相葉雅紀インタビュー

「自分が持っている力をすべて吐き出してやり切りたい」12年ぶりの舞台への意気込みを語る相葉雅紀。信頼を寄せる演出家とのタッグで新境地に挑む――。

厳しくも深い“愛”

「僕がお芝居をするうえですべてを作ってくださった先生なので、また一緒にお仕事ができてうれしく思う反面しごきに耐えないといけないのか。そういう状況に12年たって乗り込んでいく自分がどう感じるのか楽しみです」

 12年ぶりの舞台『ようこそ、ミナト先生』に主演する相葉雅紀。

 “お芝居の先生”とは、演出家の宮田慶子。『燕のいる駅』(2005年)、『忘れられない人』('07年)、『グリーンフィンガーズ』('09年)、『君と見る千の夢』('10年)と、アイドルグループ、嵐としてデビュー後に相葉が主演した舞台の演出を担当し、5作目の本作で久しぶりにタッグを組む。

「宮田先生にはいろいろなことを指摘いただくので、稽古に入るととても怖いです(笑)。以前、集中していないと稽古時間が残っていても“はい、終わり。やっても意味がないので自分で考えてきて”と言われたことがありました。先生は毎回、舞台と心中する覚悟でやっているとおっしゃっていました。今回もその気持ちや思いと同等、それ以上に(演技で)返さないといけないと思っています」

 怖い存在の宮田だが、デビュー当初から現在に至るまで相葉の成長を見守ってくれているひとりで、プライベートでも交流があり信頼を寄せている。

「(放送を見て演技について)僕が悩んでいるのを察してドラマの撮影現場に来てくれたことがあります。ひとりの演出家ではあるけど、それを越えた愛を感じました」

 この12年は、国民的人気の嵐の一員として活躍し個人でもレギュラー番組を抱えてドラマ、映画にも出演し多忙を極めた。

「1か月稽古、1か月公演の舞台はグループ活動をしているときは時間をつくるのが難しかった。でも活動を休止していろいろ自分のことを考えるようになって、舞台に挑戦したかったです。あえて厳しい環境に飛び込むという自分のためよりも、単純にいい作品を作りたいという思いが強いです」

一体感や共有感に達成感があります

 相葉演じる湊孝成は、とある山間の町で非常勤の音楽教師として働くことになった。人当たりがよく誰にでも親身で“ミナト先生”と慕われるが、ある秘密を抱えていた――。脚本は前作も手がけた金子ありさが担当する。

「やりがいのある役で、挑戦だと思っています。僕がいままで演じてきているのは“こういう人いるよね”と物語に溶け込むような役が多かった。ミナト先生は一見いい人そうでも話が進むにつれて印象が変わってくるので表現が幅広く求められると思う。これまであまり演じたことがないだけに想像力を働かせて、自分が持っている力をすべて吐き出してやり切りたいです」

 俳優の醍醐味とは?

「同じセリフ、同じ環境はひとつもないけど、たくさんの演出家の下で手法や経験が増えていると思う。僕は役にのめり込むタイプ。演じているときは楽しいという感覚はなくて、やり切ったときに達成感が生まれてやってよかったと思う。

 舞台では、張り詰めたシーンで緊張感が高まったときにお客さんと一緒に呼吸している感じを何度か経験しました。息を止めるタイミングが一緒になったりするのは、舞台ならではと思う。毎回あるわけではないけど一体感や共有感に達成感があります」

 8年ぶりの主演映画『“それ”がいる森』(9月30日公開)では初めてホラー作品に挑戦し、“俳優・相葉雅紀”に注目が集まる。

「たまたま重なっただけ。でも俳優として幅広くいろんな役をやりたいです。挑戦したことのない役で相葉雅紀の新しさを感じてもらえたらいいですね」

 積み重ねた経験を糧にした新境地に期待!

・舞台のルーティン

「舞台は毎回、同じ気持ちで幕を開けるのがいちばん難しい」と相葉。その対策のひとつが気持ちを落ち着かせる音楽だ。「前作の『君と見る――』はピアニストを目指す役でラフマニノフの曲を楽屋でかけていました。今回は音楽教師ですが、嵐の曲でも何でもいい。すっと気持ちが落ち着く曲を見つけられたら毎日のように聴くと思います。コンサートのときはマッサージ、シャワー、食事を本番何分前にするか決まっていました。状況は違うけど今回の舞台もルーティンができれば気持ちが楽になってスタートラインに立てると思います」

・定食屋にハマっています!

 舞台公演中は体調管理も重要に。「身体を動かす分、たくさん食べています。白米が好きで、定食屋は大好きです。いちばんのお気に入りは豚のしょうが焼き。ごはんをおかわりしちゃいます」

舞台『ようこそ、ミナト先生』
【東京公演】6月4日(土)~19日(日)新国立劇場 中劇場【大阪公演】同29日(水)~7月3日(日)梅田芸術劇場メインホール/出演:相葉雅紀、秋元才加、忍成修吾、濱田龍臣、須藤理彩、青木さやか、中山祐一朗、松平健ほか