『Dr.STONE』1巻の表紙(アマゾンより)

 2022年7月10日(日)19時より、テレビスペシャル『Dr.STONE  龍水』が放送されるアニメ『Dr.STONE』(TOKYO MXほか)。

 原作は週刊少年ジャンプ(集英社)で2017年14号から2022年14号まで連載され、コミック累計発行部数(電子版を含む)が1400万部を超える人気作品だ。

 アニメは2019年7月から12月までTOKYO MXほかにて第1期、第2期は2021年1月から3月まで放送された。現在はdアニメストアやAmazon Prime Videoなどでも配信されており、第3期は2023年に放映が決まっている。

 本作は、これまでのジャンプ作品のように子どもたちが楽しめるエンタメ要素以外に、中学受験を志す受験生の親からも注目を浴びているというーー。

王道の少年漫画に本物の科学知識を盛り込む

『Dr.STONE』は、謎の現象により人類が石化して数千年後。文明が滅んだ地球で、超人的な頭脳を持つ科学少年・石神千空が石化から目覚め、仲間とともに科学の知識をもとに文明を取り戻していくという科学クラフトアドベンチャー。

 本作は、週刊少年ジャンプの代表作『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』のように、【ひとりの少年が過酷な運命や強大な敵との闘いの中、勇気や希望、仲間との友情によってその困難を乗り越えていく】という王道の少年漫画の要素もあるのだが、本作の主人公の最大の武器となるのは科学知識。そして、それはフィクションなどではなく、現実に本当にある科学知識なのだ(一部、作中にだけ通用する科学知識もある)。

 人類が火を手にして以来、どんな風に近代文明を築いていったのか、科学とは一体なんなのか? 石器時代から現代文明まで、科学史200万年を一気に駆け上がっていく様子が描かれている。

 原作の稲垣理一郎先生が出したひとつひとつの案を、科学監修のくられ氏がしっかりと検証している上、作画のBoichi先生も大学で物理学を専攻しているため非常にわかりやすいものになっているのもポイントの一つだ。

「貝がらをすりつぶして炭酸カルシウムをゲット」「滑車を使って、自分の体重より重いものを持ち上げる」「硫黄と木炭と硝酸カリで火薬ができる」など初歩的なものから、「携帯電話」「ダイナマイト」「自動車」まで作り、アニメを楽しく見ながら理解できていく。

「参考書を読むだけの暗記勉強は楽しくない」「似たようなカタカナの物質名なんて覚えられない」と、理科に苦手意識を持ってる子どもにこそ観てみてもらいたい作品と言えるだろう。

受験指導専門家や大手塾の先生も推薦

 中学受験の指導に当たってる西村創氏が運営するYouTubeチャンネル『にしむら先生 受験指導専門家』で、「小中学生向け おもしろくて勉強にもなるおすすめマンガ」を紹介する回では、『Dr.STONE』を1位に推し、こう話している。

「『Dr.STONE』は文明進化の歴史の勉強になるし、科学の勉強にもなるし、いろんな言葉や漢字も出てくるから国語の勉強にもなる。でもそれよりも、学ぶことっておもしろいんだと知ることがいちばんのおすすめポイントだね」

【小中学生向け】おもしろくて勉強にもなるおすすめマンガTOP10(『にしむら先生 受験指導専門家』YouTubeチャンネルより)

「まだ小中学生のうちに、『Dr.STONE』のある時代に生まれてるのはうらやましい!」と熱く語っている。

 また、大手塾・日能研の有名教室長akira先生も『中学受験Walker』のブログのなかで、「理科(物理・化学)を好きになるための作品」として『Dr.STONE』をすすめてる。

 このほか、「東大生が選ぶ勉強になるアニメ第2位」にも選ばれたり、ベネッセの教育情報サイトでも「『Dr.STONE』で子どもたちの世界がどんどん広がる」と紹介されているなど、教育者の観点からも評価が高い作品だ。

 実際に、難関有名中学の入試問題に、『Dr.STONE』を見ていたから解けた! という
設問もある。

 例えば、炭酸カルシウムに関する問題は毎年多くの難関中学の入試問題で取り上げられるが、「石灰石以外で炭酸カルシウムをふくんでるものは?」との問いに、「貝がら(卵のからとチョークも)」を選ばせる問題が、山手学院中(2021)に出題されている。

 同じような問題が、青山学院中等部(2019)や立教池袋中(2015)の入試問題でも出題されているが、主人公の千空が幼馴染みの大樹に貝がらを大量に集めてもらいすりつぶすシーンを思い出せば、答えられそうだ。

 『Dr.STONE』の効果はSNSでも話題になっているようで、受験生や低学年の小学生を持つ親からもこんなコメントが見受けられた。

《追い込み真っただ中の夏頃に、息子は『Dr.STONE』に出会いました。どっぷりハマり、科学すげぇー! 科学楽しいー! とドクスト漬けの日々。ラスト2か月、理科の成績が驚くほどのび、合格につながりました》

《子どもが『酸』って漢字読めるようになったり、ダイナマイトを発明した人の名前や地球の直径覚えてたり良いことづくめなんですよ。全国の小学生のお母さんは買うべき》

《小学生の子どもが『Dr.STONE』にハマってる。何回も読み返して「科学ってスゲー!」って感動してて、最近は周期表まで眺め始めた》

 この夏休み、夏期講習の息抜きに『Dr.STONE』をみせてみてはどうだろうか? ハマりすぎて、勉強時間がなくなるのは本末転倒だが、理科という科目に興味をもつ“秘策”になるかもしれない。

(文/志村結衣)