乃木坂46のメンバー(左から)秋元真夏、賀喜遥香、齋藤飛鳥、遠藤さくら

 アイドルグループ『乃木坂46』に新たに加入した5期生が、いろいろな面で話題となっている。

 5期生は応募総数8万7852人、倍率7987倍の中から選ばれた11人。2月1日から1人ずつ、段階的にメンバーのプロフィールと顔が公開され、そのたびにビジュアルの高さなどがSNS上で話題となった。

 一方で、3月23日にリリースされた29枚目のシングル『Actually...』のセンターに5期生ながら大抜擢された中西アルノ(19)は、過去のSNSでの発言が物議を醸し、3月3日に活動自粛を発表。

 同じく5期生として3月から活動を予定していたの岡本姫奈も18日に「グループの活動規約に違反する行為」があったとして、活動自粛となった。加入したてのアイドルがこれだけニュースになるのも、乃木坂46人気の証左といえる。

 乃木坂46といえばテレビ、雑誌など幅広く活躍するも、メンバーの目標となるのは、やはりシングルの選抜メンバー入りだ。選抜に入れば歌番組への出演などメディアへの露出が増えるため、ファン獲得のきっかけともなる。では5期生たちが今後、シングル選抜に選ばれる確率はどのくらいあるだろうか。過去のデータを調べた。

乃木坂46シングル選抜に選ばれる確率を調査

 これまで乃木坂46のオーディションに合格し、活動をした1〜4期生のメンバーは合わせて77人(交換留学生の松井玲奈を含む)。このうちCDとなったシングルの選抜を一度でも経験したメンバーの数は57人で、選抜率は74%、4人に3人が選ばれる計算だ。

 坂道グループで比較すると櫻坂46(旧・欅坂46)のシングル選抜率は94.6%、日向坂46は100%だった。乃木坂はほかの2グループの倍近いメンバーが在籍することもあり、3グループの中ではもっとも低い数字となった。かつての“公式ライバル”AKB48のデータを見ると、所属したメンバー(兼務含む)のシングル選抜率は37.8%。メンバー数の違いなどもあり、単純比較はできないものの、乃木坂のシングル選抜率はAKBのほぼ倍であった。

 では乃木坂の顔であるシングルのセンターになれる割合はどうか。シングルのセンター経験者は過去13人で全体の16.9%と一気に下がる。この数字から見れば、センターが決まっていた5期生中西の逃したチャンスは大きかったかもしれない。

期別ではやはり強い1期生

 次にもう少しデータを細かく、加入時期で見ていく。

1期生

 乃木坂の1期生は2011年に開催された第1回オーディションの合格者で、応募総数は3万8934人で、このうち合格したのは36人だった。合格者のうち活動前に2人が辞退したため、実際に活動したのは34人。このうちシングル選抜に1回でもなったメンバーは32人で、88.9%と大半がシングルの選抜メンバーになっている。

 特に現在キャプテンを務めている秋元真夏(28)は、学業優先のためいきなり活動休止からのスタートだったが、復帰後の2012年10月にリリースされた4枚目のシングル『制服のマネキン』からすべてのシングルで選抜に選ばれており、乃木坂を体現する存在といえる。

乃木坂46の1期生

2期生

 2期生は、2013年に開催された第2回オーディションの合格者14人で、応募総数は1万6302人だった。2期生の中でシングル選抜に選ばれたのは7人で、選抜率は50%と1期生と比べかなり落ちる。

 2期生がほかの期とは違い、合格後に研修生となる制度が導入されたためで、西川七海、矢田里沙子、米徳京花の3人は正規メンバーになることなくグループを去っている。

 また正規メンバーとなった中でも3人がシングル選抜入りを果たしていない。2期生で唯一センターに選ばれた堀未央奈(25)も、13枚目のシングル『今、話したい誰かがいる』では選抜から落ちており、このシングルでは2期メンバーが1人も入らなかった。

 2期生が加入した2013年当時は乃木坂の人気は今ほど高くなく、メディアなどの露出も1期生が優先され、なかなか人気も出にくい状況だった。ファンからは「不遇の2期」と言われるが、シングル選抜の数字にも現れている。

3期生

 そんな2期生とは対照的なのが、3期生だ。2016年に開催された第3回オーディションの合格者は12人で、応募総数は4万8986人だった。シングル選抜を経験したのはその内9人、75%が選抜入りを果たしている。

 3期生は2期生にあった研究生制度がなく、またグループ自体も前年に『君の名は希望』で紅白初出場を果たすなど勢いに乗っており、3期生のメディア露出も2期生に比べるとはるかに多かった。与田祐希(21)、山下美月(22)、久保史緒里(20)など現在選抜の常連となっている人気メンバーも多く、すでに乃木坂の中核を担う世代となっていることがわかる。

4期生

 4期生は2018年に乃木坂46、欅坂46(現・櫻坂46)、日向坂46の3グループメンバーを決める坂道合同オーディションの合格者の中で乃木坂に入ったメンバーを指す。オーディション全体の応募総数は12万9182人だった。

 4期生は現在までに16人中8人がシングル選抜入りを果たしており、選抜率は50%と2期生と同じ数字となっている。ただ、この数字の低さには4期生の少々複雑な経緯がある。

 4期生は合同オーディションの合格後にストレートで乃木坂に所属できたメンバー11人と、坂道研修生を経て、2020年2月に乃木坂46に配属となったメンバーが5人いる。この5人はファンの間では「新4期生」とも呼ばれている。

 ストレートインの4期生11人だけで見れば、シングル選抜率は72.7%と高い一方で、新4期生5人はまだ誰も選抜入りを果たしていない状況だ。今回5期生が加入したことで、まだ選抜入りを果たしていない新4期生が2期生同様の不遇をかこってしまわないか、ファンの中で心配する声もある。

乃木坂46のシングル選抜率と現役メンバー

たとえ選抜に選ばれなくても高待遇?

 これまで乃木坂のシングル選抜になる確率について語ってきたが、選抜メンバーは常連で固まりやすい傾向がある。1期でいえば齋藤飛鳥(23)、秋元真夏は選抜回数20回を超えるものの、和田まあや(23)は29枚のシングルのうち選抜経験は2回。

 3期生の与田祐希、山下美月、4期の遠藤さくら(20)、賀喜遥香(20)など不動の地位を築くメンバーがいる一方で、選抜経験なし、あっても1〜2回の選抜に止まっているメンバーも多い。全体的に中間が少なく、両極端という印象だ。

 乃木坂の選抜は運営側が決める方式で、その基準は握手会の人気と言われている。AKBの総選挙のように、ファンによる投票イベントもなく、SNSも一部メンバーにしか解放されていない。このため運営側が驚くような突然人気になるメンバーが生まれる可能性は低い。なかなか序列を覆せない、逆転の少ないグループといえる。

 ただシングル選抜にこだわらなければ、乃木坂46は恵まれたアイドルグループだ。

 その代表が山崎怜奈(24)。現役2期で唯一シングル選抜経験がないが、慶應義塾大学卒業という高学歴を生かしてクイズ番組の出演や、テレビ番組のMCやラジオ番組のMC、雑誌の連載など活躍は多岐にわたる。

 この3月までNHK Eテレ『将棋フォーカス』で3年間総合司会を務めた向井葉月(22)やファッション誌『Ray』(主婦の友社)の専属モデルを務める金川紗耶(20)も選抜経験はない。そのほか、ラジオのレギュラーや舞台の主演については枚挙にいとまがない。選抜にならずとも、他のアイドルグループが羨む高待遇だ。

 アイドル業界全体として考えれば、5期生は乃木坂46のメンバーになった時点で既に勝ち組。さらにデータを見れば奇数期のシングル選抜が高く、その法則でいえば、5期生の前途は明るい。あとは運営側やファンに好まれる行動が、乃木坂での成功のカギとなりそうだ。

PROFILE●徳重龍徳(とくしげ・たつのり)●ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku