結婚を真剣に考えて婚活を始め、デートを重ねていくうちに好きな気持ちも育ってきた。結婚の話もちらほら出始めたころに、相手のとんでもない一面が見えてきたら、あなたならどうしますか? 重ねてきた時間を考えると、簡単にその関係を解消するのは、なんだかもったいないと思ってしまう。でも、相手がこんな人だったら、結婚は取りやめたほうがいいのではないでしょうか?

写真はイメージです

女性を支配下に置きたがる男性

 結婚相談所でのおつきあいには、仮交際と真剣交際の区分があります。お見合いをして、お互いに“交際希望“ならば、まずは仮交際に進みます。この期間は、別の方と新しいお見合いをしてもいいですし、ほかのかたと仮交際をしていてもいいのです。

 その仮交際を経て、“この方となら真剣に結婚を考えたい“というお相手が出てきたら、次のステップである真剣交際に進みます。真剣交際に入ったら、もうほかのかたとのお見合いはできませんし、複数のかたと交際していたらほかはお断りをして、1対1で向き合います。

 真剣交際に入るときには、お互いに恋愛感情も育っています。ですが、時間を重ねてより真剣に向き合ったからこそ見えてくる、相手の意外な一面もあります。

 みさとさん(31歳、仮名)は、さとるさん(32歳、仮名)と先月、真剣交際に入りました。さとるさんは、大手企業で国際関係の仕事をしており、高年収の男性でした。

「こんな経歴のいい方だと、私は釣り合いが取れないかも」と、みさとさんは言っていたのですが、仮交際に入ると、さとるさんからの猛アタック。4回目のデートを終えたときには真剣交際を申し込まれ、みさとさんは、快諾をしたのです。

 ですが、真剣交際に入って1か月が経ったころ、こんな連絡が来ました。

「仮交際のときから、何をするにも命令口調っぽいところがあったのですが、真剣交際に入ったら、それが余計に強くなったように感じるんです」

 そして、彼からのLINEの抜粋を送ってきました。

《メールの返事が遅くない?》
《俺に会わなかった時は、何やってるの?》
《食事デートの時には、パンツじゃなくスカートにしてほしい》
《結婚したら、仕事はセーブして、家のことをきちんとやってね》

 みさとさんは、私に言いました。

「私も完璧な人間ではないし、直さないといけないところはあると思うんです。それに、とても条件のいい人だし、私がお見合いをして、初めて真剣交際に入った人だから、簡単に交際終了にはしたくない。ただ、結婚したら、もっと命令や束縛が強くなる気がするんですよね」

 そして、こう続けました。

「交際終了にしてしまったら、またゼロからやり直し。婚活を1年続けてきて、やっと結婚できるかもしれない相手に巡り会えたのに、あのつらい婚活をゼロからやり直さないといけないのかと考えると、ぞっとするんです。このまま結婚してしまったほうがいいのかなとも思うんですよね」

現在は、貯金が50万もない男性

 ひろみさん(35歳、仮名)は、大学を卒業して以来、ずっと公務員として働いています。真剣交際に入っているひろしさん(40歳、仮名)は、店舗を構えて仕事をする年収900万円の自営業者です。

 真剣交際に入った後、結婚後に2人で住む新居を探しに行きました。2人の職場の中間地点の地域で駅からの徒歩圏内に、住みやすそうな2LDKのマンションを見つけました。そこをひろしさんの名前で契約しようとしたのですが、後日、「入居審査が通りませんでした」という連絡が不動産屋さんからありました。

 それを不審に思ったひろみさんが、ひろしさんを問い詰めると、コロナが蔓延して以来、客足が遠のき、逼迫している経済状況がわかったのです。

 ひろみさんは、私に連絡を入れてきて言いました。

「プロフィールにある年収900万円は、相談所に入ったときの年収のようです。店舗を構えているので、お客さんが来なくても月々の家賃や維持費はかかっていく。この2年半、貯金をきり崩してやりくりしてきたというんですね」

 今年に入ってから、少しずつ客足は戻ってきているというのですが、現在、貯金が50万円程度しかないことがわかりました。

「『それじゃあ、結婚式も挙げられないし、指輪も買えないじゃない』って言ったら、『キミは公務員で、収入が安定しているから、大丈夫でしょう』っていうんですよ」

 さらにこんなことも言われました。

「2人で住むマンションも、僕じゃなくてひろみちゃんが契約してくれないかな」

 ひろみさんは、私に言いました。

「もちろん、私は家庭全ての経済を男性に頼るつもりはありません。夫婦は助け合って生活していくものですが、最初から、私の稼ぎを100パーセントあてにしているのもどうかなと思うんです。自分の経済状況がこんなに逼迫しているのに、それを全く伝えずに『真剣交際に入ろう』と提案してきたことにも、結婚しようと考えていることにも、責任感のなさを感じました」

「勝手にしろバカ女」と叫ぶモラハラ男

 すみえさん(35歳、仮名)は、としひろさん(35歳、仮名)と成婚退会したのですが、先日、「婚約を解消したので、もう一度そちらで婚活がしたいです」と、連絡を入れてきました。

 面談にやってきたすみえさんに、どんな経緯があって婚約解消になったのかを聞きました。

「結婚が決まってからというもの、なんでも自分で思いのままに決めてしまって、私の意見は無視なんです。二人とも職場が都内なのに、新宿まで電車で1時間半かかるご実家の家を2世帯にして、そこを新居にしようと言い出したんですね」

 通勤時間もさることながら、義父母になる彼のご両親と2世帯とはいえ、同居することにすみえさんは抵抗がありました。

「としひろさんは、『通勤時間がかかるようになっても、親が側にいたほうが、子どもが生まれたときときに面倒を見てもらえるから、すみちゃんも働きやすいでしょう?』って言うんです。自分の親になら甘えられるけれど、義父母にはワガママ言えないし、子育てのことで口出しをされても言い返したりできない。『2世帯は気が重いからそれは避けたい』と伝えたんです」

 その話をしたのが、1泊2日の温泉旅行に行く車の中だったそうです。すると、としひろさんの機嫌がみるみるうちに悪くなっていきました。そんな彼の顔色を見ながら、旅館にチェックインしました。

「部屋に入ると、テレビをつけてずっと観ていたり、スマホをいじっていたりして、こちらを無視しているんです。だから、『外に観光に行きましょうよ?』と誘ったら、『行きたいところがあるなら、1人でどうぞ』って言うんです」

 せっかく楽しみにしていた旅行だったのに、すみえさんは、なんだか悲しい気持ちになりました。そして、涙をこぼしてしまったのです。すると、としひろさんは言いました。

「なんだよ。めんどうくさいなぁ。泣きたいのはこっちだよ」

 それを聞いて、悲しみがだんだんと怒りへと変わっていきました。そして、彼に向かって言い放ったのです。

「いつも自分の意見ばかり押し付けて、なんでも勝手に決めて、私の気持ちなんて全く考えてくれない。こんなふうに無視されていても楽しくないから、私、帰るね!」

 荷物を持って部屋を出て行こうとしたときに、背後から怒鳴り声が聞こえてきました。

「勝手にしろ、このバガ女」

 そして、旅行から帰ってきて、婚約解消となったのです。

「とんでもない、モラハラ男でした。婚約解消になってよかったです。入籍した後だったら、そう簡単に離婚できませんから」

 前出のみさとさんも、ひろみさんも、その後、真剣交際を終了。すみえさんは、婚約解消。せっかく築いてきた関係を壊すのは、勇気がいることですし、悲しい気持ちにもなります。ただ、入籍をしてしまったら、関係を解消するのは“離婚“となり、戸籍にはそれが残ってしまいます。

 私は、いつも会員に言っています。

「婚活はいっときのこと、結婚は一生のことよ」

 迷ったときには、いったん立ち止まって、お相手もいろんな角度から見てみることが大切です。100パーセント完璧な人間はいませんし、どんな人にも長所もあれば短所もあります。短所が見えたとき、欠点がわかったとき、そこをも含めて愛せる人なのかを、自分に問いただしてみてください。

 結婚してからの人生は、長い。幸せな日々が紡げる、後悔のない結婚をしていただきたいなと思っています。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル