『底辺の仕事ランキング』で炎上してしまった『就活の教科書』(公式HPより)

 2021年5 月に新卒大学生向けの就活情報サイト『就活の教科書』に公開された記事がネット炎上を起こしている。

『【底辺職とは?】底辺の仕事ランキング一覧』

 次第にSNSで拡散されるなどして、今になって炎上に発展。ワイドショーなどでも取り上げるほどの大きな問題になっている。

 記事には、「一般的に底辺職と呼ばれている仕事は、社会を下から支えている仕事です。そのような方がいるからこそ、今の自分があるのだということには気づきましょう」としたうえで、「土木・建設作業員」「警備スタッフ」「工場作業員」「倉庫作業員」「コンビニ店員」「清掃スタッフ」「トラック運転手」「ゴミ収集スタッフ」「飲食店スタッフ」「介護士」「保育士」「コールセンタースタッフ」がランキング順に挙げられていた。

“底辺職業”の特徴3つとして「・肉体労働である ・誰でもできる仕事である ・同じことの繰り返しであることが多い」を挙げつつ、「・平均年収が低い ・結婚の時に苦労する ・体力を消耗する」といったデメリットも並べている。

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 現在、『就活の教科書』ではこの記事をはじめとした複数の記事を削除している。ウェブメディア『J-CASTニュース』の取材に対して運営社は《今回の記事の作成者に、改めて記事の作成経緯を含め事実関係を確認し、弊社内で、今後の対応について検討中でございます》と回答している。

 しかし、ここで気になるのが記事の監修者であるA氏は同社の代表取締役となっていることだ。そんなA氏について語るのは学生時代の知人。

「和歌山県出身の31歳で、大阪にある理系の大学に進学しています。就職先を1年と経たずに辞めてアフィリエイト広告などで稼いでいましたね。『就活の教科書』が軌道に乗ってからは、“就活系のYouTubeチャンネルを大きくしたい”と言っていましたよ。当時は経営者に憧れる野心家といった印象でした。その分努力も欠かさないヤツだったので、ネット炎上をみているとちょっと辛くなってきますね」

 A氏は2020年にあるメディアで『就活の教科書』の立ち上げから成功までを語ったインタビューに応じている。

「支持率」「情報充実度」「友人におすすめしたい就活情報サイト」でNo.1に輝いたとある(公式HPより)

就活生を動かし、リンクを押させ、シェアをさせる方法

 記事を読むとやはり、《職した会社が合わなくて新卒で入社してから9ヶ月でやめた》との発言が確認できた。転売やYouTubeで稼いでいた時期もあったが、活路を見出したのはネットだったという。Webやブログ方面で稼げないかといった動機から独学でサイト運営を行なっていたとあり、

《たまたま大学生の就活の相談にのっていたんで人脈もあったし、実際に就活で成功した大学生に記事を書いてもらえば、実際に学生目線の情報を発信できるんじゃないかと思ったんです》

 と『就活の教科書』を立ち上げた経緯を語っている。すべての記事がそうとは限らないが、執筆しているのはなんと学生だったようだ──。ほかの競合サイトと比較し、《就活生目線でこれは要る要らないというのをわかった就活生が書くことで、しっかり差別化しようと思った》とある。

 就活メディアでコンテンツづくりをするにあたり、どのような工夫をしているかと問われたA氏は、“読者の潜在ニーズを満たした上で、行動につながるコンテンツを入れる”ことを重要視しているようで、

《よく言うのは痩せない理由を説明した後に、痩せる方法が必要です。それで痩せる方法は載せるんですけど、痩せる方法を並べても読者は誰もやらないしできない。だからみんな読んだだけで勉強になったなぁっていうだけで、みんな動かないし、リンクも押さないし、シェアもしない》(本文ママ)

 と話す。

 確かに『底辺の仕事ランキング』の記事には、『就活に失敗してこのままだと、底辺職にしか就職できないの?」と不安になる方もたくさんいます』と煽(あお)りを入れれられていたり、先のような“デメリット”を語ったうえで、“底辺職を回避する方法”を並べている。抜けだす方法として「就活エージェントを利用する」「逆求人サイトを利用する」などを挙げ、“使うべきサイト”として、サイトのリンクが貼られている。ユーザーが広告をクリックし、会員登録や商品購入をするなどの成果があった場合に報酬が支払われるのがアフィリエイト広告。“底辺職業”呼ばわりされ、収益に貢献させられていたと知ったら──。

 別のインタビューでA氏はこのように語っている。

《「就活の教科書」は、おかげさまで多くのPV数をいただいているものの、「サイトは見たことはあるけれどサイト名は知らない」という方も少なくないんです》

 思わぬかたちでサイト名が認知されてしまった。インタビューでは所属していた大学生のライターが“21世紀を代表するいまをときめく企業”に内定し、感謝されたとも話していた。再び立ち上がることができるか。