JPと澤井直人

 テレビ、YouTube、CM業界などの放送作家として、数々のコンテンツを作り出してきた澤井直人(32)。今、ほかの誰よりも「人間」に興味がある平成生まれの彼が「今、話を聞きたい!」と思う有名人と対談する、好奇心と勢いだらけのインタビュー企画『令和にんげん対談』が始動! 

 第2回のゲストは、松本人志や麒麟・川島明のモノマネで大ブレーク中、お笑い芸人のJP(39)。彼の実家はなんと、澤井の妻とご近所さんだというから驚き! 

 澤井と不思議な縁で繋がったJPの抱く松本人志への深すぎる愛情や売れるまでの葛藤、独自のモノマネ論など“にんげん”的な部分を澤井が深く掘り下げる。今、いちばん勢いのあるモノマネ芸人・JPの怒涛のトークは必読です!【後編】

澤井「今年に入ってから一気に注目されるようになったJPさんですが、これまで“なかなか売れない”“苦しい”っていう感覚はあったんですか?」

JP「めちゃくちゃありましたね。でもしんどいよりも、いつか売れると思っていました。でも“100%売れる”と思っているけど根拠は何もない。僕らの世界って免許があるわけじゃないし、定年もない。吉本いかなくても腕があれば売れる世界なので博打みたいなもんです。最初から負けると思ってパチンコにいかないと同じで、根拠はないけど勝てると思って博打する気持ちと一緒かなって」

松本人志から2回もツイートを

澤井「芸能界って博打という側面も結構ありますよね」

JP若いころは夢を追いかける感じでしたが、40歳手前になっても、にっちもさっちもいかなくなって、食っていくための選択を迫られていました。芸人を辞めることは絶対にないんですけど、後ろを振り返ったら若いモノマネ芸人がどんどん出てきて。チョコプラとかりんごちゃんとか、モノマネ芸人じゃないのにモノマネをやる芸人もいて。売れるタイミングをめちゃくちゃ逃してるんじゃないかって。

 僕が松本さんのモノマネをするのはある程度知られていたんで新鮮味がないし、モノマネだけで世に出るのは難しいかもと思い始めたことがありました。そうであれば、飯を食う方に切り替えて、いろいろな企業の社長さんと仲良くして営業の仕事を振ってもらおうとか思っていました

澤井「そんな時に松本さんや川島さんの代役の件があって、一気にブレークされたんですね。JPさんがモノマネされている人と直接お会いする機会もあると思いますが、会ったことでネタにプラスアルファすることってあるんですか?」

JP「ご本人にお会いしたときのエピソードもネタにしていますよ。CMや再現VTRで松本さんとして出演させて頂いた時にご本人が見てくださった際に“JPっておるんやな”と、松本さんの口からJPという単語を出して頂きまして。
 
 その後にワイドナショーの代役、そして初めてお会いした際には“今度お前がコロナになったら次は俺が代役やな”って言われたんです。実際、その数時間後に僕が本当にコロナに感染したんですけど(笑)

澤井「そんなやりとりがあったんですね! 粋なご挨拶で面白いですね」

JP「僕がコロナ感染後に松本さんがツイッターで“JPがコロナ感染、俺が代役か”と投稿してくださったんです。ごく短いスパンで松本人志のツイッターに2回もお名前を出して頂いたのですが、それって芸人からしたら、どれだけ誉れなことか。“この間クリスマス終わったばっかで、またプレゼントもらえんの!?”みたいな気分でしたね」

澤井「そんなんもう最高過ぎますよね。それだけで“もう芸人辞めてもいい”くらいの気持ちになる」

JP「仕事も10本くらい飛ばしてしまいましたし、もちろん感染しない方がよかったですし、メンタルもヘコみましたが、そのツイートのおかげですごく救われました。普通は『M -1』とか『R -1』で優勝して初めてツイートしてもらうご褒美みたいなものじゃないですか。だから、僕からすれば松本さんがどんなワクチンよりも強いワクチンでしたよ

モノマネが上手くなる方法

澤井「松本さんや川島さんのネタが有名ですけど、JPさんてモノマネのレパートリーがものすごく多い。普段はどのように増やしているんですか?」

JP「もちろん、まったく新しいネタを作りつつ、これまでやってきた約20年のストックに加えて、それらのネタを磨き直している感じですかね。川島さんのネタでいえば、以前は漫才の時のモノマネでしたけど、今はMCで立ち回る川島さんのモノマネに変換するとか。元々持っているネタを今の時代にブラッシュアップし直して出すということが多いかもしれません」

澤井「その考え方は、放送作家と似ているかもしれません。以前考えていた企画はPCの中にたくさんストックしてあって、それを引っ張り出して今の時代に合わせて作り直すのと似ていると思います」

JP「ですね! モノマネ芸人って味付け直したら、もう1回新メニューとして出せる。でも、逆に言えば“あぐらをかける”んです。例えば、菅田将暉さんとか米津玄師さんなどの流行ってる曲を、松山千春さんのモノマネで歌えばネタになる。
 
 でもそれって楽してるだけで“また松山千春で流行りの曲を歌ってるだけじゃん”と言われてしまいます。テレビに出るにはそういうストックも必要ですけど、それってどうなのって思うし、常に新しいネタを作らないといけないと思っています」

JPと澤井直人

澤井「すごい衝撃的だったのは、川島さんのモノマネが『細かすぎて』の後に、ほかの番組で見た時の方がブラッシュアップされてすごく面白くなっていて。同じネタを見ているのに、ネタをどんどんレベルアップされていてさすがだなと感じました」

JP「自分では気づいてないんですけど、周りからは“あの時よりも全然すごい”って言われること多いですね。あと、モノマネ芸人を目指している人がいたらアドバイスしたいことがあります。よく言われるんですよ。“どうしたらモノマネが上手くなりますか”とか“モノマネ芸人目指してるんですけど、どうすればいいですか”って。

 そういう時は“どんなにボロカスに言われても、自分が似てると思ってやり続けること”だと答えています。僕も松本さんのモノマネやってボロカスに言われてきましたけど“いやいや、俺は松本さんが大好きだし、似てると思ってるからやってるんだ”って。いい意味の勘違い、これは本当に大事なことだと思っています

気になる若手モノマネ芸人

澤井「周りからの評価ももちろん大切ですけど、自分が自分のネタを信じることがいちばん大事ってことですよね」

JP「ちょっとだけ偉そうに言ってしまうと、漫才やコントと違ってモノマネには答えがあります。お笑いってどうやったら売れるかの明確な答えはありませんが、モノマネは今まで誰もやっていない人をそっくりにモノマネしたら売れます。例えば、まだ誰もやっていない内村光良さんのモノマネをめちゃくちゃ上手くできたら売れますよ。答えがあるのがモノマネなんです」

澤井「若手の方でもモノマネ芸人ってたくさんいますよね。JPさんからみて“次売れるのはこの人だ”っていう方はいますか? 同じフィールドで戦う中で脅威を感じているような」

JP『アンタッチャブル』の柴田さんのモノマネが得意な伊藤瞬くんですかね。褒め言葉としてですが“いやらしい素直さ”がありますね。

 売れるためになんでもしようと思っていた昔の僕にちょっと似ていて。こっちとしては“無理しないでね”と言ってもバイトを休んででも僕の仕事の手伝いをしに来てくれたり、お金もないはずなのに自腹でショーを見に来てくれたりとか。やっぱり嬉しくなるし、僕も同じことをしていましたから」

澤井「確かに『細かすぎて』のオーディションでも、スタッフ陣がアドバイスしたことに対して、次のオーディションでは新しく4パターンくらい見せ方を作ってこられる印象です」

JPと澤井直人

JP「貪欲さがすごいんです。自分が手伝いに行けば、JPが認めてくれてどこかのタイミングで名前を出してくれるんじゃないかとか。売れるために必死に努力する。そういう頑張っているところが見えるから、可愛がってあげたいなって思います。

 SNSでアニメのモノマネとか、そういうのもすごいとは思うんですけど、芸人魂をもったモノマネ芸人は伊藤くんかなと。ネタのチョイスもいいし、モノマネ芸人としての嗅覚がすごいなって思います。言われなくても新ネタを作ってくる姿勢が好きですね」

【ブレークのきっかけ『細かすぎて』の秘話、反町隆史からの粋なひと言…前編はコチラ】

■JPワンマンライブ
『劇場版モノマネモンスター JPの逆襲evolution』

[日時]
2022年9月10日(土)
・第一部 開場12:45 / 開演13:30
・第二部 開場16:15 / 開演17:00
[会場]
新宿FACE(東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F)

【チケット情報】
○イベント・チケットの詳細は公式サイトでご確認ください。
[公式サイト]
http://ken-on.com/monomanemonster/

澤井直人 
 テレビ、YouTube、広告などの放送作家として活動。2022年より対談作家の道へ。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ(フジテレビ)』、『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!(テレビ東京)』、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの!?(日本テレビ)』、『高校生クイズ2022(日本テレビ)』、『ダウンタウン vs Z世代 ヤバイ昭和 あり?なし?(日本テレビ)』などを担当。

https://twitter.com/onaona525(Twitter)
https://www.instagram.com/gui_nao1990/(Instagram)


(取材・文/綾部和也) (撮影/廣瀬靖士)