自作の焼き芋を手に持ってカメラに応えるやまもとまさみ

「(芸歴)10年以上の先輩もめっちゃ面白い人がいっぱいいるので、ライブとか来てほしいです!」

 3月6日の夜、涙ながらに思いを吐き出したのは、ピン芸人日本一を決める『R-1グランプリ2022』(フジテレビ系)で初優勝を果たしたお見送り芸人しんいち。

「'02年から開催されている『R-1』ですが、昨年からは出場資格が変更され、プロは芸歴10年以内、アマチュアは参加10回目以内に限定されました。それまでは芸歴不問だったため、ベテラン芸人の出場も多かったですね」(お笑いライター)

焼き芋の移動販売を始めたR-1王者

 お笑い芸人の賞レースとして『M―1グランプリ』『キングオブコント』と並んで“3冠”とも評される『R-1』。しかし、その位置づけは少しばかり異なっているようで……。

「毎年爆発的に売れる芸人を輩出している『M-1』や『キングオブコント』と比較すると、優勝者やファイナリストがブレイクしにくい傾向にあるんですよ。歴代の優勝者でも、ブレイクをつかんだのは一部だけ。個性が強すぎると、いわゆる“イロモノ”扱いになってしまい、一発屋になってしまうこともあるんです」(同・お笑いライター)

 優勝したら即、人気者の仲間入り!……というほど甘くないピン芸人の世界。実際に、かつてチャンピオンに輝いた1人の芸人は、今や“副業”で生計を立てている。

「'14年の王者、やまもとまさみさんです。さまざまなキャラクターを演じ分ける1人コントが武器で、優勝直後こそ脚光を浴びたものの、それ以降のバラエティー番組では大きな爪痕を残せず……。とはいえ、彼は奥さんと2人の子どもを持つ身。生活のことを考え、'17年にクレープ店『ジェラフル小田原店』をオープンさせました。今では3店舗のオーナーとなっていて、副業では成功を収めていますね」(芸能プロ関係者)

 そんなやまもとが、このほど“第2の副業”を始めたという。

「昨年末あたりから、『やきいも劇場』と称して焼き芋の移動販売を行っているそうなんです。芸人としての姿をテレビで見る機会はめっきり減りましたが、クレープ店に続いてビジネスの幅を広げているみたいですね」(同・芸能プロ関係者)

 たしかに今、焼き芋は世間でちょっとしたブームになっている。そこに新たなビジネスチャンスを見出したということなのだろうか。現在の活動について詳しい話を聞くべく、3月下旬、都内を移動販売中のやまもとを直撃した。

――『週刊女性』です。

「あ、はい」

 記者の名刺を落ち着いて受け取ると、丁寧に取材に応じてくれた。

――『やきいも劇場』のビジネスはいつから?

「去年の12月18日からですね。まだまだこれからといったところなんですよ」

焼き芋を買いに来るお笑い芸人たち

――焼き芋販売を始めたきっかけは?

「もともとはイベント会社の人たちと繋がりがあって、その方たちが山梨県の畑でさつまいもを育てていたんです。そこには以前から家族で芋掘りにも行かせてもらっていて、そんな付き合いがある中で“手伝ってくれないか”という話をいただきました」

 縁あって企画段階から携わったという『やきいも劇場』プロジェクトには、芸人ならではのセールスポイントも。

「芋を焼いている間もしゃべったりしてお客さんを楽しませられるような『劇場』ということで、今自転車で移動販売しているスタッフはみんな芸人なんですよ。僕の後輩とか、小島よしおくんにも後輩を紹介してもらったりして。彼は、いい後輩を持ってますね(笑)」

焼き芋店の営業中に直撃インタビューを受けるやまもとまさみ

――小島さん本人が来ることは?

「小島くんも、買いに来てくれたりしますね。まだ売る側に立ったことはないけれど“全然、立ちますよ!”とは言ってくれてるので、近々お願いしようかなとは思ってます」

――ほかの芸人さんも来られる?

来ます、来ます! よく浅草のほうにも販売しに行くんですけど、浅草には劇場があるので芸人さんがたくさん来てくれるんですよ。けっこう買ってくれるし、ツイッターなんかで宣伝してくれたりするので、ほんと最高です(笑)。

 この前は、ハマカーンが来てくれました。6月には東貴博さんたちが『熱海五郎一座』の舞台を新橋演舞場でやるので、そのときは東さんにうちの芋を買ってもらって、差し入れてもらおうかなと狙ってます(笑)

 クレープ店では成功を収めてきたやまもとだが、焼き芋販売はまったく異なるビジネスだと語る。

焼き芋はクレープと違って芋そのものをシンプルに味わうものなので、その点は全然違うんですよ。産地やブランドによって全然違うから、実は奥が深い。世間では、まだまだ焼き芋が“大きくて安い”ものだと認識されていますよね。うちで出しているようなブランド芋は、一般的なさつまいもに比べると小ぶりな割に値段としてはそこまで安くない。でも、そのぶん本当に甘くて美味しいんですよ。

“え、こんな小さいの!?”と言う方もいるんですけど“一度騙されたと思って食べてみてください”と言って口にしてもらうと、けっこうリピーターになってくれたりするんです。“ブランド芋”のイメージを、もっと広めていきたいですね」

 新たな活動を始めたことで、これまでの事業に還元されることがあるとも。

「クレープ屋さんのほうも、キッチンカーでの移動販売を始める予定なんです。『やきいも劇場』をやっていて“楽しいな”と感じましたし、コロナ禍でいろいろ考えさせられました。移動販売でみなさんのもとに行けるというのは、やっぱりすごく素敵なこと。お笑いコンビ『2700』のツネくんとか、『8.6秒バズーカー』のはまやねんくんも移動販売をやっていると聞いたので“移動販売芸人”で一緒にイベントをやってみたいなとも考えています」

芸人として今後の活動は?

 膨らむ展望からは、好調な様子が見て取れる。しかし、気になる収益を聞いてみると……。

「収益的にはまだまだこれからというところで、みんなで試行錯誤しながらやってます。売れる日は、すごく売れるんですけどね。季節的に、これからまた暖かくなっていって焼き芋のシーズンではなくなるので、そういった部分も含めて新しいアイデアを考えながらやっていきたいですね」

――芸人としての収入と副業の収入の割合は?

「本当にもう10対0で、ゼロが芸人です(笑)。ただ、それでもやっぱり自分の原点は“芸人”。ここ数年は、家族の生活のこともあるし“芸人の活動は、まあいいや”という諦めのような思いも少しあったんですけど……。ちょっと遅いですけど、去年からまた舞台とかお笑いの活動も頑張りはじめたんです。

 芸人をやっていたからこそ、副業につながるお話や出会いの機会をいただいているので、根底にある芸人という部分を大事にしていきたい。今では二足のわらじで頑張ろうと思ってます。家族も“芋持って帰ってきてね”なんて言って応援してくれますし、喜んでくれてますよ」

――今年の『R-1』グランプリは観ましたか?

「見ました見ました! お見送り芸人しんいちさん、面白いですよね~。『R-1』に出るピン芸人は、みんな同じ気持ちですからね。『M-1』と比較していろいろ言われると思いますけど、そんな言葉も乗り越えていってほしいですね」

自身の焼き芋店の前でポーズを取るやまもとまさみ

 最後に、芸人としての今後の活動について尋ねた。

「何事も全力でいくしかないですね。以前はちょっと斜に構えちゃったりしてましたけど、もう捨てるものは何もないですから。いただいた仕事は、全力で取り組む。焼き芋もクレープも全力で売る。そしてコロナに立ち向かって、家族を幸せにする。それだけですね!」

 終始明るい様子で取材に応じたやまもと。“副業王”がふたたび舞台に上がり、輝く姿を見せる日も近い!?