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 更年期はさまざまなトラブルが起こるが、その影響は女性器にも及び、かゆみ、におい、たるみ、尿もれなどを招く。さらに、腟は数か月セックスレスなだけで萎縮、「痛い」「濡れない」などの苦痛を伴うように。自分のアソコをケアすることで、気持ちイキイキ、人生の質までアップ!

ショック! 更年期はアソコも劣化する

 年を重ねるほどアソコが下着と擦れて痛くなったり、なんとなくにおうと感じたり……、年々強まっていくデリケートゾーンの違和感。そんな中高年女性特有のお悩みには“更年期”が深く関わっている。

「更年期は閉経を挟んだ前後5年、合計10年の期間を指します。この期間に起きる大きな変化は、卵巣の機能停止。卵巣には女性ホルモンのエストロゲンを作る働きがあるので、卵巣が機能しなくなればエストロゲンの量は急激に減ります。 

 エストロゲンは、月経や出産に関わるだけでなく、血管や骨の健康を保ち、肌の潤い成分を作る線維芽細胞に働きかける重要なホルモン。なので、卵巣の機能が停止すると動脈硬化や骨粗鬆症、肌のシミやシワの増加などの不調を招きます」

 そう話すのは、富永ペインクリニック院長・富永喜代氏。富永氏は中高年の“性の困りごと”にフューチャーした『性のトリセツ』を執筆し、YouTubeでも医学的な観点から多様な情報を発信している。

「デリケートゾーンも例外ではないどころか、卵巣と距離が近いぶん、エストロゲン低下の影響を最も受けやすい部位です。ぶっちゃけて言うと、更年期以降、腟のお手入れをしなければどんどん“劣化”していきます」

  “腟の劣化”とはかなりのパワーワードだが、富永氏いわく、日本人のほとんどがその事実を知らないという。

「私が運営している『富永喜代の秘密の部屋』というフェイスブックのコミュニティーでは、中高年の性に関するトピックスを扱っています。そこに登録している40~60代の男女351人に、更年期以降の女性が感じる性交痛や、腟の萎縮に関するアンケートを取ったところ、女性の3人に1人が『腟が劣化することを知らない』という結果が出ました。

 これは、日本の性教育がデリケートゾーンの話題をタブー視してきた歴史の表れでもあります。ヨーロッパではデリケートゾーンのお手入れは一般的ですが、日本の中高年女性には“デリケートゾーンをケアする”という発想すらないのが実情です」

 多くの女性がデリケートゾーンの話題を避けてきたため、いざ更年期を迎えて腟に違和感を覚えても相談できずにいる。

「加齢による腟の劣化は、誰にでも起きるごく自然な変化。まずはその事実を受け入れて、前向きに腟のケアをスタートしてほしいですね」

年をとるほど増す
更年期のデリケートゾーンの悩み


更年期はさまざまな“デリケートゾーントラブル”に襲われる!

・におい
・性交痛
・頻尿
・尿もれ
・かゆみ
・おりものの変化
・下着のこすれ
・潤いの減少

アソコは“第2の顔”
「ふっくらピンク」を目指すお手入れ法

 中高年以降、デリケートゾーンにはさまざまな変化が起きる。実は、更年期のエストロゲン減少に加えて、セックスレスで“ご無沙汰”な状態も腟の劣化につながるとか……。

乾いてたるむ……哀しき外陰部の加齢

「加齢によって腟が衰えると乾燥し、分泌液が減って濡れなくなり、腟粘膜も薄くなります。さらに腟の入り口も狭くなって萎縮するので、性交痛も感じやすくなる。女性から“久々にパートナーとセックスをしようとしたら性交痛がツラかった”という相談も多いですね。中高年以降、腟は数か月使わないと萎縮することも、ぜひ覚えておいてほしいですね」

 性交痛のほかにも、外陰部のたるみや、色素沈着によるアソコの黒ずみなどビジュアル面の衰えも著しい。こうした腟の加齢変化を放置すると、どんどん老け込んでいく、と富永氏は話す。

「鏡にうつる顔を“第1の顔”とすると、デリケートゾーンは“第2の顔”。顔に入念なお手入れをするようにデリケートゾーンのケアも真剣に取り組めば、若返りも期待できますよ」

適切な洗い方でにおいのもとを断つ

 中高年女性に、まず見直してほしいのが「デリケートゾーンの洗い方」だという。

「小さいころから“アソコは触ってはダメ”と言われて育った人は、ササッと洗っておしまいにしがち。その習慣を続けていると、大陰唇と小陰唇のあいだに垢がたまってにおいの原因になります。ボディソープで腟のヒダまで丁寧に洗うと清潔になるだけでなく、マッサージ効果で血行もよくなるので一石二鳥!」

 ただし「腟の中を石けんやボディソープで洗うのはNG」と、富永氏。

「腟内は“デーデルライン桿菌”という善玉菌の自浄作用によって常に“酸性”に保たれています。しかし、更年期以降はエストロゲン低下の影響でデーデルライン桿菌の数が減少しているんです。そんな部位をアルカリ性のボディソープで洗うとデーデルライン桿菌が死滅してしまい、雑菌が増えて“すえたにおい”がする……なんて悪循環に陥ってしまいます」

 デーデルライン桿菌を減らさないためにも「デリケートゾーン専用ソープ」を使用するのがベストだとか。

 「仕上げに善玉菌を含む“腟専用の保湿ジェルクリーム”を腟内に塗り込むと、腟専用善玉乳酸桿菌が補充されます。腟内の環境が整うと、においが軽減されますよ」

 腟の健康は日々のお手入れで決まる! 地道に続けるのが吉だ。

マッサージ効果も! 更年期からの正しい洗い方

1 Vゾーンはお腹をやさしくマッサージするように洗う

2 大陰唇と小陰唇の隙間、ヒダの外側を指先で洗う

3 クリトリスは指2本で包皮をむくようにして洗う


※腟の奥深くまで洗うのは避けて。また、温水洗浄便座の「ビデ」は善玉菌を洗い流す可能性があるので多用は控える。「外陰部はやさしくなでるように“立体的”に洗うのがコツ」と富永先生

潤う人生後半を!女の現役感をアップするマッサージ

 デリケートゾーンのケア方法はほかにも。中高年女性になじみが薄い“マスターベーション”も腟の劣化対策に有効だ。

「マスターベーションは、パートナーに頼らず自分でオルガズムを得られて、自分自身で性機能の維持につながる習慣です。50代以降こそ、レッツオナニーなんです!」

 日常的に使うことにより、老化防止に効果が得られる。

「デリケートゾーンのケアを行う最大のメリットは、女性としての自信を取り戻せること。性交痛の緩和や、外陰部のたるみの改善など目に見える喜びもありますが、それ以上に“女の現役感”がアップします。いつまでも無理にセックスをしましょうということでもないし、したくなければする必要もありません。

 ただ、腟のケアを始めてから輝きを増した女性をたくさん見てきました。デリケートゾーンの健康は、若々しさを得るテクニックでもあるんです。いつでもフォーリンラブできる身体を作ることは大人の身だしなみ。人生100年時代を楽しむためにも、新たな一歩を踏み出しましょう」

 アソコのお手入れは、最強のアンチエイジングなのだ。

98%が潤って性交痛が軽減
デリケートゾーンのマッサージ


 お風呂上がり! 腹式呼吸をしながら「エストラジオール」配合オイルを使ってトライ!

1 手のひらで恥骨からおへそ・脇腹に向かって下から上にやさしくなで上げる

2 内側から外側に向かって、太ももの付け根をグルッと回転させるイメージでマッサージ

3 太ももの内側を、ひざから太ももの付け根までギュッと押し上げるようにマッサージする

腟・外陰部のマッサージ

「エストラジオール」配合のオイルやジェルを使った腟・外陰部のケア方法

1 外陰部

・大陰唇は下から上に向かってマッサージして刺激する
・小陰唇は外側(大陰唇との間)と内側(腟との間)を人さし指と
 中指で挟むようになでると、栄養が行き渡りやすい
・会陰部はオイルを塗った指を左右に動かして刺激

2 腟の内側

 ジェルを使って会陰部から腟の中をマッサージ。「ふう~」と息を吐いて腟を締めるイメージで、腟内に負荷をかけながら筋肉を鍛える。上、側面、下……と、会陰側に圧を加えて腟の内側をやわらげていく。最初は1本の指の第一関節まで挿入し、慣れてきたら第二関節まで挿入してみよう

いまも週1ペースで楽しむ生涯現役カップルのヒミツ

「濡れにくさ」に悩み、富永医師のもとを訪れた70代の女性は、現在83歳の夫といまも週1回挿入を伴うセックスを楽しんでいる。セックス前には男性が20分のマッサージを行い、挿入中も「キミのアソコは温かい」とささやいてくれるそう。

 83歳の男性が勃起機能を維持していることに驚くかもしれないが、継続的に性器を使っていれば機能が衰えないケースも。一方彼女は、夫の愛ですでに“心”が濡れているから、デリケートゾーンのケアを頑張って濡れにくさを克服。継続的なセックスと日々のケアの大切さを実感する!

・ケアにはエストラジオールがオススメ!

「エストラジオール」は更年期以降急激に減ってしまう女性ホルモン・エストロゲンの最大活性物質。エストラジオール配合の化粧品は1日1回、眠る前に顔、ボディ、デリケートゾーンのマッサージに使用するといい。

富永氏おすすめの「Dr.ESTRA」

 富永氏おすすめの「Dr.ESTRA」はエストラジオール配合の美容エッセンス。女性の魅力を引き出すチュベローズの香りが特徴。
https://estra.co.jp/

富永ペインクリニック院長 富永喜代先生

富永ペインクリニック院長
富永喜代先生


医学博士。日本麻酔科学会指導医。2008年に富永ペインクリニックを開業し、性交痛外来では5000人のセックスの悩みをオンライン診断する。中高年の性をテーマにした著書『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)も話題。

取材・文/大貫未来(清談社) イラスト/サトウヨーコ