藤田朋子

「What is serious!?」

 藤田朋子の口からそんな“英語”が飛び出す事態が起きた。それは今年2月に公演された舞台『政見放送』の稽古中だった……。主演は馬場良馬、共演者には元AKBの島崎遥香、藤田にダンカンらが名を連ねた。事態を発端から関係者が語る。

「舞台『政見放送』は演出のスタッフが映画畑の人ばかりで、舞台演出には不慣れでした。舞台の演技と映画などの映像の演技は別物です。なのに、舞台に関して慣れていない方ばかりが演出スタッフとして集まってしまったんです」(舞台関係者、以下同)

 加えて、メインキャストの島崎遥香も舞台の経験は数えるほどで不慣れ。

「演出側が役者さんたち、さらには照明さん、その他のスタッフさんなど……現場をコントロールできていない状況が多々生まれていました。特に島崎さんは戸惑っていたようで……」

演者と演出スタッフの間にズレ

 そのため、いざ稽古が始まってもたびたび中断したという。

「はじめは島崎さんが“どう演じればいいのかわからないです”と、稽古が止まっていました。周りが動いていても演技をやめたりとか……(苦笑)。“どうしたらいいかわからないです”、“どういう感情で演じたらいいかわからないです”というのはよく口にしていましたね……」
 
 “どのように演じる”のか、それは演出側が“欲しい演技”を提示するべきなのだが……。

「当初は“ぱるるをどうにかしないと……”という空気でもあったのですが、“どう演じたらいいのか”という役者側の疑問に演出側が答えられないことがしばしばで。役者と演出以外のスタッフたちが“演出の奴らをどうにかしないと……”という雰囲気に変わりました。

 “なんでこう動くんですか?”などと役者が疑問を投げかけるのですが、映像をメインに仕事をしてきたためか、“そういう画(え)にしたい”と言うだけで、具体的ではなく……結果、演出側が“持ち帰らせてください”ということが頻繁にありましたね」

 舞台は客の目の前で演技する一発勝負だ。その意味でドラマや映画以上に、演者やスタッフたちが一丸となることが求められる。

「一丸どころかイライラが募り、まとまりのない稽古場でしたね……。演者と演出側が揉めだすと、“はいはい、また始まった”と休憩じゃないのにタバコを吸いにいく人が出るような始末。舞台出演の多い藤田さんに相談するスタッフもいました」

稽古場に響いた「What is serious !?」

島崎遥香

 そんなある日のこと……。

「演出側が役者1人ひとりに演出を付けていたときのことです。“このシーンはちょっとシリアスに”、“このシーンはちょっとコメディな感じにしたいんですよ”といった具合に。これまでみんなが溜め込んでいた鬱憤を晴らそうとしてくれたのか、藤田さんが“コメディもシリアスにやらないと面白くならないでしょ! “ワット イズ シリアス!!??”と稽古場で一喝したんです。あなたにとっての“シリアス”ってどういう意味で言っているの、と……。

 そのとおりだと思いますし、それまで演出スタッフに不満のある人ばかりだったので、皆の気持ちを代弁するような一喝だったと思います。その瞬間は衝撃かつ納得ではあったんですけど、次の瞬間、昔のあの英語でキレた会見を思い浮かべてしまって……(苦笑)。ちょっと笑いをこらえました。まぁその喝が効いたのか、その後はまとまりはして、無事公演となりました」

 舞台は『政見放送』――政治も演技も、表に出ない裏側がやはり面白いということで……。