今年もヤツらの季節がやってきた…蚊にまつわる“7つのトリビア”

 じめじめとした梅雨の季節。今年もまたチラホラと、にっくき「蚊」を見かけるようになった。湿度が高く気温が上昇し始める6月は、蚊が大量発生しやすい時季でもあるのだ。

 毎年のこととはいえ、なんとも頭を悩ませる蚊の対策。

「汗をかくと寄ってくる?」

「刺さない蚊もいる?」などさまざまな噂があるが、はたして真相は。

 戦う前にまず敵を知るべし! 害虫防除の専門家で医学博士の白井良和先生に、蚊の習性にまつわる7つのトリビアを聞いてみた。

トリビア1. 刺す蚊と刺さない蚊がいるってホント?

 20年以上にわたって蚊の研究を続ける白井先生によると、日本には約100種類もの蚊が生息しているそう。実はそのほとんどが花の蜜などを主食とし、人の血を吸うことはない。

「人や動物を刺す蚊のなかでも、国内でよく見られるものはヒトスジシマカとアカイエカ。ただしヒトスジシマカは青森以南にしか生息せず、北海道ではヤマトヤブカが多く見られます」(白井先生・以下同)

 さらにそのなかでも、人と動物の血を吸うものはメスに限られるという。

「メスも、通常はオスと同じように花の蜜などを吸っています。産卵を控えたメスのみ、特別な栄養を必要とするために人の血を吸うのです」

 うっとうしく寄ってくる蚊は、すべて産卵を控えたママさんだった! これからは、叩き潰すのをちょっぴり躊躇してしまいそう……。

トリビア2. 寝室の蚊を退治するベストな方法は?

 もっとも蚊を憎らしく思うのは、就寝前、耳元でプ~ンという羽音を聞いた時ではないだろうか。蚊の退治のために起き上がる面倒と、腹立たしさといったらない。

 さらに、エアコンの効いた閉め切った寝室で殺虫剤を使うのもためらわれる。そんなときに使えるワザとして、ネットを中心に広まっているのがスマホの明かりを利用するもの。蚊は光に集まる習性があり、暗闇でスマホを照らしておけば自然に画面にとまる。そこを一撃!というわけだが……。

「残念ながら、蚊はカブトムシや蛾と違って光に集まる習性がありません」

 なんと、ネットで拡散されている情報はデタラメだった!

「室内で殺虫剤を使いたくない場合は、蚊取りラケットが便利。ラケットの網部分に流れる電流で、蚊を感電死させるしくみです。また、意外と使えるのが虫取り網。手で退治するよりもずっと高確率です。わたしも愛用していますよ」

トリビア3. 家の中の蚊はどくらい生きる?

昼から夕方にかけて吸血するヒトスジシマカ(写真左)と夕方から夜にかけて吸血するアカイエカ(写真右)

 家の中にいた蚊を仕留め損ねてしまい、翌日また同じ蚊に刺されてしまったという経験はないだろうか。屋内に侵入した蚊は、何日くらい生きるのだろう。

「蚊にとっては、えさが豊富にある屋外のほうが暮らしやすいことはたしか。はっきりしたデータはありませんが、屋内に閉じ込められた蚊は、洗面所などで水分を得ながら3日ほど生息すると思われます。生息環境の整った実験室では、約4か月生きる個体もあります」

 そういえば、すっかり秋も深まったころに「まだ蚊がいる!」と驚くことがある。

「ヒトスジシマカは12月ごろまで生息することもあります。卵はそのまま越冬し、春になると羽化して成虫となるのです」

 一方、日本全国に生息するアカイエカは、成虫のまま越冬するという。

「ヒトスジシマカとは反対に、秋に成虫になり、4月ごろまで生きています。寒い冬のあいだはおなかに脂肪分を貯め、川の近くの土管や下水の奥など、暗く湿った場所でじっとしているんです。暖かい春に産卵し、そのあとに死んでしまいます」

トリビア4. 蚊に刺されやすい血液型がある?

 にわかには信じがたいが、血液型の種類によって、刺されやすさが異なるという説もある。

「'70年代に、イギリスの研究者・ウッド氏がハマダラカを使った研究を行いました。その結果、O型がもっとも刺されやすく、B型、AB型、A型と続くことがわかりました。'00年代に私がヒトスジシマカによる研究を行ったところ、まったく同じ結果になったのです」

蚊が好む血液型

 O型がもっとも刺されやすく、A型は刺されにくい。いったいなぜ?

「O型の赤血球がもつH抗原が蚊を誘引し、逆にA型の赤血球がもつA抗原が蚊を忌避するのではと想定されていました。ただしこれに反論する統計もあり、正確なところはわかっていません」

 日本では、人口の約30%がO型とされている。

「個人的な思いですが、リーダーシップがあって活発なO型の性格的特徴が、蚊を呼び寄せるのではないかとも思っています(笑)」

 だとすると、A型でもリーダー気質の人は要注意?

トリビア5. 蚊に刺されやすい服の色はある?

 黒っぽい服に蚊が寄ってくるという説は根強い。そもそも、蚊は色を判別できるのだろうか。

「蚊は黒や紺、濃い赤などに誘引されやすく、白や黄、薄いピンクなど明るい色にはあまり寄ってこないというデータがあります。色の識別もできるとされています」

 なぜ、濃い色の服に引き寄せられるのだろう。

「濃い色は保護色となり、敵に見つかりにくいからという説があります。しかしはっきりとした理由はわかっていないんです。これはもう、蚊に聞いてみるしかないですね」

トリビア6. 蚊を引き寄せるのはどんなニオイ?

 視覚に反応するのであれば、嗅覚はどうか。蚊の好きなにおい、ってあるの?

「'90年代に海外のレポートで、足の裏の臭いに蚊が誘引されることが報告されました。これを受け、わたしが富山医科薬科大学で実験を行ったところ、足の裏特有の臭い物質であるイソ吉草酸に蚊が反応することがわかりました」

 そういわれてみると、半袖短パンで活動しているときには、腕よりも足のほうが刺される確率が高いように感じる。

「足が臭いうえに、汗などの水分は蚊をひきつける要因のひとつ。少し湿っているような状態だとますます蚊を引き寄せます」

 蚊の対策も大事だが、とりあえず臭く湿った足にだけはならないよう、女性として気をつけたい……。

トリビア7. 飲酒?運動?蚊が好む三大要素

蚊は人が出す炭酸ガスや皮膚の匂い、温度を感知して血を吸いにくるという

 太ってよく汗をかく人にも、蚊が好んで寄っていくイメージがある。これってただの偏見?

「体脂肪量が多く、太っている人が刺されやすい傾向にありましたが、これよりずっと重要なのは、前述の汗などの水分、熱と二酸化炭素の2つを加えたもので、蚊が好む三大要素です」

 つまり、運動後などで汗をかき、体温も高く、さらに荒い呼吸で二酸化炭素を多く吐き出している状態が、もっとも蚊を呼び寄せやすいといえる。

「飲酒後に蚊が寄ってきやすいのも、二酸化炭素への反応が原因と考えられます。動悸や脈拍が速くなるせいで呼吸も荒くなり、飲酒をしていない人に比べて二酸化炭素を多く排出している可能性が高いからです」

 蚊の対策はもちろん、熱中症予防の観点からも、夏の運動は屋内で行うのがベストのようだ。

 蚊の被害を少しでも減らすためには、なるべく明るい色の服を着て、足を清潔にし、屋外での運動は控えたほうがよいことがわかった。さらに、有効な対策はこれ以外にもある。

「日中の激しい暑さは蚊にとっても天敵のため、活動が活発になるのは朝や夕方の涼しい時間帯。特に、日陰を好むので注意しましょう。屋外の作業では、高濃度の蚊よけスプレーを2時間ごとに塗り直すとよいでしょう」

 また、蚊の幼虫であるボウフラは水たまりで発生しやすい。庭やベランダのバケツ、植木鉢の受け皿などに水が溜まったままにならないよう、こまめにチェックを。

 梅雨明け前から早めの対策で、本格的な蚊のシーズンに備えよう!

<取材・文/植木淳子>