沖縄ごはん 撮影/廣瀬靖士

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』でも登場する沖縄の郷土料理。沖縄では昔から“クスイムン(食は薬)”の食文化が根付き食材やその調理法に健康効果がバッチリ。暑さが増してバテやすい今の時季、南国パワーで元気をチャージして。

朝ドラの主人公・黒島結奈が、杏とつくる思い出の味

 暑い時期に食べたくなる沖縄料理。

 今年の4月から放映されているNHKの朝ドラ『ちむどんどん』は沖縄が物語の舞台。主人公・比嘉暢子(黒島結菜)の幼少期の家族団らんシーンで、おいしそうな沖縄ごはんをほお張る姿に、食指が動いた人も多いのでは。お父さんとの思い出の味“ソーキそば”。東京編でもお母さんの得意料理“そーみんちゃんぷるー”がお話のキーになるなど、食いしん坊で料理人を目指す暢子の味の土台をつくっているのが沖縄料理なのだ。

 物語と同じく、沖縄出身である主人公の黒島結奈は、実家から沖縄野菜を送ってもらい、“上京後、一番長い友だち”という女優・杏のYouTubeで、沖縄料理の腕前を披露している。ゴーヤちゃんぷるーや、お母さん直伝のにんじんのしりしりー、泡盛を使ったラフテーなど、なんとその数8品。出会いからのほほえましいエピソードとともに、もくもくと料理を作るふたり。

 過去には、沖縄料理パーティーなども主催したという杏宅で、「気持ちいいぐらいたくさん食べる」という黒島は、公私ともに郷土料理が心の支えになっている模様。

健康効果もばっちり!島食材をたっぷり味わう

 そんな沖縄料理には、暑い南国ならではの特徴がある。

「豚肉を使った料理は沖縄料理の特長のひとつです。また、亜熱帯気候の中で育った島野菜や果物、豊富な海藻類には夏バテや疲労回復、美肌などに効果がある栄養素が含まれており、沖縄の人たちの健康を支えています」

 とは、沖縄料理研究家の宮澤かおるさん。

 沖縄料理が健康にもいいのは理由があるのだ。

「沖縄には“クスイムン”という言葉があります。これは“食は薬”という意味で、現代の栄養学的な知識が反映されている薬膳料理のようなものです。たとえば、伝統的なクスイムンである『チムシンジ』という汁物。この料理にはレバーと豚肉が入っているのですが、レバーに含まれている鉄分は肉と一緒に摂ると吸収率が高くなります。こうした先人の知恵がつまった料理がたくさんある」(宮澤さん、以下同)

 かつお出汁や豚肉のゆで汁など、自然のうまみを生かした出汁が使われていることでうまみもたっぷり。

「少ない塩分でもおいしく仕上がります。減塩効果もありますね」

 ヘチマはなす、島豆腐は木綿豆腐などにおきかえ、気軽に沖縄間感を楽しめる料理をお届け。本格的に楽しみたい人は、ネットでも島野菜を気軽に取り寄せられるようになっているから、ぜひチャレンジを。

出汁とみそで煮込んだやさしい味わい
ナーベーラーンブーシ(ヘチマのみそ炒め)

ナーベーラーンブーシ(ヘチマのみそ炒め) 撮影/廣瀬靖士

【材料/2人分】
・ナーベーラー(またはなす3本)…1本(中)
・豚こま肉…60g
・塩麹…小さじ1
・島豆腐(または豆腐)…150g
・ごま油…大さじ1

A[白みそ…大さじ1、かつお出汁…大さじ2(または顆粒かつお出汁小さじ1/2、水大さじ2)]

・かつお節…1袋

【作り方】
(1)豚肉はひと口大に切り、塩麴をもみこんで下味をつける。
(2)ナーベーラーは皮を薄くむき1cm厚さに切る。5分ほど水にさらし水けをきる。
(3)ボウルにAを入れてみそを溶かす。
(4)フライパンに油を中火で熱して(1)を加えて炒め、豚肉の色が変わったら(2)を加え炒める。島豆腐を手でちぎりながら加え、(3)とかつお節を加えて強火で煮る。
(5)ナーベーラーがしんなりして、全体にとろみが出たら火を止め、器に盛る。

●ナーベーラー
 ヘチマの一種。ビタミンやミネラルを豊富に含む。

たっぷりのビタミンとミネラルで夏バテ&疲労回復MENU

 豚肉に含まれるビタミンB1は疲れた身体にぜひとりたい栄養素。島野菜に豊富なビタミン類が暑さに強い身体をつくり、汗で失われがちなミネラルは黒糖でしっかり補給。

(上)オイスター風味のゴーヤーちゃんぷるー(中)あまがし(下)にんじんしりしりー 撮影/廣瀬靖士

独特な苦味がクセになる代表的な沖縄料理
オイスター風味のゴーヤーちゃんぷるー

【材料/2人分】
・ゴーヤー(大)…1本
・塩…小さじ1/3
・豚こま肉…80g

A[塩麹、にんにくすりおろし…各小さじ1]

・ごま油…大さじ2
・島豆腐(木綿豆腐)…200g
・卵…1個

B[オイスターソース…大さじ1、かつお節…2袋、塩…少々]

【作り方】
(1)ゴーヤーは半分に切って種とワタを取り除く。約2㎜幅に切って塩で下味をつけ、水けをきる。
(2)豚肉はひと口大に切り、Aで下味をつける。島豆腐はひと口大に切り、水けを拭く。器に卵を割りほぐす。
(3)フライパンにごま油大さじ1を中火で熱し、島豆腐を加えて両面を軽くこげ目がつくまで焼き、皿に取り出す。
(4)同じフライパンに残りのごま油を熱して豚肉を炒め、色が変わったら(1)を加えて手早く炒める。
(5)全体に火が通ったら(3)を戻し、卵液を回しかけて軽く炒め合わせる。
(6)Bを加えて全体に調味料がなじんだら火を止め、器に盛る。

●ゴーヤー
 ビタミンCがレモンの1.5倍も含まれ、カリウムも豊富。

豊富なβ‐カロテンで病気を予防し美肌に
にんじんしりしりー

【材料/2人分】
・島人参(にんじん)…1本
・卵…1個

A[かつお節…1袋、塩…小さじ1/6、ごま油…大さじ1]

【作り方】
(1)にんじんは皮をむいて細いせん切りにする。
(2)卵は割りほぐす。
(3)フライパンに油(分量外)を中火で熱し、(1)を加えさっと炒めて(2)とAを加え、手早く炒め合わせる。

●島人参
β‐カロテン豊富で、油と組み合わせると吸収率がアップ。

食物繊維たっぷり♪沖縄の行事菓子
あまがし

  【材料/2人分】
・あずき(乾燥)…40g(ゆであずき100g)
・丸もち麦…30g

A[黒糖(または三温糖)…50g、塩…少々]

【作り方】
(1)あずきは軽く洗って鍋に入れ、たっぷりの水(分量外)を加え、沸騰したらざるにあげる。
(2)鍋にあずきと水(3〜4カップ)を入れて中火で熱し、沸騰したら弱火にして約30分~40分ゆでる。
(3)別の小鍋でお湯(分量外)を沸かし、沸騰したらもち麦を入れ中火で約15分ゆで、ざるにあげて水けをきる。
(4)あずきがやわらかくなったらAと(3)を加え、沸騰したらアクを取り除く。
(5)約10分煮てとろみが出たら火を止め、器に盛る。

●黒糖
やさしい甘さでミネラルたっぷり。ビタミンも含まれる。

たっぷりのビタミンとミネラルで身体温め

お湯を注ぐだけで栄養補給できる即席みそ汁
かちゅー湯

かちゅー湯 撮影/廣瀬靖士

【材料/1人分】
A[花がつお…10g、細ねぎ…1/2本、すりおろししょうが…小さじ1/2、みそ…大さじ1]

・お湯…150〜200ml

【作り方】
(1)細ねぎは小口切りにする。
(2)器にAを入れ、食べる直前に熱湯を注ぐ。

●かつお節
 良質なタンパク質と必須アミノ酸がとれる。やさしいうまみで減塩にも。

朝ドラ『ちむどんどん』

 主人公は沖縄本島北部のやんばる地域で暮らす4人兄妹の次女の比嘉暢子(黒島結菜)。幼いころから食への興味が高かった暢子は1972年の本土復帰とともに上京し、家族や故郷の味に支えられながら大人への階段を登っていく。

宮澤かおるさん

教えてくれたのは…宮澤かおるさん ●沖縄料理研究家。管理栄養士。ジュニアアスリートの栄養カウンセリング、病院栄養士、撮影調理アシスタントをへて沖縄料理の魅力に着眼し関東初の沖縄料理研究家として活動をはじめる。SNS等を通して日々、沖縄料理や沖縄文化を発信。

レシピ考案・調理/宮澤かおる 取材・文/熊谷あづさ 撮影/廣瀬靖士 スタイリング/松井あゆこ