GoToトラベル事業公式サイトのHPより

 2022年6月15日、岸田文雄首相はこれまでの「県民割」の範囲を全国に拡大する方針を示し、17日に観光庁が詳細を発表。通称「全国旅行支援」という県民割の全国版のような旅行割引キャンペーンが早ければ7月前半からスタートする。

 その一方で「Go Toトラベル」の再開は先送りされた。全都道府県民が使える割引キャンペーンなら「それはもはやGo Toトラベルなのでは?」という声が聞かれるなか、専門家に全国旅行支援とGo Toトラベルは何が違うのか、話を聞いた。

1人1泊あたり「交通費込みで2万円」が狙い目

「今回発表された全国旅行支援はあくまで都道府県が主体のキャンペーン。国が主導するGo Toトラベルとはその点が大きく異なります」(年間100泊以上旅するトラベラー&ジャーナリストの宮内真人さん、以下同)

 主体が国ではなく各都道府県のため、例えばある地域で新型コロナが拡大した場合、その地域のみを知事の判断によって対象外にできるなど、より柔軟な対応が可能になる。利用する私たちにとっての一番の関心事である「旅行代がいくら安くなるのか」という点についてはどうだろう。

「再開を予定していたGoToトラベルの割引額は最大で1人1日あたり1万3000円でしたが、全国旅行支援は最大で1万1000円。割引額が2000円少なくなることになります」

 割引額が減るのは残念だが、その分、得できるところは最大限に得したい。少しでもお得になる裏ワザを宮内さんに教えてもらった。

 7月前半から始まる全国旅行支援は旅行代金の40%が補助されるので、例えば1泊5000円のホテルに泊まると2000円の割引になる。また、それとは別に、地域で使えるお買い物クーポン券が3000円分もらえるので、2000円+3000円で割引額は合計5000円。つまり、1泊5000円のホテルに泊まると実質0円で旅行を楽しめることになるのだ。

ポイントは、クーポン券が3000円分もらえるのは平日だけ、という点です。休日は1000円分なので、少しでも安く旅行がしたい人は平日がおすすめです。なお、まだ発表されていませんが、1人1泊あたり5000円未満は対象外といったような最低利用金額が設定される可能性があるので、その点は要注意です」

 また、1円でも多く得したい人におすすめなのは、1人1泊あたり「交通費込みで2万円」の旅行商品。宿泊代の割引額は5000円が上限だが、公共交通機関での移動がセットになった商品だと、割引額の上限は8000円に上がる。2万円の旅行代金だと割引率40%で上限いっぱいの8000円安くなるので、平日ならクーポン券3000円分を足すと合計11000円オフになる。

 2万円以上の旅行商品でも割引額は11000円以上にはならないので、割引を最大限に活用してかつ費用を抑えたいなら、1人1泊あたり「交通費込みで2万円」が狙い目だ。

「交通付きの旅行商品の補助額の上限を上げたのには、コロナ禍で密を避けようとマイカーで旅行に行く人が増えたために経営が悪化した航空会社や鉄道会社の支援という側面もあると思います」

「全国旅行支援はそれだけでも十分お得なキャンペーンですが、よりお得になる裏ワザとして紹介したいのが『自治体独自キャンペーンとの併用』です」

「旅先で日帰りプラン」という裏技

 例えば、札幌市は独自に「サッポロ割」という割引キャンペーンを行っていて、1泊5000円以上の場合に宿泊3000円割引&地域クーポン2000円分がもらえる。このサッポロ割、現在は施設や居住地の条件によっては県民割と一緒に使うことができるので、もしそれが全国旅行支援でも可能なら超お得になる。

「現在のものと利用条件に変更がない場合、仮に8000円のホテルに泊まると、サッポロ割で3000円割引したあとの金額に県民割(北海道は『どうみん割』)を適用して2000円割引になり、合計5000円の割引になります。加えて、平日なら2000円+3000円で5000円分のクーポンまでもらえることに。合計10000円分なので『実質黒字』になることさえあり得るのです」

 現金がもらえるわけではないので儲かることにはならないが、1泊の宿泊代として3000円払って5000円分のクーポンがもらえるなら、こんなにお得なことはない。地方自治体の独自キャンペーンは、現在は、札幌以外に長野県諏訪市や新潟県上越市、石川県金沢市なども実施中だ。

「来月に新たなキャンペーンがスタートしたときにどの自治体が独自の割引を行っているかはわからないので、旅行先が決まったら自治体のHPを確認したり、観光協会に問い合わせするのがおすすめです。また、私が運営している『旅行クーポンサイト』というHPでは随時情報を更新しています」

岸田文雄首相はこれまでの「県民割」の範囲を全国に拡大する方針を示し、観光庁が詳細を発表した

 もうひとつの裏ワザは「旅先で日帰りプラン」。自治体によっては、フルーツ狩りや食事付きのバスツアーといった補助付きのお得な「日帰りプラン」を用意しているところもある。旅先でそういったプランを活用するのもアリだ。

「これは私もよく利用しています。以前、県民割の日帰りプランを使って家族3人で地元の遊園地を1人実質500円で楽しんだこともありますよ(笑)」

 なかにはすでに旅行の予約を済ませている人もいるだろう。Go Toトラベルなら既存予約はあとからでも割引を受けることができたが、現在実施されている県民割は既存予約については対象外となることが多い。

「もし全国旅行支援も対象外の場合は、割引を受けるには予約の取り直しが必要になります。夏の旅行はもう予約済みという人も多いと思いますが、もし予約の取り直しが必要になったら、事業者と利用者の双方に混乱が生まれそうなので要注意です」

 既存予約の扱い方は現在検討中だという。久しぶりに楽しめる夏の旅行。「県民割の全国版」を上手に使ってお得にエンジョイしたい。