宮本一馬容疑者(本人のSNSより)

「あんま人をバカにしたしゃべり方すんなよ」

「オレ、電車の中でも暴れるヤツだから」

「女には手を上げへんけど、男には手を上げるからな」

「ムカついたら普通にシバき回すぞ」

 傷害事件の逮捕後、宇都宮地検栃木支部の取り調べに対し、担当の男性検察官にそんな恫喝めいた暴言を吐いていたのは宇都宮市内のホスト・宮本一馬被告(28)。同支部は4月8日、本件での傷害罪、強要罪にとどまらず、検察官を脅迫した公務執行妨害罪を上乗せした3つの罪で起訴した。

「手錠をかけられ、留置場に入れられてひと晩明かせば、たいていは冷静さを取り戻すのだが、宮本被告は違った。身柄を拘束されているのを忘れたかのように悪態をつきまくっており、犯行時とほとんど変わらない興奮状態にあったとみられる」(社会部記者)

 そもそもの犯行は今年1月23日のこと。 JR宇都宮駅を発車した逗子行き電車の車内で、優先席に寝転んで加熱式たばこをふかしていたところ、乗り合わせた男子高校生(当時17)から「やめてもらえますか」と注意されて逆ギレ。高校生に土下座を強要し、それでも怒りはおさまらず、

「クソガキ、おまえ、オレにしゃべりかけられる分際とちゃうんや」

「ぶっ殺すぞコラ、ケンカ売ってるんじゃねえぞ」

 などと脅しながら、頭やからだに殴る蹴るの暴行を加えた。

 騒ぎに駅員が駆けつけ、途中駅で下車してからも暴行を続けるなどクールダウンする様子はなし。逮捕後、高校生のほうからケンカを売ってきたなどと「正当防衛」を主張したが、その割にはいったん現場から逃げているなど、どこまでも筋の通らない男だった。

検事に対して“ボコボコにするぞ”

「取り調べ中の担当副検事(男性検察官)に対しては、ほかにも“ボコボコにするぞ”“暴れるとき、まじ暴れるぞ”などと悪態をついており、そこが検察の牙城であっても“犯罪するヤツはどこでも犯罪すんねん”などと言い放ったようだ。検察側は起訴前、約2か月かけて宮本被告の鑑定留置を行い、公判で言い逃れができないように刑事責任能力があることを確認している」(前出の記者)

 週刊女性2月15日号で報じた通り、東京・新宿区の歌舞伎町などでホスト経験のある宮本被告は、SNSで両肩の入れ墨を見せたり唐突にシャドーボクシングしたりなど凄むようなところが多々あった。

 被害に遭った高校生は右頬付近を骨折する全治約6か月の重傷だったと判明。犯行態様も被害程度もひどく、その上、検察官を脅すなど反省の態度はみられない。

ハロウィンの仮装でスクール水着姿に大人の玩具を咥えた宮本一馬容疑者(本人のSNSより)

“実刑にしてください”アピール

 起訴された3つの罪を裁判所が認めたとき、どの程度の罰則を受けることになるのだろうか。取り調べの現場では、検事を脅してくるようなことはよくあるのだろうか。

 元東京高検検事で元衆院議員の若狭勝弁護士に話を聞いた。

「取り調べ中、暴言を吐く被疑者はいることはいます。そんなにしょっちゅうではなく、私が30年近く検事をやったなかで数件ぐらいですね。同僚には椅子を投げつけられた検事もいました」(若狭弁護士)

 取り調べを始めるとき、被疑者は手錠をはずされフリーハンドになる。もっとも、腰ヒモはつけたままで、ヒモの先を同行してきた警察官がうしろで握っているため暴れ続けることはできないという。

 若狭弁護士は、

「ただ、検察官に暴言を吐いて脅したということで公務執行妨害罪で起訴されるケースはほとんどないと思います」

 と異例であることを指摘し、その狙いをこうみる。

「反省の色がみられず、検察側は再犯のおそれが大きいと訴えたいのでしょう。報道で知る限り、カッとなりやすい激情犯という印象があります。検察官を前にしても暴言を吐いているのだから、拘束を解かれ社会に出たとき、一般人に対して何をするかわからないとの懸念を抱いているのではないか。犯行時は感情的に殴ったり蹴ったりした被疑者でも、検察官の前では普通は興奮が冷めて落ち着いているものです。検事に暴言を吐いたって、いいことは何もないんですから」(若狭弁護士)

 刑法に定められた傷害罪の罰則は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金。強要罪は3年以下の懲役。公務執行妨害罪は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となっている。

 有罪認定されたとき、どの程度の罰則になるのだろうか。

「まず、被害者が負ったとする全治約6か月のケガは程度として重い部類に入ります。これだけでも検察側の求刑が懲役2年を下回ることはないと思います。3つの罪で起訴された場合の罰則は、単純に1+1+1にはならないものの重い方向にいくのは確か。検察は強要罪と公務執行妨害罪を加味して懲役3年半から4年程度を求刑し、実刑判決をとりたいのでしょう」(若狭弁護士)

 懲役3年以下の判決言い渡しでは執行猶予がつくことがある。

「検察はそれを上回る求刑をすることで、裁判官に“これは実刑判決にしてくださいよ”とアピールするんです」(同)

 公務執行妨害罪に加えて、公共交通機関でマナー違反を指摘した高校生に対し、逆ギレしてひどい暴力を振るった罪は法廷でこれから問われる。そこでは、入れ墨の威力も、恫喝めいた言動も通用しない。