『ちむどんどん』に出演する黒島結菜と竜星涼

 NHK朝ドラ『ちむどんどん』が大荒れだ。

 新エピソードが公開されるごとにネットでは何かしらストーリーに対し“ツッコミ"が入る状況となっている。ツイッターでは『#ちむどんどん反省会』というハッシュタグが付いたツイートでお祭り状態だ。

 朝ドラの歴史を見ると、確かに不評で視聴率が低かった作品は過去にもいくつかあったが、ここまで叩かれた作品はなかったのではないか。

 ツッコミのムーブメントは政治家にも波及。前参議院議員の礒崎陽輔氏はツイッターでこのように呟いている。

《#ちむどんどん 芸能評論は控えていますが、この番組に多くの意見を頂いています。俳優の皆さんは立派に演じられていますが、脚本の論理性が崩壊しています。私自身沖縄振興の関係者として残念であり、既に手後れかもしれませんがNHKは猛省する必要があります》(8月14日)  

『ちむどんどん』

週刊誌に掲載されてクビ 作中のツッコミポイント多数

 そんな、ツッコミのやまない脚本の“ボケ"ポイントをいくつか紹介したい。

 たとえば、竜星涼が演じる主人公・暢子(黒島結菜)の兄、作中ではニーニーと呼ばれる彼が何度も詐欺被害にあうこと。

 1回目は沖縄の本土復帰で通貨がドルから円に変わることを利用した詐欺。これはいかにもありそうな話だ。次は健康食品、3度目は健康飲料。ふたつともインチキ商品で、3度目は“マルチ商法"、いわゆるネズミ講だ。それだけならまだよかったが、なんと3回とも同じ人物に騙されるのだ。しかも事件の解決には警察が1度も介入していない。まさに“ありえへん”。

 そんなニーニーが詐欺集団に監禁されてしまった回でもおかしな点が。暢子と彼女の夫で新聞記者の和彦(宮沢氷魚)がニーニーを助けに行き、乱闘に巻き込まれた。後日、その現場写真が週刊誌に掲載される。誰によってどのようにして雑誌社に持ち込まれたものなのかは一切明かされず、記事の内容も明かされないが、とにかく“詐欺集団との関係を疑われた"ことで青柳が勤め先の新聞社をクビになる。これには週刊誌記者だった筆者も驚いた。本人に取材せずに記事にすることなどまずないし、週刊誌の記事の真偽を確かめずに社員にクビを告げる上司もまずいないだろう

 このドラマは万事がこの調子だ。

 批判の声は当然NHKにも届いているはずだが、局内ではどんな声が上がっているのだろうか。

民放プロデューサーの『ちむどんどん』評

ストーリーに関しては“あれはないね"と思っている局員は多いです。でもそれを口に出す人はいない。ドラマの良し悪しはほぼ脚本で決まると言われていますが、ドラマを非難することは作っている制作サイドを非難することになりますから。そんなことを言えるのは会長しかいないでしょ」(NHK関係者)

 NHKの朝ドラの場合、脚本が出来上がっていても放送が進むに連れて、周りの声を聞きながら色々手直しをして行くというのはよく知られている話だ。脇、あるいはちょい役で出演した俳優が評判になり人気が出てくると、急に出番が増えたりすることがある
また、よほど大御所の脚本家を起用した場合を除いて、脚本を脚本家にすべて任せることはせず、チームで脚本を練っていく手法を取ることがあるという。

『NHKドラマガイド』によると、今回の『ちむどんどん』は脚本家の羽原大介氏のほかに制作統括とチーフ演出が加わり、3人で脚本を揉んで言ったと、羽原氏が語っている。これだけ非難の声が上がっているのを3人が知らないはずがない。それでも変わらず“まさかやー"なシーンが続くのはどうしたことなのか。

 民放キー局で長年ドラマ制作に携わったベテランプロデューサーはこう語る。

ウチの局ではストーリーに関しては1人の脚本家にお任せする方式をとっていますね。その代わり脚本家は絶対ですよ。本に口出しすることはしません。海外では複数の脚本家が初期の段階からアイデアを出し合う“チーム制"で話を練るのが当たり前で、『ちむどんどん』はそれを採用したかたちでしょう。ただ、その方針が裏目に出たケースなのではないでしょうか。

 あれも描きたい、この要素も入れたいといった個々の意見が渋滞してしまっている印象ですね。作中では沖縄料理のレシピを紹介するくだりが頻出するのですが、グルメドラマでもないのに時間を割いてまでわざわざやる必要があるのか。レシピがバズることを想定したのかも。また、川口春奈さん、仲間由紀恵さんらに焦点を当てたストーリーも多く、いろいろと詰め込みに思えてきますね……

NHK朝ドラ『ちむどんどん』で息の合ったところを見せる“4きょうだい”(公式インスタグラムより)

 非難の声がなくならないが幸い視聴率がガタ落ちしている様子はない。それは朝ドラが視聴習慣となっている人たちが多いということもあるが、ネットを見ても分かるようにツッコミを入れることが楽しくて見ている人が多いのに加え、“一周回って"このようなムーブメントが起きているのだという。

話題になっていることで興味を持ち、#ちむどんどん反省会に参加しようと、今になって見始めた人がいるのは確かです」(テレビ誌ライター)

 もはや“炎上商法"と化した感もあるが、残り1か月、この先どんな“珍事"が起き、ラストはどうなるか視聴者はますます“ちむどんどん"しちゃうのでは───。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。

 
5月上旬、スーパーのレジで寄り添いながらお会計をする黒島と高良
高良とスーパーに向かう足取りは軽く、黒島はウキウキした様子だった

 

 

 

 

杏の自宅で料理をしたあと、庭でくつろぐ黒島結菜(本人YouTubeより)