松本潤と玉森裕太

 最近“これ美容誌だよね……?”と、戸惑ってしまうことが増えている。男性が表紙を飾っているからだ。

「女性向けコスメ誌の表紙にジャニーズタレントが登場することが多くなっていますね。『美的』'22年2月号SPECIAL EDITIONの表紙はSnowManの渡辺翔太さんでした。'01年の創刊以来、男性単独の表紙は初めて。渡辺さんは美容に詳しいことで知られていて、『MAQUIA』 '22年5月号特別版でも表紙を飾っています」(美容ライター)

ジャニーズ表紙の理由

松本潤は『VoCE』3月号、玉森裕太は『美ST』4月号の表紙モデルに

 渡辺は『MAQUIA』の“渡辺翔太、29歳の色気”という8ページの特集で、自慢の美肌を披露している。

「『美ST』4月号の表紙はKis-My-Ft2の玉森裕太さんでしたし、『VOCE』3月号には松本潤さんが表紙で初登場しました。話題性だけでなく人気も伴っていて、中には売り切れになる雑誌もあるそうですよ」(同・美容ライター)

 なぜジャニーズを表紙に起用する美容誌が増えているのか。中央大学文学部社会情報学専攻の辻泉教授は、出版社側の切実な事情があると話す。

「今は雑誌の売り上げがそうとう厳しくなっています。インターネットの普及で、ファッションやオシャレに敏感な層が以前ほど雑誌を買わなくなってしまいました。その点、アイドルファンは好きなアイドルが載っていれば雑誌を買ってくれるんです」

 ジャニーズの表紙に期待されているのは、読者を引きつける効果なのだ。

メイクした“推しジャニ”を見たい

「配信サービスが充実しているにもかかわらず、今でも人気グループのCDは数十万枚のセールスがあります。確実に“モノ”を買ってくれるジャニーズのオタクやファンを狙ったほうが売り上げを見込めるのでしょうね」(辻教授)

 これまで美容誌は、雑誌不況の中でも一定数のコアな読者が購買していたため、大きく部数を落とすことはなかった。しかし、昨今のコロナ禍の影響を受け、美容誌にも変化が起きているという。

『美的』2月号の表紙モデルとなった『SnowMan』の渡辺翔太

「外出が少なくなったことや終わりの見えないマスク生活で、コスメ市場は大きく縮小しました。美容誌も当然そのあおりを受け、売り上げを落としています。コロナの終息がまだまだ望めない以上、他ジャンルの雑誌と同じようにジャニーズという強力なコンテンツを使って、部数減を食い止めようとするのは自然な流れでしょう。普段、雑誌を手に取らない人たちに読んでもらえるいい機会ですからね」(前出・美容ライター)

 実際、彼らが紹介していたコスメを買いそろえたというファンの声も多く聞こえる。

「これまで美容誌では、男性にモテるメイクが表現されてきました。しかし、最近では“モテ”よりも“推し”をテーマにする雑誌が増えています。“推し”には恋愛感情だけでなく、“理想の自分の代理”という意味合いも。今の美容誌では、男性の評価に合わせるのではなく、“なりたい自分”を目指して自分磨きをすることがトレンドとなっています。メイクをした“推しジャニ”を見て、私も頑張ろうと読者が思えるんです」(辻教授)

 彼らの好きなコスメを使ってみたくなるのって、すごく自然なことなのかも。


辻 泉 中央大学文学部教授。文化社会学、メディア論を専門分野とする。著書に『趣味とジェンダー』(青弓社)、『ファッションで社会学する』(有斐閣)など多数