アグネス・チャンさん

 今でも変わらぬ笑顔を振りまいてくれるアグネス・チャンさん。現在67歳だが、その元気の源は意外なものだった!? どこでもできて、気分転換にもなる!  スタイル維持に最適で、「ホルモンバランスを崩したときも救われた」というオリジナル健康法とはーー?

コメントしてくれたのは……
医師・医療ジャーナリスト
森田 豊先生


 1963年、東京都生まれ。医師として医療に従事するとともに、メディアにてジャーナリストとして活動を行っている。近著『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』(自由国民社)がある。

いつでも、どこでも、お金をかけずにできる!

 今年、日本デビュー50周年を迎えたアグネス・チャンさん。67歳には見えない若々しさをキープしている秘訣は、15年続けている「エア縄跳び」にあるという。

「実は私は運動が嫌いなのですが、年齢とともに『いつまでも自分の足で歩ける身体でいたい』と思うようになりました。そこで、いつでも、どこでも、お金もかからずにできる『エア縄跳び』をしてみることにしたのです。縄を使って跳ぶと音がしますし、家の中ではひっかかってしまってできません。でもエア縄跳びなら、手を回して跳ぶだけなので、思いついたときにすぐできるんです」

 エア縄跳びを熱心にやるようになったのは、2007年の乳がんの手術後だった。

「術後のホルモン療法では、女性ホルモンを抑えて、更年期のような状態になるのですが、その副作用として代謝が下がり、5キロ太ってしまったんです。ホルモン療法は5年続くので、このままでは太り続けてしまうと危機感を持ち、エア縄跳びをするようになりました。続けているうちに太らなくなり、脚の筋肉も鍛えられました。また、年齢とともに骨密度が下がりますが、ジャンプをすることは、骨に刺激を与えて、骨を丈夫にする作用があると聞いています」

 エア縄跳びは、精神面へもいい影響を及ぼすそう。

「やる気がないときでも、エア縄跳びをすると元気が出て、頑張ろうと思えるんです。ステージやテレビ番組の収録の前に、エア縄跳びをして緊張をほぐすことも多いです。ただ、誰かに見られたら『何をしているんだろう?』と思われて恥ずかしいので、こっそりと行っています(笑)」

 今では1日3~4分、音楽に合わせて跳ぶのが日課になっている。

「最初は100回から始めて、徐々に回数を増やしていきました。私のデビュー曲である『ひなげしの花』がちょうど3分で、音楽1曲分に合わせると、リズミカルに跳べますし、最後まで跳べたという達成感が得られます」

 前回しだけでなく、後ろ回しも行うと肩こり解消につながる。

「後ろ回しを行うことで肩まわりがさらにほぐれ、姿勢もよくなります。ただ、ひざが痛い方は負担をかけないよう、畳の上や分厚いマットの上で行うほうがよいと思います。靴を履いて行うのもおすすめです。胸が垂れないよう、しっかり固定して行ったほうがいいでしょう」

 エア縄跳びのほかには、ピラティスとウォーキングを続けているという。

「乳がんの手術後、身体の右側が縮みがちになり、そこを伸ばすようにピラティスを続けています。ウォーキングは毎日6000~8000歩ほど、自宅の周りを歩くようにしていて、足腰の強化を心がけています」

 足腰を鍛え、ダイエットや更年期の不調の改善、心の不調の予防にも役立ちそうなエア縄跳び、できる回数から実践してみよう!

森田先生の見解
 エア縄跳びは、狭い室内など場所を問わずに実施でき、全身の筋肉を鍛えるのに適しています。脚の筋肉を鍛え、骨に刺激を加えることで健康寿命の向上につながります。音楽に合わせてリズミカルな運動をすることは、自律神経のバランスを整え、更年期の不調の改善などにつながります。

アグネス・チャン
 香港生まれ。1972年『ひなげしの花』で歌手デビュー。トロント大学(社会児童心理学)卒業。スタンフォード大学大学院教育学博士課程修了。近著『0歳教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、日本デビュー50周年記念アルバム『しあわせの花束をあなたに』も好評発売中。

取材・文/紀和静