「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
新山千春

第70回 新山千春

 4月20日放送『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)内の企画「シングルママの人生相談」を見ていて、シングルマザーは今の時代のバラエティー番組にぴったりな存在なのかもしれないと思ったのでした。

 バラエティー番組と女性芸能人と言えば、少し前は“独身イジリ”が定番でした。30歳を超えた独身女性芸能人を「そんなことだから、独身なんだ」とか「オトコを見る目がない」と笑うスタイルを見たことがある人は多いでしょう。“独身イジリ”は失礼なことですが、芸能人のみなさまにとって、テレビはお仕事であり、ショーなはず。一世を風靡(ふうび)したアイドルが、こういう番組をきっかけに再ブレイクするケースが多々あったことから考えると、芸能人にとっては「おいしい」面もあったのではないでしょうか。

 しかし、ハラスメントやジェンダーに対する意識が高まった今、番組が芸能人に対して“独身イジリ”をするとネットで炎上したり、番組に苦情が殺到するかもしれません。ハラスメントだという印象を与えず、でも、ある程度面白おかしくプライベートの話ができて、視聴者の共感を得られるのはどんな人か。そう考えると、シングルマザーが最適なように思うのです。

 離婚するというのは、それなりの修羅と葛藤があったことでしょうが、腕のある人が話せば、面白い話に昇華させることができるでしょう。芸能活動をしながらの子育ては本当に大変なことだと思いますが、子育ての楽しさ、難しさというのは鉄板ネタで、多くの人の心をつかめるはず。

 それにシングルマザーは独身なわけですから、恋愛だって自由。もう結婚なんてこりごりだと言う人もいれば、再婚したい人もいるでしょう。結婚までは考えていなくても、恋人なら欲しいと言う人もいるかもしれません。いろいろな考えのシングルマザーがいるでしょうから、キャラもかぶりにくいでしょうし、番組を作る側は重宝するのではないでしょうか。

なぜ芸能人がリスクの高いマッチングアプリをするのか

 こんなことを考えながら、番組を見ていたところ、同番組に出演したタレント・新山千春が「アメリカのマッチングアプリで知り合った14歳年下の男性と交際している」と発言したのでした。

 アプリで実際に結婚した人もいるわけですから、アプリなんてヤバいというつもりはありません。しかし、アプリで知り合った男性に飲み物に睡眠薬を入れられて、乱暴されるなどトラブルが起きているのも事実です。

 特に新山はイメージ商売の芸能人なわけですから、何か起きたら大変なことになるでしょう。なぜ、芸能人がそんなリスクの高いことをするのかと不思議に思いましたが、YouTubeチャンネル『新山千春 CHIHA ROOM』で本人が語ったところによると、仕事場では仕事スイッチが入ってしまうので、相手を恋愛対象として見ることができない。友人から彼氏候補を紹介してもらったりもしたけれど、これまたピンとこない。そこで、自分を知っている人が少ないであろう海外のアプリに挑戦することにしたのだそうです。

新山はマッチングアプリに向いているタイプ

 新山と言えば、プロ野球・西武ライオンズの一軍内野守備走塁コーチを務める黒田哲史氏と2004年に結婚し、お子さんをもうけましたが、2014年に離婚しています。

 2009年には『FRIDAY』(講談社)に夫が遠征中に、有名ヘアメイクの男性と深夜の“手つなぎ”デート後、男性のマンションに一緒に帰宅したと報じられています。新山は男性と一緒だったことは認めたものの、「仕事関係の打ち合わせ」と主張、「男性側の手にはチェーンバッグを持っており、手をつないだという事実は絶対にありません」と男女の関係であることを否定しています。

見事なくびれを披露する新山千春(本人のインスタグラムより)

 離婚後の2015年に出演した『ナイナイアンサー』(日本テレビ系)で、新山は離婚の理由を「お金ではない」とし、元夫は夜8時過ぎには寝てしまうので、孤独を感じていたと告白。「ほかの夫婦の話を聞くと、ご主人とワイン飲んだり、今日あった出来事とかを話している時間があって、“ああ、うらやましいな”ってすごく思っていました」と明かしていました。

 夫婦でゆっくり会話する時間を持ちたいと思うのは、当然のことだと思います。しかし、子育て中や、共働きだとなかなかその時間が持てないこともあるでしょう。特に、新山の場合、元夫は野球選手ですから身体が資本とも言えるわけで、早寝もその一環だったのかもしれません。加えて、野球選手が現役でいられる時間は限られていますから、その間はどうしても夫中心のスケジュールで動くことになってしまうでしょう。

 新山は仕事人間の男性より、自分の話を聞いて合わせてくれる職業もしくは性格の男性が合うのかもしれませんが、プロ野球選手という、遠征などで不在がち、かつ、どちらかというと妻側が気を遣わなければいけない職種の人と結婚してしまった。役割分担がうまく行かないと、家庭は立ちいかなくなりますから、離婚は避けられないことだったのかもしれません。

 もし新山がワインを飲んで、一日のことを語りあう生活を本当に理想とするのなら、マッチングアプリに向いているタイプと言えるのではないでしょうか。アプリでは年収などの個人情報を盛るユーザーが一定数いますが、ワインを飲んで一緒に楽しい時間を過ごすために、年収や勤務先はさして重要ではないからです。ルックスが自分の好みか、会話の相性がピンと来るかのほうが大事でしょうから、こういう人は気軽に相手の顔が見られて話せる、ダメだったらさっさと次に行けるアプリは強い味方ではないでしょうか。

 ただし、相手選びを間違ったり、トラブルを起こしてしまうと、失うもののないシロウトさんに暴露動画を流されてヤバいことになってしまうので、このあたりに注意は必要でしょう。

「離婚しましたけど、それが何か?」な時代に突入した

 若い恋人を得たことで、美容系雑誌から「年下のオトコを虜(とりこ)にする美容法」の取材も増えそうです。年齢差があるカップルですので、今後何か問題が起きるかもしれませんが、たとえうまくいかなかったとしても、それも含めて仕事に変えていけるのではないでしょうか。仕事の面でもプラスと言えるでしょう。

 ひと昔前の感覚で言うなら、シングルマザーは「結婚に失敗してしまった人」だったかもしれません。しかし、女性誌『STORY』(光文社)の歴代カバーモデル、黒田知永子、亜希、稲沢朋子、高垣麗子はシングルマザーです。「離婚が恥ずべきこと」から「離婚しましたけど、それが何か?」な時代に突入したと言えるのではないでしょうか。2021年8月号の『GLOW』(宝島社)では、ともに離婚を経験したモデルの稲沢朋子とクリス-ウェブ佳子が対談し、「人生100年時代だから、老いても恋愛はずっと現役かも」「また結婚したい」と話しています。

 俳優・三浦友和と山口百恵さんのように「お互いを大事にし、一生添い遂げる」というスタイルはこの先も憧れを集め続けるでしょうが、「40代すぎても恋愛できる、結婚できる」ことがオンナの甲斐性とされるようになるのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」