『あのねのね』の原田伸郎と清水国明

《ネコ ニャンニャンニャン イヌ ワンワンワン カエルもアヒルもガーガーガー》

 フォークデュオ・あのねのねの1979年のヒット曲『ネコ、ニャンニャンニャン』が、突如として今年に入りTikTok上で大バズリ、43年の時を超えて配信リリースされたことが話題となった。

TikTokが昭和の名曲を蘇らせる

 TikTokが火付け役となりヒットに結びついたといえば、なんといっても2020年の瑛人の『香水』、そしてYOASOBIの『夜に駆ける』が思い浮かぶ。さらに、Ado『うっせぇわ』、ひらめの『ポケットからきゅんです!』、優里『ドライフラワー』、さらに「ウマ娘」の楽曲『うまぴょい伝説』などなど、TikTok発信がきっかけでヒットが拡大することは、当たり前の現象になっている。

あのねのねの『ネコ、ニャンニャンニャン』

 曲に限らず小説や雑貨、さらには食品などZ世代を中心に爆発的に売れることが相次ぎ、それらを“TikTok売れ”という言葉も浸透してきている。そのひとつが冒頭のあのねのねの曲など、昭和や平成中期あたりまでの懐メロ群だ。

「倖田來未さんがカバーしたラッツ&スターの『め組のひと』、大塚愛さんの『さくらんぼ』、相川七瀬さんの『夢見る少女じゃいられない』、それからアニメ『うる星やつら』の『ラムのラブソング』など、印象的なサビのフレーズが切り取られ、それに合わせてダンスする動画が大量に投稿されました。

 さらに、かつての大ヒット曲だけでなく、活動休止中だった青森のローカルアイドルグループ・青森ナイチンゲールの曲が突如“発掘”され、バズったことでグループが再始動する現象も起こっています」(ITメディア関係者)

 最新曲ではなく、なぜ若者は古い曲を見つけ、さらにそれがバズるのか。音楽関係者に聞いた。

「サブスクの浸透や、CDよりも動画サイトで音楽に親しむ層の音楽の聴き方は、従来の世代と根本から違っている部分もあることがひとつあると思います。“おすすめ”で選曲され、タイムライン上の曲を聴くのが基準になっているため、アルバムを買って1枚をじっくり聴くようなスタイルは合わないと感じる人は増えています。

 ウェブ上ではショップに並んだ音楽に比べ、過去の楽曲も等価値であることや、国民的ヒットが生まれにくい時代の耳には、昭和や平成初期の名曲が逆に新鮮に感じられることもあるようです

 それが必ずしもチャートに入るようなヒットにつながるとは限らない。それは、今の若者ならでの理由があると前出の関係者が分析する。

「昭和世代がこぞって情緒を感じた名曲のイントロも、 “長い”と感じる層が出現してきています(笑)。要は印象的なフレーズの数秒だけ欲しいのであって、1曲3分〜4分、全部聴きたいというわけではないんです」

 とはいえ、“TikTok売れ”なる言葉の出現により、古きよき時代のヒット曲が再び注目を集め、世代を超えて楽しむことができる。あのねのねがコンビとして歌番組に出演する可能性もあるかも、しれない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉