『六本木クラス』撮影中の竹内涼真(2022年5月)

「7月7日に、竹内涼真さん主演のテレビ朝日系『六本木クラス』の第1話が放送され、関東の世帯平均視聴率は9・6%でした。Netflixの韓国ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』のリメイク版で、国内最大の外食企業の御曹司とのトラブルをきっかけに服役することになった主人公が、出所後に六本木という街で成功していく様子と、大手外食企業の会長への復讐を描いた物語です。

『梨泰院』が大ヒットしていたこともあり、放送前はクオリティーを不安がる声が続出していましたが、初回放送後は“思ったよりよかった”“意外と悪くなかった”といった声も多くありました」(テレビ誌ライター)

(※ここから先は一部ネタバレを含みますので、これから初めてご覧になる予定のある方はご注意ください)

学校での“体罰”シーンが全カット

 日本の視聴者が見やすいように“日本風”のアレンジも多々見受けられた。

「大手外食企業の看板メニューが、『梨泰院』ではチゲでしたが、『六本木』では唐揚げになっていました。また、“日本風”なのかはよくわかりませんが、いじめられっ子がいじめっ子の指示を間違えて買ってくる飲み物が、なぜか牛乳からトマトジュースに変わっていたのも印象的でした」(同・テレビ誌ライター)

 アレンジはこれだけではなく……。

「『梨泰院』よりもコンプライアンス遵守の意識が強すぎるように感じられるシーンがあったんです」(ドラマウォッチャー、以下同)

『六本木』から丸々なくなっていたのが、学校でのこんなシーンだ。

「『梨泰院』では、主人公が転校前の学校で水の入ったバケツを持たされる罰を受けるシーンや、同じクラスの大手外食企業の御曹司を主人公が殴った後に先生からお尻を叩かれるシーンがあったのですが、『六本木』には体罰のような描写はまったくなく、先生はただ怯えているだけでした」

制服を着た竹内涼真と新木優子。スタイルの良さが際立つ(『六本木クラス』公式インスタグラムより)

タバコの代わりにポテチ

 さらに、思わず笑ってしまうような“日本風”演出が。

「暴力で高校を退学になった主人公とその父親がお酒を酌み交わすシーンは、『梨泰院』ではお店で父親がマナーを教えながら飲んでいましたが、『六本木』では、自宅でお酒を飲むフリだけで、父親は主人公の飲酒を制止していました。さらに、父親の交通事故の真犯人が大手外食企業の御曹司だと知った主人公が復讐を試みる場面では、『梨泰院』だと御曹司が病院の中庭でタバコを吸っているのですが、『六本木』では大雨のなか外でポテトチップスを食べていて……(苦笑)」

 大雨の中のポテチにはSNS上でもツッコミが多くあったが、日本で体罰や未成年の飲酒・喫煙を描けないのは、コンプライアンス意識の向上の結果なのだろうか。

 メディア研究家の衣(きぬ)輪(わ)晋一さんは、日韓のコンプラ事情を次のように分析する。

「日本では、90年代に過激な描写の作品が流行していました。韓国の作品は基本的に、昔の日本ドラマを参考にして作られていて、日本の“90年代的なノリ”がちょうど今の韓国にあるのではないでしょうか。そういう意味では、日本のコンプライアンス意識が“進んでいる”と言えばそうなるのですが、『六本木クラス』で過激な描写がなくなってしまうと、『梨泰院クラス』がもともと持っていた魅力が弱まってしまう可能性があるので、あまり優等生でいすぎないほうがよいのではないでしょうか」(衣輪さん、以下同)

野島作品は再放送すらできず

 過剰なコンプラ意識が、エンタメの衰退を呼ぶ可能性もあるようだ。

平手友梨奈ら出演者の誕生日を祝う竹内涼真たち。チームワーク抜群だ(『六本木クラス』公式インスタグラムより)

「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)が重視されるアメリカでは、同性愛やルッキズム、フェミニズムなどの表現が日本よりやりづらくなっている現状があります。こういった点から、アメコミ作品が売れなくなり、より“おもしろさ”を追求した日本のマンガやアニメが人気を集めるようになっています。この状況は、韓流のドラマが日本で流行って、日本のドラマがどれも同じで刺激がなくてつまらないと言っている現状と、非常によく似ていると思います」

 実際、過去のヒット作も封印されつつあって……。

「例えば、90年代の野島伸司さんの作品『高校教師』や『未成年』などは、すごく刺激的でヒットしましたが、現代のコンプライアンスでは地上波での再放送は難しいんですね。もちろん、視聴者を不快にさせるのはよくありませんが、これだけ韓流のドラマが大きなクレームなく流行しているのを見ると、おもしろければ許される部分もあるのではないでしょうか。コンプライアンスでクレームばかりを言うのではなく、日本のエンタメを盛り上げる方向で、“おもしろいものならいい”と思ってほしいですね」

『六本木クラス』がこの状況を打破してほしい!