寒天を使った料理(撮影/廣瀬靖士)

 海藻が原料の寒天には、現代人に不足しがちな水溶性食物繊維がたっぷり。100g中に79gも含まれている。この食物繊維が、猛暑の体調管理をサポートしてくれるのだ。

食物繊維でお腹すっきり、クセがないから食べやすい寒天

「食物繊維で腸内環境を整えることによって、夏バテに負けない体力をキープできます。また、夏は発汗により失われやすいミネラルも、寒天には豊富に含まれています」

 そういうのは、管理栄養士の森下久美子さん。

「食物繊維には腸内で糖や脂質を吸着し、体外に排出してくれる働きがあります。また、腸の中で善玉菌が増えるのを助けて、腸内環境を整えてくれるほか、便の材料ともなり便秘の解消を助けます。

 これらの作用により、バテやすい夏も体力の底上げしてくれるので、積極的にとりたい食材なんです」(森下さん)

 寒天って、水でもどすのが面倒そうだけど、手軽に活用するには?

「寒天の種類は主には3種類。棒寒天、糸寒天、粉寒天があります。どれでも液体を固めることはできますが、水もどし不要の粉寒天が手軽でおすすめ。おかずに加えるなら糸寒天が便利。麺状の糸寒天は水でもどすだけでそのまま食べられますよ」

 そう教えてくれたのは、料理家の武蔵裕子さん。

 おいしく食べるポイントをふたりに聞いてみると、

「しっかりと煮溶かすのが失敗しないためのコツ。冷めると常温で固まるのも寒天の特徴です。プルプルの寒天ゼリーだけでなく、麺状の糸寒天を炒めものやあえものに加えるだけでも、簡単に食事に取り入れられます。

 あたたかい汁ものには、水でもどさず器に加えてOK。ただし鍋で煮ると寒天が溶けて、冷めると固まってしまうので注意。他の食材の味や香りをじゃましないから、食べやすいのがいいところですね」(武蔵さん)

「夏バテの一因は栄養不足。のどごしよく食がすすむ寒天と、豚肉・緑黄色野菜・梅干しなどを組み合わせるとさらにいいでしょう」(森下さん)

 夏にぴったりの寒天メニューで暑さを乗り切ろう!

寒天は3種類。固めるなら粉、おかずに加えるなら糸寒天

 棒、糸、粉があります。どれでも液体を固めることはできますが、水もどし不要の粉寒天が手軽でおすすめ。麺状の糸寒天は水でもどすだけでそのまま食べられます。

しっかり煮る

 しっかりと煮溶かさないと固まらないことも。少し煮立たせながら3分ほど、とろみが出るまで煮るのがポイント。

しっかり煮る(撮影/廣瀬靖士)

もどし方

 炒めものやサラダなどに糸寒天を加えるときはたっぷりの水に5分ほどつけてもどし、しっかりと水けを絞ってから。

もどし方(撮影/廣瀬靖士)

いつもの料理に

 汁ものには、水でもどさず器に加えてOK。鍋で煮ると寒天が溶けて、冷めると固まってしまうので要注意。

いつもの料理に(撮影/廣瀬靖士)

※煮溶かした寒天液は排水口などに流さないでください。詰まりの原因になります。

中華風ほたての卵とじ寒天(撮影/廣瀬靖士)

中華風ほたての卵とじ寒天

材料/容量150mlのカップ4個分
・ほたて缶(ほぐし身)……1缶(70g)
・溶き卵……1個分
・いんげん……3本
・しょうが汁 ……少々
・塩……小さじ1/3
・ごま油……小さじ1/2
 A粉寒天……2g
 A顆粒鶏ガラスープの素……小さじ1/2
 A水……100ml

【作り方】

(1)いんげんは耐熱皿にのせ、ふんわりとラップをかけて600Wの電子レンジで40秒加熱する。取り出して3~4cm長さの斜め切りにする。

(2)鍋にAを入れて混ぜ、弱めの中火にかける。少し煮立つくらいの状態で3分ほど、ゴムべらでたえず混ぜながら煮る。水200mlを加え、中火にしてよく混ぜる。ほたて缶を汁ごと加え、再び煮立ったら溶き卵を静かに回し入れる。卵が浮いてきたら、しょうが汁、ごま油、塩を加えて混ぜ、火を止める。

(3)水でぬらしたカップ(型)に(1)を等分に入れて(2)を流し入れ、あら熱をとる。冷蔵室で冷やし固め、器にあける。

とんカツ風春巻き(撮影/廣瀬靖士)

とんカツ風春巻き

材料/10本分
・春巻きの皮……10枚
・豚こま切れ肉……220g
・キャベツ……大2枚
・糸寒天……16g
・中濃ソース……大さじ1と1/2
・小麦粉……大さじ1/2
・揚げ油……大さじ3~4

【作り方】

(1)春巻きの皮は室温にもどす。糸寒天は水に5分ほどつけてもどす。水けを絞ってボウルに入れ、中濃ソースをふってあえる。キャベツは細切りにする。小麦粉は大さじ1の水で溶く。

(2)春巻きの皮の手前に、豚肉の1/10量を広げる。上に糸寒天、キャベツを1/10量ずつのせてスティック状になるように巻き、端に小麦粉で作ったのりを塗ってとめる。

(3)フライパンに揚げ油を入れて中火で熱し、(2)を並べ入れる。片面がキツネ色になったら返し、全体がキツネ色になるまで揚げ焼きにする。油をきって器に盛り、好みで練り辛子少々(分量外)を添える。

《POINT》具は生の食材のみ。ソースをからめた寒天を一緒に巻くだけで味つけが決まる、楽ちん、簡単春巻きレシピです。

白身魚のジュレカルパッチョ(撮影/廣瀬靖士)

白身魚のジュレカルパッチョ

材料/2人分
・白身魚の刺身(たい、すずきなど)……150g
・粉寒天……2g
・ポン酢しょうゆ……120ml
・ブロッコリースプラウト(あれば)……適量

【作り方】

(1)鍋に粉寒天、水100mlを入れて混ぜ、弱めの中火にかける。少し煮立つくらいの状態で3分ほど、ゴムべらでたえず混ぜながら煮る。ポン酢しょうゆを加えて混ぜ、すぐに火を止める。容量300~500mlの保存容器などに流し入れ、あら熱がとれたら冷蔵室で冷やし固める。

(2)フォークで(1)を好みの大きさにつぶす。

(3)刺身(さくの場合はそぎ切りにする)は器に並べ、(2)、ブロッコリースプラウトを散らす。を添える。

《POINT》しっかりと煮溶かさないと固まらないことも。少し煮立たせながら3分ほど、とろみが出るまで煮るのがポイント。

牛肉ときゅうりの韓国風炒め(撮影/廣瀬靖士)

牛肉ときゅうりの韓国風炒め

材料/2人分
・牛こま切れ肉……100g
・きゅうり……1本
・糸寒天……5g
・サラダ油……大さじ1/2
 A白すりごま……大さじ1と1/2
 Aにんにくのすりおろし、コチュジャン、砂糖……各小さじ1
 Aしょうゆ……大さじ2/3
 A酢、ごま油……各大さじ1

【作り方】

(1)牛肉は食べやすい大きさに切る。きゅうりは小さめの乱切りにする。糸寒天は水に5分ほどつけてもどし、水けを絞る。Aは混ぜ合わせておく。

(2)フライパンにサラダ油を熱し、中火で牛肉を炒める。肉の色が変わったら、合わせたA、きゅうりを加えて手早く炒め合わせる。全体がなじんだら糸寒天を加えてサッと混ぜ、すぐに火を止める。

寒天バンバンジー(撮影/廣瀬靖士)

寒天バンバンジー

材料/2人分
・鶏むね肉……250g
・にんじん……1/3本分
・糸寒天……3g
・酒……大さじ1
・かいわれ菜……適宜
 A白練りごま……大さじ2と1/2
 A砂糖……小さじ2
 Aしょうゆ……大さじ1/2
 A酢……大さじ2
 Aごま油……大さじ1

【作り方】

(1)鶏肉はフォークでところどころ刺す。耐熱皿にのせて酒を回しかけ、ふんわりとラップをかけて600Wの電子レンジで3分30秒加熱する。ラップをかけたまま冷ます。

(2)にんじんは細いせん切りにし、塩少々(分量外)をふって5分ほどおき、水けを絞る。糸寒天は水に5分ほどつけてもどし、水けを絞る。かいわれ菜は根元を落とす。

(3)にんじん、かいわれ菜を合わせて器に盛る。(1)の鶏肉を細めにさき、糸寒天とともに野菜の上にのせる。混ぜ合わせたAをかける。

キューブ寒天を作りおき

 毎度、寒天を煮溶かして固めて……というのが面倒な人は、保存容器に作りおきするのがおすすめです。もちろん、そのまま食べてもよし。キューブ型に切ってさまざまな料理のトッピングにも。

■豆乳キューブ寒天

豆乳キューブ寒天(撮影/廣瀬靖士)

材料/容量500mlの保存容器1個分
・粉寒天……4g
・水……200ml
・無調整豆乳……400ml
・塩……ひとつまみ

【作り方】

(1)鍋に粉寒天、水200mlを入れて混ぜ、弱めの中火にかける。少し煮立つくらいの状態で3分ほど、ゴムべらでたえず混ぜながら煮る。豆乳、塩を加えて混ぜ、火を止める。

(2)水でぬらした保存容器に流し入れる。泡があればスプーンなどで取り除く。あら熱がとれたら冷蔵室で冷やし固める。

冷奴風だけどぷるんと新食感豆乳キューブ寒天(撮影/廣瀬靖士)

■トマトキューブ寒天

トマトキューブ寒天(撮影/廣瀬靖士)

材料/容量500mlの保存容器1個分
・粉寒天……4g
・水……200ml
・トマトジュース(無塩・有塩お好みで)……400ml
・ドライバジル……小さじ1

【作り方】

(1)鍋に粉寒天、水200mlを入れて混ぜ、弱めの中火にかける。少し煮立つくらいの状態で3分ほど、ゴムべらでたえず混ぜながら煮る。トマトジュースを加えて混ぜ、火を止めてドライバジルを加えて混ぜる。

(2)水でぬらした保存容器に流し入れる。あら熱がとれたら冷蔵室で冷やし固める。

サラダにトッピングするトマトキューブ寒天(撮影/廣瀬靖士)

■梅じそだしキューブ寒天

梅じそだしキューブ寒天(撮影/廣瀬靖士)

材料/容量500mlの保存容器1個分
・粉寒天……4g
・水……600ml
・甘くない梅干し……大2個
・白だし(市販)……大さじ2
・青じそ……2枚

【作り方】

(1)梅干しは種を除き、包丁で軽くたたくか、小さめにちぎる。ボウルに梅肉と白だしを入れて混ぜる。青じそは細かいみじん切りにする。

(2)鍋に粉寒天、水200mlを入れて混ぜ、弱めの中火にかける。少し煮立つくらいの状態で3分ほど、ゴムべらでたえず混ぜながら煮る。水400mlを加えて混ぜ、火を止めて(1)を加えて混ぜる。

(3)水でぬらした保存容器に流し入れる。梅肉がかたよらないように混ぜ、あら熱がとれたら冷蔵室で冷やし固める。

冷しゃぶに梅じそだしキューブ寒天をのせておかずに(撮影/廣瀬靖士)

◆コンテナ型保存容器を型にすると、ふたができて作りおきにぴったり。保存期間はすべて、冷蔵室で3~4日。

PROFILE●森下久美子●管理栄養士。大手ダイエットジムでの食事指導担当ののち、個別指導を開始。芸能人やアスリートまで2000人超を指導。レシピ本の監修や商品開発も手がける。

PROFILE●武蔵裕子●料理研究家。雑誌や書籍で活躍するほか、企業のメニュー開発なども手がける。手軽にできる総菜から保存食まで、シンプルでおいしくできるレシピが好評。