日本ツアー参加にビデオメッセージを寄せるパリSG・メッシ選手(2022年5月)

 7月18日、東京・秩父宮ラグビー場で公開練習を行った、来日中のサッカー・フランスリーグの強豪『パリ・サンジェルマン(以下、パリSG)』。Jリーグチームとの親善試合を控えての練習だったが、あわやのハプニングが起きていたようだ。

「パリSGといえば、リオネル・メッシやネイマール、キリアン・エムバペやセルヒオ・ラモスらが顔を揃える、選手の年俸総額500億円とも言われるスター集団です。今回の日本ツアーはいわば“営業”で、練習ながらも入場料は大人4500円、小中高生は2000円と有料。それでも彼らを一目みたい、サッカーファンやサポーターが押し寄せたのです」(スポーツ紙・サッカー担当記者)

 ただの練習にも関わらず、いや、スター軍団の練習風景はファンにとっては“ただの”ではなかった。会場に来場した観客は1万3370人と、およそ70分間で数千万円の大金が動く大イベントとなったのだ。

 目の前で躍動するメッシやネイマールたちに、場内のボルテージは終始上がりっぱなし。そして全体練習を終えた選手たちが、ロッカーに引き上げようとするとーー、

「あろうことか、東スタンド(バックスタンド)側にいた一部のサポーターたちが、観客席を乗り越えてピッチ内に乱入。観客席を見張っていた警備員の横をすり抜けて、選手たちに向かって突撃する事態が起きてしまったのです。

 すんでのところで、選手団の周囲にいた警備員やスタッフに取り押さえられ、乱入者の接触こそ防がれたわけですが、あわや“惨事”が起きてもおかしくはない状況でした」(前出・サッカー担当記者)

 この騒動で数人が“御用”となったわけだが、中には追っ手を掻い潜って観客席に逃れた者もいたようだ。この出来事に、和やかなだった場内の雰囲気は一変し、選手らの退場が足速に促されたようだ。

選手のビブスを持ち帰ってくる姿

 ネット上には、現地に居合わせたファンが撮ったと思われる、バックスタンド側からの一部始終を収めた動画もツイッターに投稿され、瞬く間に拡散されて“バズっている”。

 映っていたのは、棒立ちの警備員を嘲笑うかのように、場内に降りて走り出す若者と、中には子どもと思しき数名。するとピッチから何やら拾い上げて走って戻ってきたファンと、彼を追うも全く追いつけない警備員の姿も。誇らしげに持ち帰ったのは、選手が練習で使用したオレンジ色のビブスのようにも見える。

 また、目的を達成できなかったのだろう。選手と記念撮影をしようと思ったのか、スマホを片手にトボトボと歩いて戻ってくる子どもに、席に戻るように促す警備員。さらに動画内には、保護者だろうか、「あの子頑張ってるよ」「来た来た来た!」と子どもを煽るような、周囲の大人たちの笑い声も収められていた。

「乱入者の大方の目的は、スター選手の“写真を撮りたい、サインが欲しい、使用グッズが欲しい”といったおねだり行為でしょうが、それでも選手と無理矢理に接触すれば怪我を負わせる可能性もあり、それこそファンやサポーターを装った暴漢が紛れこむ可能性も考えらるわけで。

 もちろん、責められるべきは非常識な行動をとった乱入者ですが、1万人以上を相手に酷は話かもしれませんが、あまりにも簡単にピッチへの侵入を許した警備体制にも課題が残ると言わざるを得ない。入場時の手荷物検査も特段厳しかった、というわけでもなさそうでしたからね」(前出・サッカー担当記者)

 動画投稿者は後に《犯罪者が紛れこんでもしもの事があったらJリーグが責任取るんかな。後から事件になってからじゃ遅いよ。》と、あらためて“事件化”した可能性にも触れて危惧。たまたま負傷者が出なかっただけ、と言える節があるのも確かだ。

事件起きれば“訪日控え”が起きる

 サッカーとは状況が異なれども、7月8日に奈良県で参院選応援演説中だった安倍晋三元首相が銃撃される事件が起き、岸田文雄首相も「警備体制に問題あった」と言及したばかり。警備をすり抜けて、簡単に“犯人”の侵入を許した面では同様とも言えよう。

 全国紙政治部記者は、事件が続けば「訪日控えが起きる」可能性も示す。

「元首相という“要人”を易々と襲撃させたことに、海外のニュースでも”手薄すぎる”などと警備体制の甘さを指摘する声も見受けられました。今後、万が一にも海外VIPを危険に晒すような事態が起きれば、日本の安全神話が崩れるとともに、スポーツ選手も含めて来日を控える場合も出てくるかもしれません。

 警察だけでなく、民間の警備会社にもあらためて要人擁護への認識や、警備体制のあり方が再認識されていると聞きます。事件を事前に含める意味でも、今1度、サッカー協会さんも“要人”を招いていることを自覚した方がいいでしょう」

 パリSGの日本ツアーを主催する公益財団法人日本サッカー協会(JFA)に、警備体制についての見解を聞くと、

《JFAでは運営をしておらず、今回お尋ねいただいた件についても報道を通して把握しているまでですので、コメントは差し控えます。》との答えが。

 海外チームを招く日本代表戦や、全国各地のJリーグの試合でも通じる案件ではあると思うが。

※7月19日17時現在、『Paris Saint-Germain JAPAN TOUR 2022』運営会社に見解を取材中。回答があり次第、追記いたします。

 
2022年7月18日のパリSGの公開練習後、ビブスのようなものを警備員を振り切って持ち帰ったファン(ツイッターより)

 

 

2022年7月18日、パリSGの公開練習後にピッチに降りるも、警備員に帰らされるファン。中には子どもらしき姿も(ツイッターより)

 

 

2022年7月18日、パリSGの公開練習後にピッチに乱入する若者たち。警備員の横をすり抜けて(ツイッターより)

 

 

エムボマ氏らがPSG日本ツアーをPR(2022年5月)