安倍元首相を銃撃し取り押さえられる山上容疑者(共同通信イメージズ)

「仕事の合間に事件のニュースを見て、聞いたことのある名前やと思った」

 そう話すのは、容疑者の高校時代の同級生だ。

 7月8日、日本中を震撼させる事件が起きてしまった。奈良市の近鉄大和西大寺駅前で安倍元首相が自民党候補の応援演説中、手製のハンドガンで撃たれたのだ。現行犯で逮捕されたのは、奈良市内に住む元海上自衛隊員の無職・山上徹也容疑者(41)。安倍元首相は救急車とドクターヘリを乗り継いで奈良県立医科大付属病院に搬送されるも、同日午後5時すぎに死亡が確認された。銃弾は心臓にまで到達していたという。

 事件現場にいた目撃者によると、山上容疑者は終始、冷静に犯行に及んでいたとのこと。このような凄惨かつセンセーショナルな事件を起こした容疑者の素顔とは……。

応援団に所属するも存在感は薄かった

 冒頭の同級生によると、

「山上くんは高校時代、応援団に所属していたと思います。私たちの世代は野球部が強く、甲子園に2回も行けましたから。3年生の時、春の選抜高校野球大会ではベスト8まで勝ち進み、準々決勝で横浜高校の松阪大輔さんに完封負けしましたね」

 全校応援のスタンドをけん引した応援団だったが、山上容疑者の様子は全く覚えていないという。別の同級生もこう話す。

「寡黙でどこか闇を抱えているようなタイプでした。みんなで和気あいあいとしているときも交じろうとせず、ひとりで黙々と何かをやっていましたね。成績はそこそこで、運動神経はいいほうだったと思います。印象が薄いので、これといったエピソードは特に思い出せないんです」

安倍元首相に発砲された瞬間、警護と思しき者は驚いて後ろを振り返り…(読者提供)

 通っていた高校は県内トップレベルの進学校。卒業した3年後、海自の任期付き自衛官になり、約3年で退官している。その後は大阪府の人材派遣会社に籍を置き、事件直前は京都府内の工場で荷物運搬の仕事をしていた。

「フォークリフトの免許を持っていて、敬語もきちんと使えるから採用しました」(工場の責任者)

“お前がやれ!”徐々に勤務態度が悪くなり…

 容疑者は同工場に20年2月から働き出したのだが、

「徐々に仕事が雑になってきた。注意すると“お前がやれ!”などと言ったり、無断欠勤も多くなっていった。今年の4月下旬に出社したのが最後です」

 8階建て賃貸マンションの最上階に住んでいた山上容疑者。19平方メートルのワンルームで、場所は銃撃現場から約4キロメートルと近い。事件直前の7月5日、同マンションの住民が容疑者とエレベーターですれ違っていた。容疑者の態度に違和感があり、覚えていたという。

「私は3年このマンションに住んでいますが、初めて会いました。彼がエレベーターから降りてきて、その時に挨拶をしたんですが、むこうの挨拶はなかった」

 その時の容疑者の服装は、黒いズボンに白の半袖シャツ。マスクはしておらず、メガネもかけていなかった。

「目線は常に斜め下で、相手のことを意に介さないというか、自分を無にしているというか……。すごく悩んでいるようにも見えました」(同・住民)

 警察の取り調べに対して山上容疑者は、

「殺そうと思って狙った。特定の宗教団体に恨みがあり、安倍元首相がつながりがあると思って犯行におよんだ」 

 と供述している。さらに

「事件前日に安倍元首相は岡山で応援演説を行っていたが、容疑者はそこにも現れていた」(捜査関係者)

 犯行を狙っていた容疑者に、その機会を与えてしまった。