楽に稼げる主婦パートで老後の資金をしっかり貯蓄しよう(写真はイメージです)

 人生100年時代のいま、欠かせないのは老後の資金。少しでも多く貯金をしておきたいが、頼みの綱はやっぱり、生きている限りずっともらえる年金だ。

 ただ、専業主婦やパート主婦の多くがもらえるのは国民年金のみで、フルタイムで働いたのち、厚生年金をもらえる夫と比べると、金額はかなり少ないのが現状だ。ところが……。

厚生年金をもらえる人が増える

「パートタイマーさんに朗報です。今年の10月から働き方次第で、もらえる年金の額を増やすことができるようになるんです」

 そう話すのは女性のキャリアアップに詳しい、キャリアコンサルタントの上田晶美さん。国民年金より受給額が多い厚生年金に、パートタイマーでも入りやすくなるという。

 これまで、厚生年金に加入できるパートタイマーは限られていた。まず、勤め先の会社の規模が従業員数501人以上であること。そして、勤務時間は週20時間以上、収入は月8・8万円(年収106万円)以上であること。さらに1年を超える雇用の見込みがあることなど、さまざまな条件が必要だった。

「その条件が緩くなるんです。雇用見込み期間は2か月以上でOK。会社の規模も、今年の10月からは従業員数101人以上、2年後の2024年からは51人以上の会社にも、パートタイマーを厚生年金に加入させることが義務づけられます。つまり、厚生年金をもらえる人が段階的に増えるということです」

厚生年金の受給条件が緩くなり、さらに稼げるようになった イラスト/伊藤和人(イラストはイメージです)

 とはいえ、厚生年金に入るということは、当然、給料から保険料を天引きされるので手取りは減ってしまう。それなら保険料を払わなくていいように収入を調整して働いたほうがトクなのでは……?

「たしかにこれまでは、税金を払わなければならなかったり、夫の扶養から外れたりして手取りが減らないよう、セーブして働いていた人もいると思います。

 30代や40代のころは子どもの教育費など、目の前の家計のやりくりがあるでしょうから月々の手取りを減らされるのは痛手だったと思いますが、50代や60代になったら、たとえ手取りが減ろうと、年金が増額になって老後資金が増えたほうがいいと考える人も多いはず。

 そういう人はセーブせずに働きたいだけがんがん働いて、手取りも年金もアップさせたほうがいいと思います」

稼げないパートもあるので要注意

「そうはいっても、厚生年金に入れる条件を満たせばどんな仕事でもいいというわけではありません」

 と上田さん。確かに、コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食店で真っ先に切られたのは主婦パートだった。また、キツすぎる仕事だと、結局長続きしないということも……。それでは目指す年金アップにはつながらない。

「例えば、お客さんの自宅にうかがうような自宅訪問型の営業はキツいと言われます。日中の在宅率は高くないですし、門前払いされることもありますから精神的にキツい。

 あと、テレアポもおすすめしません。電話営業は成功率も低く、“ガチャ切り”されたりして、やはり精神的ダメージを受けがちです」

自宅訪問型の営業は結構キツい(写真はイメージです)

 ただ、同じ自宅訪問や電話を使った仕事でも、内容によっては勤めやすいものも。

「生協はいいですね。商品を車で運んで家まで届ける仕事ですが、決まった時間に決まった家に行くから、邪険にされることはあまりない(笑)。

 テレフォンオペレーターも、かかってきた電話を受ける側なら主婦のコミュニケーション力を存分に活かせるのでおすすめです」

 これまで以上に“稼ぐ”ことを意識するなら、仕事選びは重要というわけだ。では、上田さんおすすめの、ラクに稼げて年金も増やせる仕事について、具体的にランキングで紹介しよう。

稼げるパートはコレだ!

 まずは、もはや現代の生活には欠かせないインターネット通販に関係する3つの職業が、ランキング上位に食い込んだ。

「いま地方や郊外にはネット通販の倉庫やコールセンターがどんどん建っていて、求人も増えています。おしゃべりが好きな人なら、通販の問い合わせなどに応じるコールセンターなんかおすすめです。

 身体を動かすのが好きなら倉庫作業もいいですね。短時間の交代勤務が可能なところが多いので、パートにはうってつけです。意外なところだと、フォークリフトを使っての仕事も時給が高くて、環境も比較的いいです」

 フォークリフトの操縦には免許が必要だが、車の運転免許を持っている人なら試験もそれほど難しくないので、免許を取得して時給アップを目指すのもアリだ。

主婦の経験は仕事をするときに武器になる(画像はイメージです)

 次に医療関係。時給もよく、患者さんやお客さんから話を聞く力も求められるので、普段から夫や子どもの話を聞いてあげている主婦にはもってこいだ。

「薬の登録販売者の資格があれば、ドラッグストアなどで高時給で雇ってもらえます。この資格は国家資格ですが、難易度が高すぎるということはありません。

 独学だと1日平均4~5時間、約3か月ほど勉強する必要がありますが、家事をしながらでも十分取れる資格です。時給も跳ね上がって、地域によっては2000円以上もありえます」

 高齢者向けのサービス業は、デイサービスなど比較的簡単なものから始めるのがおすすめ。

少しでも介護経験がある人なら、必ず経験を活かすことができる(写真はイメージです)

「少しでも介護経験がある人なら、必ず経験を活かすことができます。それに、人から『ありがとう』と言ってもらえる仕事はいいですよね」

 これまでの自分の経験を活かせる仕事を探すことも大事なポイント。主婦の経験だって仕事をしていくうえでの武器になる。また、育児や介護などで仕事のキャリアを一時中断した場合でも、それ自体がアドバンテージになると考えたい。

老後資金を一気に増やす「正規雇用」

 パートで稼いで厚生年金に加入すればもちろん年金は増えるが、正社員になればもっと年金は増える。

「年金額アップのためにも、もしチャンスがあるなら、正社員にならない手はありません。近頃はいい人材を確保するために、パートタイマーからの正社員登用に積極的な会社も増えています」

 栃木県在住の坂口加代さん(45歳、仮名)の例を見てみよう。坂口さんは子どもたちが高学年になったタイミングで、パートとして時給1000円の製造工場での勤務をスタートした。

「業務内容は陳列棚などの組み立てですが、私は身体が大きくて丈夫なので、重たいものもへっちゃら。細かい作業を黙々とするのは好きですし、接客がないからノーメイクでOK&服装自由というのもラクでした(笑)」

裏方の仕事ならメイクも服装もそれほど気にしなくていい イラスト/伊藤和人(イラストはイメージです)

 坂口さんの働きぶりは評価され派遣社員に。徐々に現場でのスキルも上がり、子どもたちが高校を卒業した絶好のタイミングで、正社員雇用の誘いが。試験を受けて結果は合格、給料は1・5倍以上になったという。

「収入面のアップはもちろんですが、やっぱり正社員だと安心だし、社会人として一人前になったような気がして、それもうれしいですね」

 上田さんは「たとえ正社員でなくても、自分の厚生年金に加入することは家庭内での妻の立場としても重要です」という。

「将来、年金生活が始まったときに、夫の年金で食べさせてもらっていると思うと遠慮がちになってしまうかもしれませんが、経済的な自立があれば家庭内でも精神的に対等になれます。

 夫婦それぞれが年金をもらい、協力しあって家事も介護もやっていくのが理想。これを機に、主婦の皆さんにはぜひしっかり稼いでもらって、この先の長い人生を安心して過ごしてほしいですね」

稼げる!主婦におすすめのパート10

〈第1位〉 コールセンター/平均時給1568円

 郊外にお住まいなら、ネット通販のオーダーサポートをするオペレーター業務が断然おすすめ。コールセンターは地価の安い郊外に数多くあるので通いやすいし、スタッフやお客さんにも主婦層が多いので、主婦同士のトークで無理なく仕事ができる。ただし、テレアポ(電話営業)やクレーム処理はストレス多し。業務内容はよく吟味して。

〈第2位〉 倉庫作業/平均時給1202円

 こちらも郊外にお住まいで、身体を動かすことが苦にならない人ならぜひ。例えばAmazonの倉庫は郊外に増加中。スニーカー&軽装OK、15分刻みの短時間勤務可、冷暖房も完備なら言うことなし。とはいえ、職場環境は経営母体にもよるのでしっかり確認を。

〈第3位〉 フォークリフト作業/平均時給1389円

 倉庫作業の中で必須の荷下ろし。取得する手間はかかるが、フォークリフトの免許さえあれば女性にもできるので重宝される。しかも高時給。免許は、5日ほどの講習を受けて学科・実技試験に合格すれば取得可能。自動車の運転免許を持っている人ならチャレンジしてみる価値あり。

〈第4位〉 医療事務

 病院での事務。高時給の人気の資格だが、取得まで通信講座で3か月~6か月程度かかる。

〈第5位〉 薬事事務

 薬局での事務。薬剤師とは異なり数か月で資格の取得が可能。主婦のコミュ力も有利に。

〈第6位〉 登録販売者

 ドラッグストアなど医薬品を扱う店舗では配置義務があるため、重宝されること請け合い。

〈第7位〉 飲食店

 コロナ禍でしばらく休業していた店が営業再開。好条件での再募集が増えている今が狙い目。

〈第8位〉 給食サービス

 介護施設や高齢者家庭に食事を届ける仕事。年々需要が増加。免許があればドライバーも。

〈第9位〉 デイサービス補助

 食事サポートや送迎の手伝いなど。実績を積んで福祉士などの資格取得を目指すのもあり。

〈第10位〉 パソコン事務

 社員も敬遠しがちなパソコン業務。スキルさえ持っていれば、年齢不問で重宝される。

※上記の平均時給は求人情報誌「タウンワーク」調べ(東京都の平均時給)

教えてくれたのは…

上田晶美さん
株式会社ハナマルキャリア総合研究所代表取締役。日本初のキャリアコンサルタントとして、約2万人の仕事相談に応えてきた。特に女性のキャリア支援に力を注いでいる。

〈取材・文/八坂佳子、大野瑞紀〉