小池百合子都知事

 2019年に発生し、世界規模で感染拡大を起こした新型コロナウイルス。ワクチン接種が進んだ今、再び国内での新規感染者が増え始めており、人類と新型コロナとの闘いは当分続くことが予想されている。そして、この未曽有のパンデミックは、私たちの暮らしにまざまな変化をもたらした。

 このコロナ禍の間に日本の首相は3人目となり、世界ではロシアによるウクライナ侵攻が始まるなど、激動の様相を呈してきた。そんななか、新型コロナウイルスが日本に残した課題とはーー。

繰り返される医療逼迫

 7月21日時点で国内での累計感染者数は1081万人を超え、死亡者数も3万人を超えた。これまでのパンデミックの経験を受け、日本の医療体制は本来もっと強化されてしかるべきだったが……。あんどう内科クリニック院長の安藤大樹さんはこう語る。

「新型コロナが蔓延してもう3年になろうとしていますが、この間にコロナの診療を続けられなくなっている病院も出てきています。診療自体が大変というより、行政とのやりとりや、保健所への報告やデータ入力などの煩雑な事務作業のほか、医療人員確保の問題が大きな負担となっています。

 また、検査点数の引き下げがあったり、補助金なども当初に比べてかなり絞られてきており、赤字経営になってまで続けられないという病院も多いです」

 行政によるコロナ対策を振り返ってみても、行動規制とワクチン接種の呼びかけばかりで、コロナ禍当初から基本的に何も進んでいない。その結果、感染拡大のたびに医療逼迫を繰り返している。

「CDC(米国疾病予防管理センター)の日本版のようなイメージで、平時、有事を問わず感染症対策を統括できる機関をつくるべきだという意見はコロナ禍当初からありましたが、結局2年半以上がたってもその概要すら固まっていません。本来ならコロナ禍の経験を踏まえて、より強固な医療体制づくりを迅速に進めるべきですが、この機会をいい意味での“爪痕”にできなかったのは、現場の医師としても残念です」(安藤さん)

 国のコロナ対策を振り返ると、やはり一般市民にとって印象深いのが『アベノマスク』だろう。その効果について経済アナリストの森永康平さんは次のように振り返る。

「全世帯への布マスクの配布というのは、良くも悪くも目立つ政策だったなと思います。ただ、コロナ対策について手探りの状況下での政策について、今になって『あれは無駄遣いだった』とか『もっといい方法があったはず』と批判するのはあまりフェアじゃない気もします。アベノマスクを通してわれわれが学ぶべき点があるとすれば、“なんでも外国で生産・輸入をすればいい”という方向性を見直すことではないでしょうか」

 コロナ禍当初、国内のマスク生産が追いつかず、深刻なマスク不足の状況にあった。

「マスク以外にもさまざまな品目において、日本は輸入に頼りきっています。世界で何かしらの危機が起こって供給が止まることがあれば、日本はすぐに立ち行かなくなってしまう。マスクに限らず食糧などもそうですが、やはりある一定量は国内生産ができる体制をつくるべきで、国内生産に対して国が補助金をつけてでも、そういった備えを構築しなければならないという課題が見えてきたのではないでしょうか」(森永さん)

 マスクの生産は安定した一方、逆にマスクを手放せない日常も定着してしまった。

「猛暑の日々が続きますが、熱中症が心配されるなかでも精神的にどうしてもマスクを外せないという子どもが増えています。また、マスクを着用した状況で育ってきた子どもたちに、相手の表情を読み取る力がきちんと養われるのかという点も心配です。

 大人にとっても、この先コロナが落ち着いたときに“そろそろマスクを外そう”という判断ができるかというと、なかなか難しい。“マスク依存”ともいえる状況においては、酸欠や集中力の低下のほか、さまざまな健康上のデメリットがあるということももっと周知されるべきですね」(安藤さん)

お話を聞いたのは……

あんどう内科クリニック
安藤大樹さん

 あんどう内科クリニック(岐阜県岐阜市)院長。「医療よろず相談所」を掲げ、医療のさまざまな問題に対応するプライマリ・ケア医。

経済アナリスト
森永康平さん

 証券会社、資産運用会社を経て、2018年に金融教育ベンチャー「マネネ」を設立。『スタグフレーションの時代』(宝島社)など著書多数。

取材・文/吉信 武