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「おとなしくて喧嘩なんてしたことないし、凶暴なことをするやつじゃないと思うんやけどね……」

 会社の同僚はそう言って首をひねった。

 5月28日、兵庫県警生田署などは、会社員・谷本将志容疑者(32)を殺人未遂の疑いで緊急逮捕した。前日の午後7時50分ごろ、容疑者は神戸市中央区に住む女性(23)の自宅マンションで待ち伏せ。女性が帰宅して、ドアを開けた瞬間に、容疑者が強引に侵入していきなり両手で女性の首を絞めたのだ。

首を締めた後に“好意”と伝えた

「ここからがなんとも奇妙な犯行なんですが、その後、およそ1時間にわたって、女性に“自分がいかにその女性を好きか”ということを切々と訴えたそうです。つまり容疑者が被害女性に“告った”ということ」(全国紙社会部記者)

 女性の部屋を立ち去る際、容疑者はこんな捨て台詞を残している。

「警察には通報しないでね」

 幸いなことに、被害者の女性は頸部に軽いけがを負った程度だったが、犯行の間はどれだけの恐怖を味わったのだろうか。女性は当然のことながら、翌日に親戚を通じて、警察に被害を届け出た。捜査関係者はこう話す。

「容疑者の名前や住所はもちろんわかりませんでしたが、被害女性から容姿や特徴を聞くことはできました。また、被害者は過去にも数回、容疑者を近所で見かけたり、声をかけられたりしたことがあったため翌日、被害女性の自宅マンション近辺を捜査。すると、容疑者の容姿や特徴が似ている男性がウロウロしていた。そこで職質をかけて、緊急逮捕したわけです」

 谷本容疑者は警察の取り調べに、

「殺すつもりはなかった。女性が大声を出そうとしたので、それを止めるために、両手で首を絞めようとしたのか、お腹のところを引っ張ったのか……覚えていない」

 と、犯行の一部を否定しているという。

 谷本容疑者の住まいは、犯行現場から10キロメートル近く離れた同市内にあった。そこは建設会社の社員寮で、容疑者は同社の社員で建築現場作業員だった。冒頭の同僚は容疑者の印象について、

「現場の人間はキャバクラなどで酒を飲むのが好きな人が多いんやけど、あいつは行かへんし、女性の話さえせえへんやつやからね。神戸の中心街のおしゃれな場所はベッピンさんが多いところやから、ときどき出かけて行って、物色してたんとちがうか」

 容疑者の見た目についてはこう話す。

「服装は現場で働く人間が着るような服やなしに、流行のカッコええ服を着とった。髪型もコロコロ変えてたわ」(同・同僚)

 仕事の評価は高かったようだが……。別の同僚からは、

「あいつは、若いのに仕事はできるよ。マジメやし、熱血漢でね。でも、変な正義感があってな。同僚の悪いところ、直したらいいところばかり目についてしまうようで、それをよく愚痴るんよ。プライドも高いから、仲間とうまくコミュニケーションでけへん。だから孤立しとったわ」

被害女性が住んでいた神戸市中央区の中心街

 谷本容疑者は、大阪府の出身。中学校時代の同級生によると、恵まれない家庭環境だったという。

女性関係は奥手で、ある意味“ピュア”

「確かひとりっ子だったと思います。両親が離婚していて、父親のほうに引き取られていた。寂しい思いもしたのか、“自分はいい家庭を持ちたい”という気持ちが人一倍強かった印象です。もともとおとなしい性格だったし、女性関係は奥手である意味ピュアだった」

 高校に進学するも中退。それからは建設現場の仕事などを転々としたようだ。

 容疑者の知人によるとここ最近、環境に変化があったという。

「やつ(容疑者)の父親は60歳を過ぎた程度やと思うんやけど、少し前から認知症になって、施設に入った。それで今度は、母親のほうの面倒を見るようになっていたと思いますよ」

 すると、母方の祖母も認知症になってしまう。前出の同僚は、こう話す。

「つい数週間前から、急に会社を休み出した。事前に“認知症の祖母を介護したいので、休ませてください”と言ってね。でも、その休みをとった日があの事件が起きた日やった」

 捜査関係者によると“身体を触るなどのわいせつな行為や、性的行為は認められない”という。ピュアな男の暴走だったのか……とはいえ、被害者女性にとっては、一生にわたって忘れることができない恐怖の1時間だったに違いない。そのことを肝に銘じて刑に服し、罪を償ってもらいたい。