高橋伯明容疑者(事業内容を紹介するウェブマガジンより)

「学校の先生が教え子に手を出す事件って、よく報じられていますでしょ。今度は家庭教師ですか。先生と呼ばれる人が何をやっているのか。二度と子どもに接することのないようにしてもらいたい」

 と容疑者宅近くに住む女性は憤る。

 横浜市で家庭教師派遣業を営む高橋伯明容疑者(35)が神奈川県警相模原南署に逮捕されたのは5月19日のこと。自ら出向いた同県相模原市の派遣先でマンツーマンの学習指導中、小学5年女児(10)の下半身を触るなどした強制わいせつの疑い。

生徒との信頼関係を利用して“口止め”工作も

 全国紙社会部記者の話。

「4月2日午後3時45分から4時ごろまでのあいだ、女児宅の部屋でふたりきりで勉強に集中するシチュエーションを悪用。数年前から被害女児の勉強をみており、信頼関係を築いたうえでの犯行だった。

高橋伯明容疑者が逮捕された現場は、多くの学生が通る閑静な住宅街の路上だった

 触ったあとで“きょうのことはお父さんとお母さんには言わないでね”などと口止めし、女児はかわいそうに当日は親に言い出せなかったらしい。のちのち、先生にされたことを“怖かった”などと打ち明け、母親が警察に相談したのが逮捕のきっかけ」

 取り調べに対し、

「間違いありません」

 と容疑を認めているという。

 自称・早稲田大卒の高橋容疑者が家庭教師派遣業の会社を設立したのは4年前。資本金50万円で横浜市戸塚区のタワーマンション高層階に事務所を構え、事業目的として学習塾の経営や通信販売業、コンサルティング業務も視野に入れるなど手広く展開。約2年前、同区内の雑居ビルに移転している。仕切り板で囲った机と椅子のあるブースを専有できるレンタルオフィスに切り替えた。タワマンからの落差は大きい。

 同じビルで働く女性は、

「容疑者らしき人物と階段ですれ違ったことがあるが、変な印象は持たなかった」

 と、ソフトな雰囲気をまとう家庭教師が少女を毒牙にかけた事件に驚く。

 インターネット上に公開した会社データによると、大学在学中から家庭教師や塾講師を務め、25歳のとき家庭教師に専念した。起業後、学力と指導力、コミュニケーション能力のすぐれた現役学生に絞って採用。少数精鋭の講師陣で中学、高校、大学受験に対応し、難関校・医学部コースを設け、海外留学を目指したり、不登校・発達障害の生徒もフォローできると謳う。

生徒に信頼される関係作りを大切にし、生徒の将来を最大限に尊重すると語る高橋容疑者(経営専門雑誌より)

 売りは「業界最低料金」とアピールする安さ。実績として《偏差値40台の高校生を早稲田大学に入学させる》などと“ドラゴン桜”を気取る。

 なぜ、家庭教師の道を選んだのか。

 経営専門雑誌のインタビューにこう述べている。

《次第に塾や学校で子どもの学力を伸ばすには限界があると感じるようになったんです。なぜかというと、集団授業はもともと勉強ができる子にとっては無駄な時間になり、一方で、勉強についていけない子どものフォローもしづらいからなんです。そして個別指導の塾はというと、いくら個別といっても実際にはマニュアルがあり、細やかな指導をするのは難しいんですよ》

 一理あるのかもしれない。しかし、「細やかな指導」の名目のもと、密室でわいせつ行為におよんでいたわけだから鼻白むだけだ。

 容疑者宅は横浜市中区にある家賃十数万円の一軒家。

 近隣住民らによると、妻子がおり、引っ越してきて1年に満たないという。

「スレンダーな奥さんと小学校低学年ぐらいの娘さんが1人います。周囲に引っ越してきた挨拶もせず、荷物を運ぶのに使ったとみられる大量の段ボールの束が庭先にずっと出しっぱなしなのが気になりました。被害女児と同じような年頃の娘さんを持つ父親として、ありえない犯行だと思います」(近所の女性)

 親子3人で出かける姿を目撃した住民はこう話す。

「奥さんは“こんにちは”と声をかけてくれましたが、高橋容疑者は無言でした」

 私生活では、コミュニケーション能力に疑問符のつく一面が浮かび上がった。さらには、こんなエピソードも……。

“真夜中クレーマー”の素顔

「容疑者は変わったところがある。夜中でも構わず、自宅の管理会社に電話をかけて“戸が開かない”とか“電気がつかない”などとクレームを入れて対応を迫るそうです。翌朝でもよさそうな内容だから神経質なのかもしれない」

 と近所の男性は言う。

 表と裏の顔はずいぶんと異なるようだ。

「捜査当局はほかの教え子に被害がないか確認する方針だ」(前出の記者)という。

 別のウェブマガジンでは家庭教師のやりがいについて、

《仕事をしている間、最も幸せだと感じたのが今の職業でした。生徒と信頼関係を築き、共に目標を達成する喜びは何ものにも替えがたい経験です》

 と述べている容疑者。

 何かにつけ「信頼」を連呼し、《学びは、至高の遊びである》(同マガジンより)などと知った口を叩いていた。

 あげくは家庭教師業界について、

《この業界の問題点は、家庭教師になるための資格がなく講師の質も玉石混交であること》(前出の経営専門雑誌)

 と断じる一幕も。

 そのとおりだとしても、被害女児やその家族の気持ち、まじめに取り組むほかの家庭教師が被ったマイナスイメージなどを考えると、高橋容疑者は「玉」を装った「石」にほかならないはずだ。