元自衛官の五ノ井里奈さん

 自衛隊が揺れている――。

 今年6月まで陸上自衛隊に所属していた22歳の女性・五ノ井(ごのい)里奈さんは自身が体験した性被害の数々を告発した。YouTubeで実名・顔出しという覚悟の訴え。週刊女性PRIMEも五ノ井さんから話を聞いて、当時のLINEのやりとり画面を見せてもらい、そのあまりにも酷いセクハラの実態を7月に報じたばかり。

 五ノ井さんの訴えを受けて、政治も動き出した。

 8月上旬、立憲民主党は五ノ井さん本人にヒアリングを行った後、防衛省の担当者と意見交換をした。ただ、防衛省は「現在、調査中」としながら具体的な話は口にしなかったという。

この体質のまま続いていく

いつもどおりの見て見ぬフリですね。内部ではいっさい話題にすらなっていません

 と話すのは、自衛隊の現役幹部であるAさん。

 五ノ井さんの告発を受けた防衛省は「重く受け止める」としながらも、調査内容の詳細は明かさず、調査結果を発表するかどうかも現時点で未定としている。

こういう事案があったから気をつけろよとか、そんな話すらありません。そういった反省があれば、自衛隊の体質はとっくに改善されていますが、残念ながら、この体質のまま続いていくんじゃないかという思いです。組織としては“退職した女性が、ないことを作り上げて言っているだけ”というふうにしか捉えていないでしょう」(Aさん)

 五ノ井さんが告発したのは、壮絶なセクハラだった。

 日常的に浴びせられる卑猥な言葉はもちろん、決定的な“事件”は入隊から約1年後の2021年6月、山岳地帯に宿泊した訓練でのこと。

「テントの中で、先輩の男性隊員2人から胸を揉まれ、頬にキスされ、下着の上から相手の股間を触らされました。それが長時間続いて、消灯時間が過ぎても終わらず、先輩の女性隊員にLINEで助けを求めましたが、先輩も以前からセクハラを受けており、怖くて助けにすら来てくれませんでした」(五ノ井さん、以下同)

再調査は本当に行われている?

 さらに同年8月に行われた約1か月間にわたる泊まり込みでの訓練では、まるで“集団レイプ”のような行為が繰り広げられた。

「酒盛りをしていた男性隊員の1人が、私に覆いかぶさってきて、私の両足を広げて、股間に自分の陰部をこすりつけて、正常位の体勢になって腰を振りながら“あん、あん”と喘ぎ始めたんです。それが、2人目、3人目と続きました。柔道をやっていた私も力は強いほうですが、いくら抵抗してもビクともしなかったので、ただただ時間がすぎるのを待ちました。部屋には15人ほどがいて、その様子はみんな見ていたのですが、誰も止めてくれず。私は後日、部内で訴え出ましたが、誰も証言をしてくれませんでした」

 週刊女性は、五ノ井さんが所属していた福島県の『郡山駐屯地』に問い合わせたが、

今回の件の再調査を行っています

 とのことだったが、前出の現役自衛隊幹部であるAさんによれば「調査中」というのが、そもそも信用できないとも。

“調査中”は、ありきたりな決まり文句。訴訟などにならない限り、動かないんじゃないでしょうか。少なくとも、私のところには調査しているという話は聞こえていません」(Aさん、以下同)

 五ノ井さんのセクハラは、自衛隊内では氷山の一角に過ぎないという話だ。このレベルのハラスメントは蔓延しており、被害者が訴えても調査せず、結局は被害者が泣き寝入りするというのが、これまでだった。

 ただ今回は、五ノ井さんはYouTubeとメディアで告発。防衛省の対応には注目が集まっている。

「今回の五ノ井さんの訴えは、世間的には大きく反響があったので、ぜひ改善への一歩になってほしいという思いがあるんです。五ノ井さんはつらい時期を過ごされたかと思うので、微力ではありますけど、力になれればと思って、告発を受けての今の自衛隊内部の状況をお話いたしました」

 多くの自衛官は、国を守るという使命に心を燃やしているはず。

自衛隊を再生させるために、五ノ井さんの勇気ある告発を無駄にしてはならない。

 
配属された郡山駐屯地の部隊で上官や先輩からセクハラを受け続けた
女性の先輩自衛官は、「オオカミになるから覚悟しとけ」と言われ、恐怖で動けなくなったという

 

 

 

東日本大震災がきっかけで自衛隊に入隊した五ノ井さん
検察庁は五ノ井さんのセクハラ被害について不起訴と判断した