恒松祐里(撮影/吉岡竜紀)

 '04年に匿名掲示板『2ちゃんねる』(現在は『5ちゃんねる』)に書き込まれた都市伝説“きさらぎ駅”。新浜松駅23時40分発の電車に乗った女性が実在しないきさらぎ駅で下車。約4時間にわたり不可解な出来事を実況後、消息を絶った……。10年以上たった今でも、ネット上ではさまざまな臆測を呼び続けている。

 そんな“キング・オブ・都市伝説”を映画化。本作で映画初主演を飾ったのは恒松祐里。民俗学を専攻する大学生を演じ、卒業論文のために“きさらぎ駅”に行ったとされる女性(佐藤江梨子)に会いに行くと……。

「『きさらぎ駅』の撮影は22歳になる2日前から始まりました。実は私、“22歳までに映画の主演をしたい”って心の中で密かに思っていて。それがギリギリ叶いました! すごくうれしくて、すごく記念になった作品です」

 しかしながら、ホラーや異世界などの“怖いもの”は苦手。脚本を読む前はかなり身構えてしまったという。

「絶対に人のいるところで読もうと思って(笑)。でも読み進める中で“来る来る来る”という怖さより“次はどうなるの?”というワクワク感のほうが大きかったですね。いい意味での驚きが多く、余韻もあって、少し哲学的な感じもするし」

 恒松のインスタには“今回はホラーだから見に行けなくてごめんね”というコメントも寄せられたというが、

「脚本を読む前の私と同じ心境だと思うんです。でも、撮影手法もユニークで、映画を見に行くというよりは、まるでVRゲームというか、きさらぎ駅というテーマパークを体感できるような作品になっています。
異世界に足を踏み入れつつも必ず無事戻ってこられる……というのが、何よりの魅力だと思います(笑)」

相次ぐ話題作への出演、デビューは7歳

 昨年は話題作への出演が相次いだ。『全裸監督 シーズン2』(Netflix)ではヒロイン・乃木真梨子役で体当たりの演技。朝ドラ『おかえりモネ』では百音(清原果耶)の親友・ゆるふわなスーちゃんを好演。若くして、作品ごとにまったく違う印象を残している。

恒松祐里(撮影/吉岡竜紀)

「今作を含め、その3作でいちばん素の自分に近いのは、朝ドラのスーちゃんですね。プラス自分の好きな部分を全力で出せたなと思っています」
とニッコリ。そのキャリアは長く、7歳のときに子役としてドラマ『瑠璃の島』('05年)でデビュー。

「すごく人見知りだったので、両親が事務所のオーディションに連れていったみたいですが、もうその記憶はなくて(笑)」

 お稽古事感覚で演技やダンスのレッスンを受け、現場に行けば“大人がたくさんいるな”というイメージだったと振り返る。

「でも、そのころから“お芝居って楽しい!”という気持ちはちゃんとあって、好きでした。 仕事としての女優をはっきりと意識したのは15歳。映画『くちびるに歌を』('15年)がきっかけです。今まででいちばん大きな役をいただけて。撮影の準備期から宣伝まで、濃厚に作品と関わっていく中で“こうやって映画は作られていく”を目の当たりにして。もっともっと、こういう作品に出会いたいと決意を新たにしました」

将来的にはどんな女優になっていきたい?

「ものづくりというか、何かを作り出すことが好きなので。女優という名前のくくりにとらわれず、クリエイターとして面白いものを作り出していきたいという意識は強いです。作品を一から作るほうに関わったり、海外のクリエイティブチームとお仕事をしたいという気持ちもありますし。物を作るという作業をどんどん広げていけたらいいなと思っています」

裁縫が好きです

 多忙な日々の癒しになっているものは、裁縫。

最近ハマっているのは、ビーズアクセサリー作り。自分用にネックレスとかピアスなど作っています。手先は器用なほうです。子どものころから羊毛フェルトで何か作ったりしていました。日々、チクチクやっていることが癒しです。でも、現場の待ち時間にやるのは、集中が途切れてしまうのが嫌なので控えています」

もし、異世界に行くことになったら?

「絶対、嫌ですね(笑)。“帰ってこられるから”と言われたとしても、帰ってこられないんじゃないかと疑いますね。嫌な予感しかしないです、その企画は(笑)。でも行ったら行ったで慎重に対応できるタイプだと思うので、そういう意味では今回の役とは似ているのかな? とはいえ、怖い思いはしたくないので、まず行かないです(笑)」

『きさらぎ駅』公開中(全国順次ロードショー)

(c)2022「きさらぎ駅」製作委員会