芦田愛菜

 芦田愛菜が情報番組の中で「将来は医学系の道に進みたい」と語ったのは中学生になって間もなくこと。

 あれから5年、来年はいよいよ名門大学の医学部に進学が内定しているとの報道があった。目標を達成するために彼女は仕事の合間でも髪をカットしているときも勉学に勤しんでいるとも。

 報道以降、多くの媒体が知的かつ若さ溢れる彼女をさまざまな角度で特集するようになった。『週刊女性PRIME』は親の子育てに焦点を当て、礼儀の正しさや教育法について紹介している。

 彼女を育ててきたのは親だけではない、そう語るのは老舗芸能プロ幹部。

芸能事務所になる前は“幼児教室”

「芦田さんが所属している事務所は鈴木梨央さんや寺田心さん、住田萌乃さんなどほかにも活躍しているタレントが多い、“業界一”と言われている子役専門事務所。所属タレントは1000人を超えていますが、子どもを立派なタレントに育てるだけでなく、人間力も高める場所なのです」

 バラエティー番組などでも目にすることだが、年少の芸能人のなかにはスタッフやマネージャーなどに横柄な態度をとるものが少なくない。芸能事務所としても多少のワガママなどは、許容しなくはならない、ヘソを曲げられてはいけない、と。その点、芦田が所属している事務所はその歴史からして一味違う。

あの事務所は芸能事務所になる前は“幼児教室”だったんです。幼児教室と言ってもただお受験対策といったものではなく、子どもの個性を伸ばすことに重点を置いて個人レッスンをしていたようです。

 現在もタレントとしての育成はもちろん、挨拶や思いやりなど、立派な社会人に成長するための教育もしっかり行なっているんと聞きます。子どもの教育に関するノウハウを持っていたところがほかの子役芸能事務所と違うところでしょう。芦田さんがあそこまでメディア対応が上手なのもそういった面が大いに影響しているでしょう」(テレビ局プロデューサー)

 ほかにも、所属する子役の親には「自分が若いころに感銘を受けた映画や本を子どもと一緒に見る」といったこともす勧めるなどしているとも聞く。芦田親子のコミュニケーションはさらに深めたのではないだろうか。

 同事務所は定期的に所属タレントを連れて“合宿”も行なっており、私もたまたまその現場に遭遇したことがある。

「おはようございます」ではなく「おつかれさまです」

 それは、全国に14ある『国立青少年自然の家』という社会教育施設で、比較的東京に近い地区で行われていた。

 施設では様々な決まりごとがあり、その1つに、施設を利用している人たちはすれ違ったら必ず挨拶を交わすというものがあった。「おはようございます」や「こんにちは」、「こんばんは」──そういった日常会話で使うもの。

 同事務所の子どもたちがみんな大きくな声で、挨拶をしてきたことをよく覚えている。滑舌がよく、さすが役者だと感心していた。なかには、私のことをスタッフと思ったのか、「おつかれさまです」だったのには驚いた。階段ですれ違った小学校低学年ほどの少女だったが、あの年齢で「おつかれさまです」といった言葉が自然と出てくるあたりに、徹底したプロ意識を感じた。

会見で、記者に一生懸命話す当時7歳だった芦田愛菜ちゃん('11年)

 芦田は3歳の時にこの事務所に所属したのだが、その選択は間違っていなかったようだ。そんな彼女もじきに大学生になる。芸能活動を続けることになった場合、今後も“子役専門事務所”に所属したままなのだろうか。前出の老舗芸能事務所幹部はこう語る。

「子役専門事務所にはほかの芸能事務所にない子役に特化したマネージメントのノウハウがあります。たとえば映画・ドラマ制作サイドとの“太いパイプ”などです。子役といえばあの事務所、ということで、キャスティングがまとまりやすい。それは逆のことも言えます。大人になっても子役事務所に所属している例がないことはないですが、移籍するケースが多いですね。芦田さんが有名私立校を受験すると決めた際も、事務所はそれに集中できる環境を作ったといいます。今後についてもきっと彼女の意志を尊重するでしょう

 芦田は今後も役者と学生の “二刀流”でいくのか、それとも引退する?──今後の進退が気になるところだ。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。