'95年の阪神・淡路大震災の支援活動としてファンに提供を呼びかけた支援物資を被災地へ。'97年には、KinKiKids、TOKIO、V6による被災地復興支援プロジェクト“J-FRIENDS”を結成した

 1962年に設立されたジャニーズ事務所。以降、男性アイドル界の第一線を走り続けてきたわけだが、彼らが残した功績は大きい。その1つが、「日本で一番、寄附とボランティアに熱心な芸能プロダクション」であるということ。断トツである。

阪神・淡路大震災では寄附総額は8億円越え!

 1997年以降、災害に遭った自治体や福祉団体、医療関係者らに対し、実に50億円以上も寄附している。人口1万人規模の自治体の年間予算に匹敵する金額である。

 ジャニーズ事務所が寄附とボランティアに力を入れ始めたのは1995年1月。この月に起きた阪神・淡路大震災がきっかけだった。まずTOKIO、KinKi Kids、光GENJI SUPER5が、支援物資の仕分け作業やJR大阪駅前での街頭募金活動を行った。

 翌1996年末にはV6による震災復興チャリティーイベント『V6 COUNTDOWN '97』が神戸ワールド記念ホール(神戸市)で開催された。衣装約250点のチャリティーオークションが実施され、売り上げはもちろん全額が寄附された。

 さらに翌1997年末には被災地復興支援プロジェクト『J-FRIENDS』がスタート。メンバーに関西出身者がいるTOKIO、V6、KinKi Kidsがユニットを組み、チャリティーコンサートなどを次々と行った。活動は2003年3月まで5年余にわたって行われ、寄附総額は8億3695万1855円に達した。

 なぜ、ジャニーズ事務所が寄附とボランティアに熱心になったかというと、当然ながら総帥だった故・ジャニー喜多川さんの影響。

 ジャニーさんはエンターテイメントを通じ、日本のティーンたちに夢と幸福を与えようと思っていた人。だが、自然災害に襲われた子どもたちを救うためには金品の支援も必要と考えた。

 もともとボランティア精神のある人だった。日系米国人だったジャニーさんは1948年に朝鮮戦争が起こると、日本から韓国に渡り、戦災孤児となった米国人の子どもに語学を教えた。語学が出来ずに辛い思いをする子どもが出ないよう努めた。

 ジャニーさんは個人としても巨額の寄附を行っていている。2019年7月の死去後、赤十字病院の運営や看護師養成事業を行う日本赤十字社に5億円が贈られた。生前の本人の意向によるものだった。

 この寄附で赤十字社は「ジャニー基金」を設立。基金は「明日を担う子どもと家族のため」などに使われている。

ジャニーズ事務所の願い

 ジャニーズ事務所としての寄附とボランティアは『J-FRIENDS』で終わらなかった。2011年3月に東日本大震災が発生すると、翌4月には被災者支援プロジェクト『Marching J』が立ち上げられた。今度はオール・ジャニーズが集結した。

2011年7月、『27時間テレビ』の出張ビストロ企画で福島県二本松市を訪れた草なぎ剛と香取慎吾

 このプロジエクトが1年後の翌2012年3月までに集めた募金は計8億2655万3991円。その全額が被災した子どもたちに寄附された。「少年の才能を見抜き、育てるプロ」だったジャニーさんは、どこまで子どもを第一に考えた。

 2018年7月には会社内に社会貢献活動を行う窓口『ジャニーズ・スマイルアップ・プロジェクト』がつくられた。まだジャニーさんが元気だったころだ。その際、寄附やボランティアを継続して行うことを宣言した。

 このときジャニーズ事務所の説明はこうだった。

「エンターテイメントに触れていただく時間も、困難な状況が訪れた時も、どんな時でも“一人でも多くの皆様が笑顔になれる”時間が提供できる企業でありたいと思っております」

 “キレイごとだ”と切り捨ててしまうのは簡単である。けれど社会貢献のために50億円以上の寄附を行うような組織は一般企業を含めてもほとんど存在しない。ジャニーさんの純粋な思いの表れと見ていいのではないか。

 ジャニーさんの姪で現社長の藤島ジュリー景子さん(55)はインターナショナルスクールから上智大外国語学部比較文化学科(現・国際教養学部)に進み、在学中はスイスに留学した。グローバル感覚のある人として知られる。

 欧米では社会に貢献を考えない企業は敬意を払われない。利益追求しか考えない企業は軽蔑される。ジュリーさんもジャニーさんの遺志を受け継ぐはずだ。

 事実、ジャニーさんの死去後も滝沢秀明副社長(40)らによって寄附とボランティアは続けられている。2019年秋に千葉県内で台風被害が相次ぐと、滝沢副社長はV6の三宅健(42)ら8人と一緒に南房総市と館山市を訪れ、風雨で壊れたビニールハウスを解体するボランティアや炊き出しを行った。

 一方、嵐もこの台風で動いた。千葉県に6000万円を寄附。千葉市出身の相葉雅紀(39)が県庁を訪れ、目録を手渡した。

 8月27日から同28日にかけて放送される日本テレビのチャリティー番組『24時間テレビ45』のメインパーソナリティーもジャニーズ事務所勢・ジャにのちゃねるの4人。二宮和也(39)、中丸雄一(38)、山田涼介(29)、菊池風磨(27)である。

 今年に限らず、2000年ごろから『24時間テレビ』はやたらとジャニーズ事務所勢の出演が目立つ。もちろん偶然ではない。日テレの中興の祖である故・氏家斎一郎元会長と元ジャニーズ事務所副社長の故・メリー喜多川さんが昵懇の間柄だった上、メリーさんが番組の精神に共鳴したから。『24時間テレビ』への全面協力を約束した。

 メリーさんは番組のフィナーレ時には必ず顔を出していた。「女帝」とまで言われていた人なのだから、ほかの番組やイベントではあり得ない。ジャニーさんもメリーさんも社会貢献が好きだったのだ。

 コロナ禍後は全国645カ所の医療機関に防護服などを計8万3000枚、医療用マスクなど計100万枚を届けた。総額3億6000万円になったというから、半端じゃない。

 まだPCR検査が行き届いてなかった2020年には検査キット1000回分を47都道府県に送った。

 今後も寄附とボランティアに最も熱心な芸能プロであり続けるに違いない。なにしろスケールが違うのだ。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立