斎藤浩一容疑者(病院HPより)

「“寝ていると思った”なんて、医療従事者としてはありえない。確信犯でウソをついているのだと思います」

 そう話すのは、薬物依存に詳しい『みずほ台サンクリニック』の石橋彩里理事長。

 精神的な苦痛を和らげるなどの目的で市販薬を大量に摂取する“オーバードーズ”が若者の間で流行し、社会問題に。去年12月には、滋賀県で女子高校生が死亡するという痛ましい事故も起きた。

 警視庁池袋署は6月25日、去年6月に昏睡状態の添島亜祐美さん(当時38)を放置して中毒死させたとして、保護責任者遺棄の疑いで神奈川県川崎市の医師・斎藤浩一容疑者(48)、無職・水谷聡容疑者(33)、無職・木村玲雄容疑者(24)ほか20代男性の計4人を逮捕した。

一晩で風邪薬40錠飲んだ女性を「寝てるだけ」と放置

「5人はオーバードーズ目的で集まるLINEグループのメンバーでした。添島さんは一晩で風邪薬40錠を酒とともに飲んで昏睡状態に。だが、斎藤容疑者らは彼女を残して先にホテルを出てしまう。その後、夜になってから木村容疑者らが119番通報するも、添島さんは搬送先の病院で亡くなってしまったのです」(大手新聞社会部記者)

 警察の取り調べに対して斎藤容疑者は、

「寝ているだけだと思った」

 と容疑を否認。だが、ほかの2人は容疑を認め、20代男性は体調不良のため同署が任意で調べている状況だ。

 斎藤容疑者は神奈川県厚木市内にある病院へ週イチ勤務する“アルバイト”医師だった。とはいえ、医療関係者によると内科医であれば、1日に10万円ほどの収入があったのではないかという。

 同病院に容疑者について問い合わせるも、

「いまは事実確認中ですので、コメントは控えさせていただきます」

 という回答のみだった。

 容疑者は同病院から電車で30分弱のところにある、家賃月15万円ほどの賃貸マンションで暮らしていた。

斎藤浩一容疑者(病院HPより)

「奥さん、子どもさんと一緒に住んでいらっしゃいましたよ」(マンションの住人)

 容疑者は“穏やかな性格の人だった”というが……。冒頭の石橋理事長によると、オーバードーズの目的の多くは多幸感を得るためだという。

「風邪薬やせき止め薬などの市販薬の中にはカフェインや、麻薬などの効能に近い神経を興奮させる成分が微量に入っていて、大量に服用することでハイな気分になれる。だから、何かモヤモヤすることがあって、現実逃避をしたい人がハマりやすい。酒と一緒に飲むのは、より高い効果を得るためです」

医療関係者でも見分けがつかないのか

 だが限度を超えて摂取すると、肝機能障害や呼吸不全、不整脈などを起こして命を落とす危険性もあるという。被害女性は前述したとおり、昏睡状態にあったが、

「医療関係者であるなら通常の眠りなのか、昏睡状態なのかの見分けがつかないわけがない。全身が痙攣していた可能性もあるんですから。同じ医療従事者として、斎藤容疑者は彼女が危険な状態と知りながら放置した可能性が高いと思っています」(石橋理事長)

 気の弱い容疑者が事件のことを隠したいがためにホテルから逃げたのか……。その誤った判断が救えたかもしれない命を奪ってしまった。

石橋彩里理事長
答えてくれたのは…石橋彩里。日本歯科大学卒業後、同大学附属病院で研修医修了。同大大学院歯科麻酔学講座から東京西徳洲会病院麻酔科に出向。杏林大学医学部麻酔科専攻科で全身麻酔、医科麻酔を学ぶ。2018年、医療法人社団光陽会みずほ台サンクリニックの理事長に就任。 https://sunclinic.or.jp/