3月8日の夜9時35分ごろ、静岡県浜松市中区の閑寂な住宅街でとんでもない事件が起きた。

「家族でトラブルがあるので、来てほしい」

 と、男性からの110番通報が入った。静岡県警浜松中央署の署員が現場に駆けつけると、無職の浦山毅さん(79)と妻の秀子さん(76)、さらには孫で会社員の山田健人さん(26)の3人が倒れていた。すぐに病院へ搬送されたが、3人とも死亡が確認される。

現場周辺150メートル四方は、事件から10日目まで規制線が張られ続ける

事件の夜に起きた家族間トラブル

「警察が被害者の家族に事情聴取をし、事件翌日になって毅さんの孫で健人さんの弟である山田悠太郎容疑者(22)を殺人の疑いで逮捕した。司法解剖の結果、3人とも死因は頭部外傷による損傷死。のちに自宅周辺から犯行に使用したと思われるハンマーや、結束バンドなどが発見されていることから、犯行は計画的だったと言えるでしょう」(全国紙社会部記者)

 事件が起きた家は自宅兼美容室になっており、母屋に毅さん秀子さん夫婦と40代の息子、別棟に娘夫婦と孫の悠太郎容疑者が住んでいた。

「元々は秀子さんが長年、この店で美容師をやっていたんですが、娘と娘婿も美容師で店を継ぎました。だから秀子さんは最近、ほとんどお店に出ていませんでしたね」(近所の主婦)

 周囲からは円満に見えていた一家だが、事件の夜は家族間で問題が生じていた。そのため、結婚してすでに実家を出ていた健人さんと、もう一人の兄もかけつけての家族会議が行われていた。事件時に110番通報した男性はこの兄だった。

亡くなった山田健人さんが住んでいたメゾネット式アパート

兄弟3人で仲よくセミとり

 悠太郎容疑者について、近所の住民はこう話す。

「幼いころは、兄弟3人で仲よくセミとりをしていてね。この辺りでは虫とりなんてする子はほとんどいなかったので、珍しいなと。子どもらしいなと微笑ましく思っていました」

 容疑者の小・中学校の同級生の保護者は、

「ちょこっとだけやんちゃな子でしたね。悪さをして、先生に叱られているような子。とても活発で、とくに運動神経は抜群でした」

 地元の高校を卒業後、容疑者は実は警察官になっていた。

「1年3か月で辞めていますね。警察学校に1年間通ってから、県東部の派出所に配属されたが、わずか3か月で辞職しています」(捜査関係者)

 その後、容疑者はいわゆるニート状態だったようで、

「おじいちゃんも、おばあちゃんもいい人ですが、厳格なところもあった人たち。若い孫が自宅でぷらぷらして仕事をしていなければ、小言を言うのは当たり前じゃないですか。でも、それくらいのことでこんな事件を起こしてしまうものなのか」(前出・近所の主婦)

 また、近隣住民からはこんな話も。

「悠太郎くんが無職だったから、美容室を継がせようとしていたんじゃないかな。少し前から、彼に店を手伝わせていたようなので」

 現場周辺150メートル四方は、事件から10日目まで規制線が張られ続けるほどの異様さだった。家族3人を惨殺するという凶行に走った元警察官の心の闇はまだ解明されていない。