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 コロナの影響で日本国内のうつ病やうつ状態の人の割合が2倍以上に増えている。1万人のうつ病患者を施術してきた整体師によると噛みしめの悪さがメンタルに大きく影響するという。そこで効果を発揮するのが「あごを整える」。手軽なセルフケア、まずは1週間試してほしい。

あごのゆがみが脳の働きに悪影響を及ぼす

「整体師としてたくさんの方を見てきましたが、うつ病の人は高確率で噛みしめグセや、あごにゆがみがありました」

 そう警鐘を鳴らすのは、湯山卓さん。今まで1万人以上のうつ病の人や、うつ症状のある人に施術を行ってきた。

 近年、うつ病の患者数は増加傾向にあるが、厚生労働省の調査によれば男女比でみると女性のうつ病有病率は男性の約2倍だ。

「特に15年ほど前、パソコンやスマホが当たり前になったころから、うつ病患者さんが増えたと感じていました」(湯山さん、以下同)

 あごのゆがみが心の不調を引き起こすメカニズムはこうだ。あごの関節「顎関節」は頭蓋骨からぶら下がっており、非常に不安定。それに対し、あごを動かす「咬筋」は身体の中でいちばん強い筋肉といわれる。

「噛みしめグセがあると不安定な顎関節に大きな負荷がかかるため、ほかの関節と比べてあごはゆがみやすい」

 このゆがみは頭蓋骨の中にある脳にも影響を及ぼしているという。

「あごの筋肉は頭蓋骨の内側にもあり、ホルモンをコントロールする『脳下垂体』や自律神経の司令塔『視床下部』に密接しています。そのため、あごの状態がよくないと脳下垂体が乱れ、幸せ感をつかさどるホルモン『セロトニン』が減ることでうつに。視床下部の乱れで自律神経の働きが乱れ、不眠や倦怠感などの心身症状が出ると考えられています」

 実は歯科で噛み合わせを改善したところ、うつ状態や自律神経失調症などの症状が軽減したという症例も多く報告されている。

あごがゆがむ原因はスマホとパソコン

 では、なぜあごがゆがむのだろうか。いちばんの原因は一見、無関係のように思われがちな「姿勢」だという。

「特にスマホやパソコンを見ていると、どうしても首が前に出てしまう。この姿勢をとると、無意識に奥歯を食いしばります。首が前に出た悪い姿勢のまま、長時間噛みしめ続けることで、顎関節に過剰な負荷がかかります

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 さらに首へ大きな負担がかかることで、肩こりや首こり、頭痛、むくみ、PMSといった身体の不調も出てくる。

「前かがみで胸が圧迫されているため呼吸が浅く、口呼吸になってしまう。それが自律神経のバランスをますます崩し、顎関節にも悪影響を及ぼす……という、まさに負のスパイラルです」

 うつ症状がなくても不調を抱えているという人は顎関節が原因である可能性も。「あごのゆがみチェック」で確認をしてみよう。

あなたは大丈夫?あごのゆがみチェック

 以下の項目で当てはまるものにチェックを。1つでもあればあごがゆがんでいる可能性あり。

〜顎関節に指を当てて口をゆっくり開けたとき〜
●「パキッ」など音がする
●痛みがある
●あごの上下がゆがむ
●大きく開けることができない

あごのおもな筋肉
 噛むときに使う筋肉はおもに「咬筋」「翼突筋」「側頭筋」の3つ。この中で特に力が強いのが咬筋で、強く噛むと頭蓋骨からぶら下がっている顎関節にダイレクトに負荷がかかる。

あごのおもな筋肉 イラスト/ふるやますみ

1日1回のあご体操で心身の不調が消えていく

 習慣になっている噛みしめや姿勢はなかなか直せない。そこで、湯山さんは自宅でできるセルフケア「あご体操」を考案した。次の2つの体操は、硬くなったあごの筋肉をストレッチさせ、顎関節の動きをスムーズにする。

それぞれ1分間ずつなので、朝起きたときや仕事の合間など、隙間時間にぜひやってみてください。ひとまず1週間、毎日続けたらきっと身体や心に何かしらいい変化が現れるはずです」

 あご体操を実践した女性(32歳)は、「最初は信じていませんでした(笑)。でも、1週間、1か月と続けていくと朝のモヤモヤが消えていって。今は薬を飲まなくても平気になりました」と話す。

 また、湯山さんの整体院に通いながら毎日、あご体操を続けた、うつ病で休職を繰り返していた男性(43歳)は、半年ほどで完全に復職できた。

「もちろん生活習慣の見直しも効果的です。意識的にあごを引くようにしましょう。食事のときは30回以上噛んで。仕事でパソコンを長時間使う人などは、1時間に1回立って、少し歩くといいですよ」

 リモートワークでパソコンを使うなら、立ったまま仕事ができるスタンディングデスクを使うのもよい。

「うつだけでなく、身体の不調も軽くなります。心身ともにグッと楽になるので、だまされたと思ってやってみて」

あご体操1 「舌出し」体操

 ヨガの動作で自律神経のバランスを整えるのに効果的な「クンバカ」をアレンジ。舌の筋肉がしっかり使えるようになると、奥歯の噛みしめが減り、ストレス緩和の効果が。「舌を出すと活力が湧く効果もあるので、朝イチに行うといいですよ」(湯山さん、以下同)

【やり方】
 舌を突き出し3秒で吸って7秒で吐く

 力を抜いて立ち、両手は身体の横に自然に垂らす。上を向いて舌を大きく天井に向かって突き出したら、そのままの姿勢で3秒間かけて鼻から息を吸い、7秒間かけて吐き出す。これを1分間続けて。

「舌出し」体操 イラスト/ふるやますみ

あご体操2 あごゆるめ

 硬くなりがちな咬筋をほぐす体操。「奥歯を噛みしめがちな人は、咬筋が硬くなっている可能性大。咬筋と顎関節に余計な負荷をかけないよう、しなやかにリセットしましょう」

【やり方】
 口を半開きにして“あぐあぐあぐ”


 口を半開きにして、奥歯のくぼみのあたりに親指を軽く当てる。そのままの状態で“あぐあぐあぐ”といった感じで、口を軽く開け閉めする。1分ほど開け閉めを繰り返す。

あごゆるめ イラスト/ふるやますみ

 教えてくれたのは…湯山 卓さん ●AGO global代表取締役。6万人以上施術の整体師。あごから自律神経失調症やうつ病のお悩みを解決する専門家。独自のメソッドスクール生は全国200名を超える。

〈取材・文/遊佐信子〉