好きになった相手の親、兄弟姉妹、親戚に何か問題があったときに、結婚を決断できますか?

 “恋愛と結婚は、違う“とは、よく言われることです。何が違うのか? 恋愛は、当人同士が愛情を感じて付き合うこと。結婚は、恋愛感情を抱いている2人が婚姻届を出すことによって、法律で定められた夫婦になること。同時に、婚姻届を出すことによって、双方の親、兄弟、親戚が紐づくのです。

 ライターをしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにしている婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えて行く連載。好きになった相手の親、兄弟姉妹、親戚に何か問題があったときに、結婚を決断できるか否か。それを一緒に考えていきましょう。

妹さん家族が実家にパラサイト

 えみさん(36歳、仮名)は、結婚相談所主催の婚活パーティでまさたかさん(36歳、仮名)とマッチングしました。まさたかさんは、同い歳で、見た目もえみさんのタイプ。マッチング後に、サイトのプロフィールを確認すると、年収が900万円を越えていました。

 これまでお見合いを申し込んでくるのは、10歳近く年が離れた男性が多く、中には50代、60代からのお申し込みもあり、「36歳だと、こんな年上からしか申し込みが来ないのかしら」と自信を喪失していました。そして、そんな年上男性たちとは、お見合いをする気持ちになれずにいました。

 そこで目先を変えて、パーティに参加したのです。すると、タイプの男性とマッチング。しかも、同い年で、高年収。“これは、なんとしてでも結婚までうまく進めていきたい“と思っていました。

 まさたかさんも、「自分が大学時代に好きだったアイドルに似ている」ということで、えみさんを気に入っている様子でした。

 お見合いは、プロフィールの条件が最初に提示されるので、同い年や年下男性とのカップリングが難しいのですが、パーティは見た目の印象から入ります。明るく、コミ力に自信のある人は、実力が発揮できる場所です。

 順調に交際をしていた2人ですが、あるときえみさんから、「相談があります」と連絡が入ってきました。面談ルームにやってきたえみさんが、こんなことを話してきたのです。

「まさたかさんは、一人暮らしですけど、妹さんは、ご実家でご両親と同居しているそうです。未婚なんですが、2歳になる子どもがいます。その子の父親は、妹さんより20歳くらい年上で、自称自営業のようなんですが、どんな仕事をしているか、まさたかさんもご存じないようです」

 そこで、私は言いました。

「妹さんとまさたかさんは、違う人格なんだし、えみさんとまさたかさんの結婚には、関係ないんじゃない?」

 私の言葉に、えみさは、顔を曇らせて続けました。

「その男性も、まさたかさんのご実家で暮らしている、居候状態。しかも、子どもの認知もしていない。家賃も払わず、食費や雑費は、まさたかさんのお父様が負担しているそうです。

 いっとき実家に同居して親に依存するパラサイトシングルが話題になりましたが、妹さんは子どもとパートナーの男性とパラサイトしているんです。親は先立つものですし、もしもご両親がいなくなったら、今度は、まさたかさんのお金をあてにしてくるんじゃないかと思うんですよ」

 えみさんが心配する気持ちは、わかります。そして、こう続けました。

「なんだかトントン拍子に進んできたのに、結婚が見えてきたら、とんでもない障害が出てきました」

 それからいろいろと悩んだようですが、まさたかさんの言葉で、えみさんは結婚を決めました。

「僕は、一生真面目に働くし、親のお金も財産もあてにしていないよ。妹家族が親の貯金や年金を食い潰しても、僕は関知しない。実家のことでえみちゃんにお金の苦労をかけるようなことはしない。それは、僕が阻止をするよ」

 未来に何が起こるかはわからないけれど、2人がしっかりしていれば、乗り越えられる。えみさんは、そう思ったようです。

ニートの兄がいるから、結婚に二の足を踏んでしまう

 さなえさん(41歳、仮名)が入会面談にやってきました。上場企業で働くさなえさんは、現在1人暮らし。700万円近い年収があり、自立した女性でした。

 面談ルームで、彼女は言いました。

「30代半ばから4年ほどお付き合いしていた同い年の男性がいました。結婚の話も何度か出たのですが、どうしても一歩が踏み出せなくて。相手は、結婚して子どもを授かり、家庭が築きたかったようで、振られてしまいました。ただ、私もこの先一人で生きていくのは寂しいし、パートナーを探したいなという気持ちに最近なってきたんです」

 なぜ、さなえさんが結婚に踏み出せないでいたのか。それは、6つ上のお兄さんのことが引っ掛かっていました。

「兄は、私とは違って小さなころから勉強ができる優等生で、親の自慢の息子でした。大学を卒業後は、大企業に就職したのですが、27歳のとき、会社の人間関係がうまくいかなくて、会社に行けなくなったんです。病院でうつ病だと診断されました。

 ずっと順風満帆に生きてきた人だったので、それが生まれて初めての挫折だったのだと思います。しばらく休職していたんですが、結局はその会社を辞めて、以来、再就職しては退職を繰り返して、40を過ぎたころから、引きこもりになってしまったんです」

 お兄様は現在、年老いた親の年金で、実家暮らしているそうです。

「私が、前の恋人との結婚に踏み切れなかったのも、ニートの兄がいたからです。兄のことを聞かれても話を濁していたのですが、結婚となったら正直に話さないといけない。40代後半になって、全く働いていない兄が、今後社会復帰できるとは思えないんですね。親が生きているうちは、親のお金で生活できるでしょうけど、いなくなったらどうするのかなって。私は、面倒を見たくないけれど、兄妹だと、全く知らん顔もできない。こんな兄がいるのに、私は結婚できるのでしょうか?」

 私は、さなえさんに言いました。

「さなえさんは、年収もしっかりあって自立しているし、お兄様とは別人格。未来をマイナス方向に考えなくてもいいのでは? 親がいなくなってから、お兄様の面倒は誰が見るのか。知らん顔はできないという気持ちもわかるのですが、それはそのときになって考えたらいいと思いますよ」

 未来をプラスに考えるかマイナスに考えるかは、自分次第。ただマイナスに考えていたら、今、前向きな行動が起こせず、幸せを逃してしまうのではないでしょうか。

ウチの家族は完璧なんです!それなのに

 さなえさんとは、逆のケースがありました。

 あいさん(31歳、仮名)は、まきおさん(33歳、仮名)と真剣交際に入っていたのですが、「交際終了でお願いします」と連絡を入れてきました。

 面談にやってきたあいさんは、いきりたった様子で言いました。

「まきおさんに、引きこもりの弟さんがいることがわかったんです。ずっと隠していて、今ごろになって、それを言うなんて、あと出しジャンケンですよ。もう、騙されたような気持ちです」

 そこで、私は言いました。

「弟さんが引きこもりだったとしても、その弟さんと結婚する訳ではないでしょう? まきおさんは、上場企業で働いていて、しっかりとした収入があるのだから、それでいいのではないですか?」

 すると、あいさんが言いました。

「私は3人姉妹ですが、3人とも自立してしっかりと働いていますし、家族や社会に迷惑をかけずに生きています。いい歳して、働きもせず、親のお金で暮らしているのって、恥ずかしくないのでしょうか? そんな兄弟のいる男性を、親や姉たちに紹介はできませんよ」

 現代は、ストレスを抱えやすい時代です。引きこもりになってしまったり、体調を崩してうつ病になってしまったりすることもあるでしょう。そうした人たちを非難するのではなく、優しく見守ったり手を差し伸べてあげたりする優しさや心の余裕が、大切ではないでしょうか? ましてやそれが肉親だったり、結婚しようとしている愛する人の家族なら、なおさらだと思うのです。
 
 親兄弟姉妹、親戚を見渡せば、全てが完璧ではなく、何かしらの問題を抱えている人がいるでしょう。今は家族や社会に迷惑をかけていなかったとしても、未来に何が起こるかは、わかりません。

 教会での結婚式で、「病めるときも 健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、妻(夫)として愛し敬 慈しむことを誓いますか?」というの誓いの言葉があります。これはパートナーにだけでななく、家族にもそんな気持ちを持てる人でいてほしいなと思います。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル