仕事ができてお金持ちでも婚活に失敗する男性たち(写真はイメージです)

 仕事をきっちりとこなし、会社的評価も高く、高収入を得ている。けれど、恋愛経験がないままに年を重ねてしまった。そんな男性が40代後半、50代、60代になって婚活を始めると、どうなるでしょうか? 最初は失敗続きです。ライターをしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。仕事ができる、イコール、恋愛上手とはならない。その事情について考えていきましょう。

お金があっても若い女性と結婚できるわけではない

 ふみおさん(55歳、仮名)は、上場企業の取締役をしている年収1700万円の男性です。初婚でお子さんを希望しています。

「第一希望は、30代、譲歩しても41歳くらいまでの女性と結婚したいです」

 入会面談のときにこんなことをおっしゃっていたので、私は、現状を申し上げました。

「男性の中には、お金があれば若い女性と結婚できると思っている人たちがいます。しかし、現実は違いますよ。ほとんどの女性たちが、父親のような年齢の男性との結婚は考えていません」

 もちろんそうしたカップルも世の中にはいます。ただそうした人たちの多くは、生活圏内で自然に出会って、女性が男性を好きになり、年齢差が気にならなくなっている。

 そこにいくと、婚活というのは条件ありきの出会いです。まず最初にその人のプロフィールが提示されます。体温のないプロフィールを見て、15も20も歳の離れた男性と“結婚を前提に会ってみたい“と思う女性は、まずいないのです。

 タレントさんの中にも親子ほど年の離れた女性と結婚する男性がいます。しかし、そこには男性が“有名芸能人“というブランドがありますし、メディアを通じてすでに彼らがどういう人なのかを、女性たちが知っているのです。また、芸能界は、文字どおり芸の世界ですから、その方に才能があって健康ならば、死ぬまで仕事ができます。

 ただこんな説明をしても、“わが子をこの手に抱きたい“と思っている40代後半、50代、60代の男性の気持ちを覆すことはできません。ふみおさんも然りでした。

 婚活をスタートさせると、30代前半の女性に40件近くの申し込みをかけました。しかし、女性側からは“辞退“の返事が次々に届きました。

 そんな中で、42歳のさえこさん(仮名)と43歳のひろみさん(仮名)からお申し込みが来ました。女性から申し込みが来るのは、うれしいものです。ふみおさんが希望している年齢よりも少し上でしたが、この2つのお申し込みは受けて、お見合いをすることになったのです

「日程ですが、さえこさんは、○月×日の13時に渋谷でお願いします。ひろみさんは、そのあと、同じく渋谷で15時にお願いします」

 お見合いが成立すると、そんな連絡を入れて来ました。結婚相談所では、日程調整は、相談室間ですることになっています。そのときは、候補日は、3つくらい出すのが通例です。私は、ふみおさんに言いました。

「お相手にも都合があります。こちらが一方的に日時と場所を指定しても、それがとおる訳ではありませんよ」

 恋愛経験のない男性は、婚活を自分の都合で進めがちです。ことに50代、60代の男性は、自分たちが育ってきた時代背景から、結婚は男がお金を出すもの。だから男が上。女はそれに従う、と考えているようなところがあります。高収入の男性なら、なおさらそうした考え方を根強く持っています。

 これでは、婚活はうまくいきません。結局お互いの希望日を擦り合わせてお見合いをしたのですが、お見合いを終えた2人の女性からは、“お断り”がきました。それを伝えると、ふみおさんは、言いました。

「ホテルのラウンジでの1500円のコーヒー、その後にホテルに入っていたレストランで、4000円近いランチをご馳走したんですけどねぇ」

 お茶やご飯をご馳走すれば、お見合いで交際希望がくるわけではありません。

ついつい人や物事を批判、評論してしまう

 自営でITコンサルをしている、ようたさん(仮名、47歳)は年収1400万円。仕事はとても順調のようで、「商談は90%以上の成功率でまとめている。話術で人をその気にさせるのは得意」と、入会面談のときに語っていました。

 ところが、いざ婚活をスタートしてみると、婚活は苦戦中。活動して半年になるのですが、得意な話術で女心は掴めず、交際に入って2、3度デートを重ねると、女性からお断りが来ていました。

「どうしてなんでしょうか。ここで問題点を洗い出したいんですが」

 そんな電話がかかってきました。その電話は外からで、どこか駅の近くのようでした。電車が通るような騒音に混じって、路上ライブをしている男性の歌声が聞こえてきたのです。

 すると、ようたさんは、ボソッと言いました。

「よくあの歌唱力で、人前で歌おうと思えるよな」

 私は、この言葉を聞いたときに、ここにようたさんの婚活がうまくいかない原因があると思ったのです。

 また以前、仲人が同席したお見合いがありました。場所は、洋食レストランでした。着席してメニューを開くと、表示された料理をひととおり見て、その後にグルリと店内を見回し、こう言ったのです。

「この店の作りで、この価格なら、まあ良心的だな」

 仕事柄なのでしょうか。ようたさんには、物事を見たとき、なんでも冷静に分析し、その評価を口にしてしまう癖があったのです。こうした男性は、確かに仕事はできるでしょう。しかし、デートで一緒にすごしているときに、男性がこんな人だったら、女性はいい気持ちがしません。それが毎回のように続くと、その発言が鼻につくようになります。

 婚活をうまくいかせるためには、人や物事の批判や評論よりも、明るく楽しい話をすることを心がけたほうがいいのです。

 多くの女性が、“仕事ができる男性”や“仕事への情熱を熱く語る男性”を素晴らしいと思っています。ただ、そうした男性を男として好きになるか否かは、また別の問題なのです。

わがまま女性に散財しても結婚はできない

 地方都市で地場産業を経営しているひろとさん(46歳 仮名)は、年収1600万円。これまで恋愛経験がほとんどありませんでしたが、この度、婚活を始める決意をしました。そのことを懇意にしている取引先の部長に話すと、「知り合いに独身の女性がいて、確か恋人を探していたと思うから、聞いてみましょうか」と言って下さったそうです。

「ぜひ、お願いします」

 そうして紹介されたのが、「自営でセミナー講師をしている」というちあきさん(41歳、仮名)でした。

 最初は、紹介者の部長さんを含め、3人で食事。一流ホテルの和食ランチでしたが、そこを指定してきたのは、ちあきさんでした。そのときは、8000円のランチに飲み物がついて、3人で3万円弱。

 次のデートもちあきさんの指定で、都内の有名なフレンチレストランに行きました。このときはディナーだったので、2万円のコースに飲み物やテーブルチャージの料金がついて、2人で5万円近く。

 カードで支払いを終えたひろとさんは、思いました。

「結婚が決まるまでは、デートの度に、こんな高額な食事が続くのだろうか」

 そこで、3回目のデートでドイツ料理を食べたときに、ひろとさんは、ちあきさんに聞いたてみたのです。

「ちあきさんは、僕との結婚についてどう考えていますか?」

 すると、ちあきさんは涼しい顔で、こう答えました。

「私、今仕事に夢中なんです。もう少し今の事業を拡大したいし、取りたい資格もあるので、最低3年は結婚を考えられない。ただ、ひろとさんとこうしてお会いしてお食事するのは、とても楽しいし、刺激的だし、本当に素敵な人をご紹介していただけたなと思っているんですよ」

 この発言にひろとさんは、口をあんぐりと開けてしまいました。

「美味しい食事がただで食べられる、これはお財布がわりにされている!」

 紹介して下さった部長さんは、「彼女は、恋人を探している」と言っていたけれど、その先の結婚は全く考えていない。これでは、恋人というよりも、高級レストランで食事をさせてくれる男性を探しているだけ。婚活でななく、パパ活ではないか!

 結婚相手を真剣に探そうと思っている自分とは、そもそも考え方が違っているし、いいように利用されていることに気付いたというのです。

 仕事はできで、高収入を得ている。ところが恋愛をしないまま歳を重ねてしまった男性たちが40代後半、50代、60代になってから婚活を始めると、どうも失敗が多い。

 お金があるから若い女性と結婚できるわけではなし、ご飯を何度もご馳走していれば、女性の気持ちが手に入るわけではないのです。仕事と恋愛は違います。恋愛で大切なのは、相手の気持ちが今どこにあるのか、それを確かめながら、関係を前に進めていくことです。女性から好きになってもらわないと、時間を使っても、お金を使っても、結婚はできません。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル