「真剣交際に入って、結婚への擦り合わせが始まってから起こるさまざまな問題」とは?

 結婚相談所には、仮交際と真剣交際の区分があります。仮交際は、何人の方とお付き合いしてもいいですし、お付き合いしている人がいても新しいお見合いをしもていい。いわば、お人柄を見る期間です。そこから、“この方となら結婚が考えられる“と思ったら、真剣交際に進みます。このときは、ほかにお付き合いしていた方には、“交際終了“を出して、お一人と向き合います。

 ライターをしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにしている婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は「真剣交際に入って、結婚への擦り合わせが始まってから起こるさまざまな問題」を見ていきましょう。

なんでも自分勝手に進めてしまう

 あつこさん(33歳、仮名)は、としあきさん(37歳、仮名)と2か月の仮交際期間を経て、真剣交際に入りました。お見合いで出会ってお付き合いが始まった当初は、決断力のあるとしあきさんの男っぽさにひかれていました。

「これまでお見合いで出会ってきた男性は、どこか頼りないというか。デートの日程を決めても、お店選びは女性任せの人が多かったし、中には、こちらが、『お会いしませんか?』と誘わないと、日程も決められない方がいた。そこにいくと、としあきさんは、どんどん会う日を決めて、お店も素敵なところを連れて行ってくださって。グイグイと引っ張っていってくれるところが本当に素敵でした」

 ところが、真剣交際に入ってみると、リーダーシップのある男っぽさが魅力だったはずなのに、そこが欠点だと感じるようになりました。

「なんでも勝手に1人で決めてしまうんです。『新居をどこにしようか』という話になったときも、自分の通勤時間しか考えていない。『このあたりがいいね』と提案してきたところは、彼は30分くらで会社に通えるけれど、私は、1時間半もかかる場所だったんです」

 そこで、「新居は2人の会社の中間地点にしてよ」と提案をしたところ、こんなことを言ってきました。

「あっちゃんは、事務職で定時に上がれるじゃない。僕の仕事は忙しいし、結局は僕の稼ぎが家庭経済の主軸になるんだから、僕の通いやすいところにさせてくれないかな」

 その言葉に、“自分の方が稼ぎがいいのだから、こちらを優先させて当然だろう”という横柄さを感じてしまったようです。

 また、結婚式をどうするかについても、意見が食い違いました。あつこさんは、こじんまりと身内だけで式を済ませたいと思っていましたが、そこもとしあきさんは、自分の考えを譲りませんでした。

「学生時代の友達も呼びたいし、会社の人たちも呼びたい。媒酌人を直属の上司に頼みたいし、親にも晴の日の姿を見せたい。内内だけで、こじんまりやることはできないな」

 あつこさんは、私に言いました。

「グイグイ引っ張っていってくれるのが魅力でしたけど、実はそれって、ワンマンってことだったんですね。もっとイコールな立場で、物事を考えてくれる人じゃないと、これから夫婦生活をしていくにしても、私がツラくなっていくんじゃないかと思いました」

 そうして、この交際には、あつこさんが“交際終了“を出しました。

「家柄が違う」釣り合わないと親が反対

 ともやさん(27歳、仮名)は、婚活を始めて1年になります。高学歴で上場企業にお勤めなので、お見合いは組めるのです。しかし、ともやさんには、恋愛経験がほとんどなく、交際に至っても、それをうまく前に進めることができませんでした。

「なかなか素敵だな、この女性と結婚したいな、と思う人は現せませんね。そもそも僕は、女性を好きになった経験がないので、好きになるというのがどういう感覚なのか、わからないんですよね」

 そんなことを言っていたともやさんですが、みなみさん(26歳、仮名)とお付き合いに入ってからは、様子が変わってきました。

「仕事をしていても、“今、みなみさんは、何をしているかな“とか、考えてしまいます。彼女と話しているときの笑顔とかも思い浮かんで、気がつくと、みなみさんのことばかりを考えているんです。人を好きになるって、こういうことなのかな、と。こんな気持ちになったのは、初めてのことなんですよ」

 そうして、初めて“真剣交際“に入ったのです。そこから1か月が経ち、気持ちがますます結婚する方向に向かっていったので、それを地方で暮らすご両親に伝えました。結婚を喜んでくれるのかと思いきや、ご両親が反対をしてきたのです。その反対理由が、彼女の家柄でした。

 みなみさんのお父様は開業医で、ご親族もお医者様ぞろい。サラリーマン家庭のともやさんの家とは、家庭環境が違いすぎる。家柄が釣り合わないというのです。

 ともやさんの父親は言いました。

「経済的に何不自由なく、どちかといえば贅沢をして育ってきた女性を、お前が養っていけるのか」

 ともやさんの母親は言いました。

「結婚は当人同士だけではなく、家と家の結び付きもあるのよ。そんな立派な家のお嬢さんをもらったら、こっちはずっと肩身の狭い思いをしなきゃいけないじゃないの」

 両親に反対されたことと、その理由をみなみさんに伝えると、彼女は、言いました。

「私はそんなに贅沢三昧をして暮らしてきた感覚はないよ。行きたい学校には行かせてもらったけれど、大学時代、お小遣いは自分でバイトをして稼いでいたし。結婚は、私たちの問題なんだから、私たちの気持ちが結婚に向かって進めるなら、それでいいんじゃない?」

 結婚は、周りから祝福されてしたいもの。ことに、両親には喜んでほしい。思わぬ反対で、へこんでいたともやさんですが、そこからは、ご両親へ、なぜ自分が彼女を選んだのか。これまでの経緯や、彼女の人柄を丁寧に文字に綴り、手紙を出しました。

 そして、その手紙を読んだご両親から、連絡がありました。

「2人でこの結婚を決めたというのなら、その気持ちを忘れずにいい家庭を築いていきなさい。ともやが初めて好きになった女性なのだから、何があっても一生をかけて守っていきなさい」

 親は子どもを愛しています。だからこそ、心配をしすぎるところがあるのでしょう。しかし、こちらの真剣な思いを伝えれば、わかってくれるはずです。

 そして、結婚はご自身が決めること。学生時代は、親から学費などを払ってもらい、傘の下にいたのですが、社会に出てご自身で働くようになったら、もう独立した考えを持っていていいし、それが本来のあるべき姿ではないでしょうか。

 ともやさんとみなみさんは、後に成婚退会をし、それぞれのご両親にご挨拶に行ったようです。

事業をやっていたら、借金があって当たり前

 よしえさん(47歳、仮名)は、さとるさん(58歳、仮名)と、真剣交際に入って1か月が経ちました。

「なるべく年の近い男性と結婚したい」

 婚活を始めた当初は、こう言っていたよしえさんですが、11歳上のさとるさんが年収1500万円だったことと、分譲マンションを所有しているというプロフィールにひかれて、お見合いをしました。そして、終えたときにこんなことを言っていました。

「ホテルラウンジの入口でお会いしたら、すごく紳士的に丁寧なご挨拶をしてくださいました。入口からお席までのエスコートの仕方、飲み物の注文の仕方、ウェイターに対する態度もスマート。見た目も若々しかったし、やっぱり人はお会いしてみないと、どんな方なのか、わかりませんね」

 こうして交際に入ると、デートも、これまで訪れたことがないようなお洒落な場所に連れていってくださったようです。車は、外国の高級車、私服もブランドものが多く、よしえさんは、なんだか自分がセレブになったような気持ちなっていました。

 そして、2か月後には、真剣交際に進みました。結婚の話を具体的にするようになり、あるとき現在住んでいるという分譲マンションの部屋に行きました。ところが、その部屋を見た途端、よしえさんの盛り上がっていた気持ちは、すぅーとに引いてしまいました。

 なぜ引いてしまったのか、その部屋を訪れたときのことを、私にこう話してくれました。

「2DKのお部屋だったんですが、すごく散らかっていて。男のひとり暮らしは、こんなものなのかな、とも思ったんですけど、壁紙も剥がれているところがあったり、ところどころ黄ばんでいたり。クローゼントの中に服が入りきらなかったのか、リビングの一角に学生が使うようなパイプハンガーがあって、そこに高級スーツやブランド服が下がっていました。あんな素敵なデートをしてくれていた男性が、こんなボロ家に住んでいるのかと思ったら、シンデレラの馬車がカボチャになったような感覚になりました

 さらに、お金の話になったときに、驚くべきことが判明しました。

「年収が1500万円とプロフィールにありましたよね。でも借金が5000万円あると。私は、サラリーマン家庭で育ってきましたし、借金を作るという感覚が全くわからない。だから、5000万円の借金があるときいたときにドン引きしてしまったんです。そうしたら、『事業をしていたら、借金があって当然だよ』と平然と言われました。そうなんですかね?」

 それは、人それぞれでしょう。個人で事業をしている方の中には、借金を作らずに事業規模を拡大している人もいます。

「さとるさん、あと2年で還暦ですよね。ご自身でお仕事をされているので、定年はありませんが、逆にどこまで働けるかもわからない。身体を壊したら、もうそこで終わり。育ってきた環境が違うから、お金に対する考え方も違うとは思うのですが、私に経済力があるわけではないので、5000万円も借金のある男性との結婚は不安です。若ければ冒険もできるけれど、自分の年齢を考えたら、手堅い職業の方との結婚のほうがいいような気がしました」

 結局、よしえさんから、交際終了を出しました。

 理想どおりの相手はいません。しかし、物事の考え方、お金の使い方、結婚後の仕事をどうしていくかなど、真剣交際に入ったら、生活をしていく上での価値観の擦り合わせは大切です。

 婚活はいっときのこと。でも、結婚は一生のこと、なのですから。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル