伊沢純容疑者(本人のフェイスブックより)

 診察中、医師が「睡眠薬をあげるからうちにおいで」と言うことなどあり得ない。

 それを平然と言い、交際、同棲と関係性を深めたあとでみせた本性は暴力男だった。

 同棲する女性の太ももを蹴るなどの暴力でケガをさせたとして警視庁新宿署は3月28日、精神科医で東京・新宿区歌舞伎町の『東京クリニック』院長・伊沢純容疑者(51)を傷害の疑いで逮捕した。被害者は、同クリニックの患者だった20代女性のA子さん。交際をめぐる口論が引き金になったとみられている。

「逮捕のきっかけは“同居中の男から暴力を振るわれている女性がいる”などとする容疑者宅マンション警備員の通報。傷害容疑で家宅捜索すると、0・28グラムの覚せい剤が見つかったため覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。傷害容疑は再逮捕にあたる」(社会部記者)

 覚せい剤については「私のものではない」と容疑を否認し、処分保留になっている。

 傷害容疑についても「(A子さんの)妄想か、つくり話だ」と認めていない。

「睡眠薬をあげるから」

「睡眠薬をちらつかせて自宅に引っ張り込むなどやり方が汚い。A子さんの場合、昨年4月に容疑者と付き合うようになり、半年後には同棲状態になったようだ」(同・前)

 ほかにも複数の女性から同様の被害相談が寄せられており、薬で気を引く犯行を繰り返していた可能性もあるとみて捜査が進められている。

 傷害事件を招く舞台となった東京クリニックは、昼夜問わず賑やかな歌舞伎町の雑居ビルの一室にある。

 伊沢容疑者は日本医科大卒で'98年に国家試験に合格。'03年に東京・西麻布で開業し、翌'04年に歌舞伎町に居を移して以降、歌舞伎町周辺で2度移転している。常勤医師は伊沢容疑者だけだった。

院内は明るい雰囲気のようだが(東京クリニックのホームページより)

歌舞伎町のブラック・ジャック、異名の理由

「患者さんがひっきりなしに出入りしていて、若い女性患者が目立った。クリニックを開けたり開けなかったりと定かでなく、開いていると思って来院した患者さんたちが部屋の前をうろうろしたり、近くの階段に座りこんで待っていることがよくあった」

 と同クリニックが入居するビルの関係者。

 別のビル関係者はこう囁く。

「伊沢容疑者は怒りっぽくて揉め事が多く、警察が来たことは何回もありました。威圧的な言葉遣いで、大声で怒鳴りつけるので怖かった。巻き込まれないようにしよう、と気をつけていました」

 身長170センチ前後のやせ型で青白い顔。一見、おとなしそうにみえるというが、唐突に好戦的な姿勢をとることも。

「すれ違ったときに挨拶をしたら、ずーっと睨みつけられた。ただ挨拶しただけなのに目線をそらさず異様だった」

と同ビルに出入りする男性。

 伊沢容疑者=東京クリニックは、過去に大問題を巻き起こしたことがある。

 都政関係者が振り返る。

「依存性の高い向精神薬『リタリン』を診療もせず大量に処方していた疑いが強まり、東京都と新宿区保健所が東京クリニックを立ち入り検査したのは'07年9月のこと。適応症のない患者にも言われるがまま処方しているなどと情報が寄せられていた。患者の家族から“薬物依存にさせられた”などと苦情が相次ぎ、保健所が何度も口頭指導してきた張本人が伊沢容疑者」

 若者のリタリン乱用が社会問題になっていた当時、伊沢容疑者は医師資格のないスタッフに処方箋を書かせるなど安易に処方しまくっていたという。医師法違反(無資格医業)で罰金50万円の有罪判決を受けた。

「東京クリニックは'07年の1年間だけでリタリンを約102万錠も処方していた。小規模クリニックにもかかわらず全国1位の量。ネットなどでは“歌舞伎町のブラック・ジャック”とか“リタリン販売所”と隠語で呼ばれていた」(前出・都政関係者)

 問題はそれだけではない。前出の社会部記者が言う。

「'06年に診察結果の説明を求めた女性患者に腹を立て、“説明してもわからないだろう”と言って髪の毛をつかんで頭を壁にたたきつけ、付き添いの夫にものど輪をくらわせる傷害事件を起こした。その数か月前、男性患者に暴力を振るって骨折させたばかりだった。'08年には元患者で交際相手だった女性にしつこく復縁を迫り、ストーカー規制法違反と脅迫で逮捕されている。“話をしなければお前を一生追い詰め破滅させてやる”などと脅していた。逮捕と書類送検を合わせて少なくとも計6回の困った男だ」

 女性患者への傷害事件は有罪判決が確定し、厚労省から'2年の医業停止処分を受けた。'14年にも医師法違反で医業停止3か月を受けている。

シャネルのぱひゅーむの絵を飾っています

東京クリニックの玄関には「CLOSE」と出ていた

 クリニックのホームページには外国産の高級スポーツカーの画像が貼られ、医師らしからぬ記述が散見される。

 自己紹介ではアイドル系芸能事務所などにテナントを貸していることをアピール。不動産投資や外貨投資にも言及し、資産形成のシミュレーションまで……。

 院長ブログでは、

《僕は昔からブランド好きなのでクリニック内にもシャネルのぱひゅーむの絵を飾っています》

 とセレブ生活を匂わせ。

 日本の未来を公務員が明るくする方法と題して、

《厚生労働省アディクティドフェスティバル(編集部注=中毒祭)》の実施を求める悪ふざけを綴るなど危ない雰囲気も醸す。

 昨年のクリスマスイブには最高級フレンチで《将来の妻(笑)とデート》とのろけ、 恋人から貰ったブランドもののネックレスを着けた画像を公開。タイトルは《クリスマスプレゼントもらったよ》

恋人からプレゼントされたというネックレスをぶら下げて自慢げな表情の伊沢純容疑者(東京クリニックの院長ブログより)

 時期的にみて、この恋人こそA子さんとみられる。

 いまだに医師免許を持っているのが不思議なぐらい。医師免許取り消しや停止の処分権限を持つ厚労省に聞いた。

「罰金以上の刑になり、医道審議会医道分科会にかけられた場合、医師の立場を悪用したケースは重い処分になりやすい。過去に医業停止などの行政処分を受けていれば、医師免許に傷をつけた“前科”になり、それも加味されて適格性を問われることもある」(医政局医事課の担当者)

 二度あることは三度ある。いや、六度あることは七度ある。漫画のブラック・ジャックは無資格で高額報酬を要求する天才外科医だが、この男は無法で卑劣なだけ。容疑が事実ならば厳正な処分をお願いしたい。