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 コロナ感染拡大を受けて、厚生労働省が「新しい生活様式」を提言したのは2020年5月。そこから丸2年以上が経過したが、長引くコロナ禍が収束を迎える気配はいまだ見えない。コロナが私たちの心に与えた深刻な影響とはーー。また、それらに対する改善方法を、専門家に聞いた。

人の心にのしかかる見えない後遺症

 コロナが蔓延する社会の不安感や閉塞感は、私たちの心にも大きな影を落とした。「コロナうつ」という言葉も生まれ、このコロナ禍には日本国内でのうつ病や抑うつ状態の人の割合が2倍以上に増加したことが、経済協力開発機構の国際調査で明らかに。

「抑うつ状態で来院される方が増えたことは、当院においても肌感覚で感じます。ただ、その不安の要因は少しずつ変わってきているようです。コロナ禍当初は、ネットやテレビのネガティブな情報で不安になったり、在宅勤務でコミュニケーションが減ったりして、直接的な原因からの不安障害と呼ばれるような症状の方が多かったように思います。

 一方、最近は社会の閉塞感や“いつまでこの状況が続くんだろう”といった疲労感で、意欲の低下や漠然とした抑うつ状態を訴える人が増えてきています」(あんどう内科クリニック院長・安藤大樹さん)

 また、抑うつ状態とまではいかずとも、うまく寝つけないといった睡眠にまつわる悩みは増加。睡眠サポートサプリメントや「睡眠の質向上」を謳う乳酸菌飲料などの市場は年々拡大している。

「コロナ禍で外出が減って太陽を浴びる時間が少なくなっていたり、リモートワークで運動不足になっていたりと、さまざまな要因が複合的に重なってうまく睡眠のリズムをつくれなくなっている人が増加しています。

 その結果、うつや不安障害につながることや、血圧が上がり脈も速くなることで、動脈硬化のリスクが増えてしまうことも。ストレスがかかる状態で起こりやすいぜんそくやめまいなどの症状を訴える人が増えるという影響もあります」(安藤さん)

 こういった心の状態を少しでも改善するにはどうしたらよいのだろうか。安藤さんのクリニックでは『STRESS Go!Go!』という標語を掲げている。

「コロナ禍は平時と比べて緊張感が高い状態だということをまず認識してほしいです。その状況下で、心の緊張をほぐすために有効な行動について、各頭文字をとって紹介しています。運動(SPORTS)から笑顔(SMILE)まで、ちょっとしたことばかりではありますが、緊張を和らげる行動を意識して行うことは、個人でもできる基本の予防対策としては効果的だと考えています」(安藤さん)

 心に不調を覚えたときは、ぜひ参考にしてほしい。

お話を聞いたのは……
あんどう内科クリニック
安藤大樹さん

あんどう内科クリニック(岐阜県岐阜市)院長。「医療よろず相談所」を掲げ、医療のさまざまな問題に対応するプライマリ・ケア医。

取材・文/吉信 武