LiSAら人気アーティストも参加する『THEFIRSTTAKE』(公式HPより)

 YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』(以下、『TFT』)での動画公開から約2か月、1800万回以上も人々のココロをオドらせているのは、HIPHOPグループ・nobodyknows+だ。

「6月10日に公開された『ココロオドル』は、今でもその再生回数を伸ばし続けています。この楽曲がリリースされたのは2004年で、紅白歌合戦にも出演しました。現在は4MC1DJで活動していますが、かつては5MC1DJ体制。今回の動画には元メンバーのg-tonさんも登場し、リリース当時のメンバーでの歌唱となったことも、多くのファンが歓喜した理由のひとつです」(音楽ライター)

『TFT』といえば“一発撮り”の音楽コンテンツだ。現在、チャンネル登録者数は650万人を超えている。

 nobodyknows+も一発撮りならではのミスがありながらも、それすら楽しんでいる様子があったが、そもそも“一発撮り”になったのはなぜなのか。『TFT』の運営担当者がその経緯を明かす。

「チャンネルを立ち上げたのは、実はコロナ禍の少し前の2019年11月でした。音楽の聴かれ方がダウンロードからストリーミングに変化していく流れで、それをきっかけにヒットする新人アーティストが出てくるようになったので、そういう場を作りたいという思いがありました。そのときに考えていたのは、“YouTubeで音楽番組をやるとしたらどんなものがウケるんだろう”ということでした」(『TFT』運営担当者、以下同)

アーティストが本気で勝負をする場所

 そして、3つのこだわりが生まれた。

「1つ目は、普段見られないようなアーティストの一面を見せたいということ。2つ目は、リアリティ。3つ目は解像度の高さです。この3つをもとに、アーティストが本気で勝負しに来る場所を考えました。その結果、生々しく本気で歌うリアリティという点や、ミュージックビデオとの差別化として、演出されていないドキュメント感という点から、一発撮りになりました。それをより際立たせるために、白ホリを用意してクリアに見せるようにしています」

 その結果、『TFT』をきっかけにヒットする曲も生まれていった。

 では、なぜ令和に18年前のヒット曲『ココロオドル』が選ばれたのか。

「最近は、シーズンに合わせたキャスティングも意識していて、冬なら中島美嘉さん『雪の華』だったり、夏に向けて盛り上がる曲を出すということを行っていました。様々なデータを見ていると、毎年、夏のプレイリストが盛り上がるという傾向があり、その中でもスキップレートが低く、毎年着実に聞かれている曲を選定していた中で、nobodyknows+の名前が挙がったことが理由の1つです。なので、想像以上の反響ではありましたが、狙い通りの結果でもありました」

 さらに、音楽ジャンルも大きなポイントだったという。

「YouTubeは全体的にHIPHOPが伸びやすい傾向がありました。最近の『TFT』の中でも、梅田サイファー、Creepy NutsなどのHIPHOPアーティストが伸びる傾向があり、そういった関連動画の数字がとれるんじゃないかということが感覚としてありました」

親子で話題になるタイトルが人気

 ジャンル以外に“バズる曲”の傾向は?

お父さんも知っていて、お子さんも知っているような、家族のなかで話題になりやすいタイトルは全体的に数字が上がる傾向にあると思います。例えば、2020年に公開されたDefTech『My Way』は、2005年にリリースされた曲ですが、公開の少し前にTikTokでバズがありました。この曲は30~40歳くらいがちょうど世代なので、10代の学生などが知っていることにご家族は驚くと思いますが、そういう幅広い認知を持つヒット曲を出したときは話題になりやすいですね」

 また、“個”の力も大きい。

「例えば、DISH//の『猫』は、当初はサブスクなどのストリーミングの再生回数が2万5千回くらいだったんです。当時DISH//の担当者が、“あいみょん作詞作曲のすごくいい曲がある”という話をしていました。しかも、ストリーミングが伸び始めていることをデイリーで見て、これをやったら必ず届くと思っている人がいたからこそ、『TFT』では1億回以上の再生回数となりました。1人でもいいから、チームの中の“誰かに刺さっている曲”というのはヒットする曲の傾向としてあると思います。5月に公開されて1200万回以上再生されているCHEHONの『韻波句徒』もそうでした」

 そんな『TFT』も今年の11月で立ち上げから3年目となる。今後はどんなアーティストが登場する可能性があるか。

「nobodyknows+に続くような“あのとき盛り上がっていたHIPHOPや誰もが知っている名曲”を歌っている方だったり、“この人出たらすごいよね”と言われるようなキャリアのある方は、見たい人がたくさんいると思うので、いつか出ていただけたら嬉しいですね。まだ出ていただいていないアーティストの皆さんに出てもらえるように、今後どう頑張っていこうか考えています」

 国内アーティストだけではなく……。

「『TFT』は3割くらいが海外視聴なのですが、相乗効果で海外に認知を広めてくれるような、グローバルなアーティストはご出演いただきたいですね。『THE FIRST TAKE INTERNATIONAL』というプレイリストを、ハリー・スタイルズを皮切りに立ち上げました。今後は海外のアーティストにも数組出演していただく予定です」

日本のYouTubeトップ10入り

 この先の展開がますます楽しみだが、人気YouTubeチャンネルとしてどのように進化していくのだろうか。

「YouTubeはコンテンツの消費や入れ替わりが激しいと思うのですが、3年目を目前に日本のYouTubeトップ10に入ったのはすごく大きい出来事でした。でも、オムニバスのチャンネルでのことなので、アーティストのファンの集合体で650万人いるのだと思います。“チャンネル自体のファンってどのくらいいるんだろう”と思うことがあります。YouTubeを見る人たちの中で信用、信頼を得て“音楽といえば『TFT』”“『TFT』にある音楽ってすごくいいよね”と思われるようになっていきたいです」

 そこにある良質な音楽をきっかけに作っていきたいのは“繋がり”だ。

「グローバルでも存在感を出したいです。港のような役割を担って、J-POPを世界に、海外の楽曲を日本にという輸入、輸出ができるようにしていきたいです。

 また、個人的には、家族の共通の話題になっていたいと思っています。『TFT』の話をしたときに、お父さんもお子さんもおじいちゃんも、みんなが知っていてくれたら幸せだなと思います。僕らが伝えたい曲を出している前提ではありますが、それが広まっていってくれたら嬉しいです」

 
ジャニーズアイドルのSixTONESも『THEFIRSTTAKE』に参加(公式チャンネルより)

 

『THEFIRSTTAKE』YouTubeでも活躍するnobodyknows+。人気アーティストらが動画を投稿(公式チャンネルより)
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BiSHのアイナ・ジ・エンドも参加(公式ツイッターより)
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