石原さとみ、木村拓哉、山下智久

《皆様にお伝えしたいことがあります。中国での活動を見据え、来年から中国の大学に留学します》

 バラエティーで活躍する女性タレント・こじるりこと小島瑠璃子(28)は、末広がりの8月8日に先述のメッセージをツイッターに投稿した。

中国にいないタイプの日本人が人気

 こじるりといえば、中国の春秋戦国時代を舞台にした歴史漫画『キングダム』のファンとしても知られ、同作作者の原泰久氏との熱愛・破局が報じられた女性タレント。日本では、彼女と中国はただならぬ関係になっているイメージだが、実際のところ、こじるりが中国に進出した場合、人気を獲得できるのだろうか。

「小島さんは、中国でまったく無名というわけではありません。これまでも中国のファッションSNSアプリ『小紅書(以下、RED)』や投稿型メッセージSNS『微博(Weibo)』でしばしば口コミ情報が投稿されていました」

 そう話すのは、クロスボーダーネクスト・CEOの何暁霞(カ・ギョウカ)さん。同社では、日本の企業や芸能人の中国向けSNSマーケティングのサポートを行っているため、こじるりの「中国留学宣言」に対する反応を、SNS上で目にしたという。

「今の中国は世界屈指の資本力がある国なので、ビジネス面で考えれば正しい選択といえます。ただ、中国のインフルエンサーたちは、彼女がなぜそこまで中国のエンタメ業界に参入したがっているのか不思議に思っているようです。『日本で普通に売れているのに』と」

 そもそも中国における“日本の芸能人”は、どのような位置づけなのだろうか。中国のSNSで、日本の芸能情報を発信している中国人ジャーナリストの第七(セブン)さんは、かつては日本のドラマをきっかけに人気を博す芸能人もいたが、「今の中国には日本のタレントを特別視する土壌はない」と話す。

「中国人が日本のドラマや映画をよく見るようになったのは、インターネットが普及した1990年代後半〜2010年代。当時の中国のドラマは質が悪く、日本のドラマが大人気でした。なので、石原さとみさん(35)や新垣結衣さん(34)、綾瀬はるかさん(37)など、ドラマによく出ていて“中国にはあまりいないタイプの美人”は、中国人のファンもたくさんいましたね」

 日本のドラマの中でも人気だったのは、石原さとみと山下智久(37)が主演を務めた『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(フジテレビ系)。お坊さんと英会話講師の恋愛、という斬新な設定が中国で大受けしたという。

「最近のドラマで話題になったのは『半沢直樹』(TBS系)シリーズ。作中の登場人物たちが、会社のために身を粉にして働く姿に、日々頑張って働く中国の人たちも共感したようです。堺雅人さん(48)のファンが増えたのはもちろん、半沢直樹に自分を重ねる人もたくさんいましたね。その流れをくんでか、日本で定着している“社畜”という言葉は中国でも流行しました」(何さん)

中国でも別格のジャニーズとは

 いつの間にか“社畜”は海を渡っていた。しかし、近年の中国におけるドラマ事情は変化しているそう。

「日本でも人気の『陳情令』など、最近は魅力的なストーリーの中国ドラマも登場しています。以前ほど日本のコンテンツが強いわけではなくなっていますね」(セブンさん)

 セブンさんが語るとおり、中国のコンテンツ力が上がっていることや、同国のテレビ番組に国外の芸能人が出演するには国の審査を通らなければならない、などのお国事情があり、中国芸能界への進出はハードルが高いのが実情だ。しかし、そんな状況下でも活躍している日本人はいる、と何さん。

小島瑠璃子

「'21年、SNSの微博上でフォロワーが多い日本人を調査したところ、第1位は中国のグローバルアイドルグループ『INTO1』メンバーの宇野賛多さん(24)でした。彼は中国の大人気オーディション番組『創造営2021』に出演してINTO1のメンバーに選ばれたひとり。日本では無名かもしれませんが、彼の微博アカウントのフォロワーは275万人を超えていますね

 オーディション番組で活躍してデビューすれば、スターダムに駆け上がれるのはどこの国でも同じなのだ。そして、中国で“もっとも有名”な日本の芸能人として必ず名前が挙がるのは、木村拓哉(49)だ。

「木村さんは中国でも別格の存在です。ジャニーズアイドルや元SMAPというイメージではなく“グローバルに活躍している芸能人”と認識されています。娘のKoki,さんも中国では大人気。3年前には歌手のジェイ・チョウさん(43)のMVに抜擢されて話題になりました」(何さん)

 一方、日本の男性アイドル勢はアジアでも押されぎみだとか。

「嵐やSnow Man、King & Princeなど、ジャニーズアイドルの熱狂的なファンは中国にもいます。ただ、現在のアジア圏に目を向けると、世界規模で人気のK-POPアイドルや中国のアーティストが続々登場しているので、ジャニーズアイドルの知名度は低くなっています」(セブンさん)

中国で成功する秘訣

 かつてはアジア人気を牽引していたジャニーズだが、現在は男性アイドル戦国時代に揉まれているようだ。そして、日本の芸能人が中国で活動するには“日中関係”への配慮を欠いてはならない、とセブンさん。その言動によって中国で炎上した日本の芸能人も少なくない。

「ウルトラマンは、中国でも超人気コンテンツなので、ウルトラマンの俳優も好感度が高いです。しかし、ウルトラマンダイナを演じたつるの剛士さん(47)は、靖国神社を参拝したために批判を集め、中国での人気が急落しました」

 また、SNSでの“投稿日”にも注意が必要だという。

「例えば、満州事変が勃発した9月18日は、日本人がどんな内容を微博に投稿しても炎上する可能性があります。こじるりさんも、今後はこれまで以上に中国のSNSを使うようになるはずなので、日中関係のナイーブな部分をサポートする人が必要になるかもしれません」(何さん)

堺雅人と浜崎あゆみ

 さまざまなリスクはあるものの、SNSをうまく活用すれば、日本人でもチャンスはある、と、何さんはアドバイスする。

「元AKB48の小嶋陽菜さん(34)は、RED上で中国のインフルエンサーとコラボをしたり、自身のファッションブランドを中国に展開したりして、ビジネスで成功しています。今の中国はSNSが大きな影響力を持っているため、テレビに出ることだけが芸能人としての成功ではありません。

“日本の芸能人”という枠にとらわれず、エッジのきいたアピールができれば、勝算はあるはず。そして、何よりも大切なのは、その国に対してリスペクトを持って活動すること。これは、中国に限らずどこの国でも同じでしょう。国の言葉を覚えて風習を学び、敬意を払いながら発信する。それを徹底すれば、中国でのブレイクも夢ではないかもしれません」

 こじるりのチャイニーズドリームの行方やいかに?

微博(Weibo) 上で人気のある日本人TOP10(2021年)

クロスボーダーネクスト (株)調査
※微博のインプレッション数・エンゲージメント数・検索回数などの社会的影響力の3つの合計によって算出された数値による調査結果

第1位: 宇野賛多 点数:78.37
中国の大人気オーディション番組「創造営2021」で勝ち抜き、今年の4月24日にINTO1というグループでデビューした男性アイドル

第2位:古川雄輝(俳優) 点数:64.74
中国で、誰もが憧れる男性の意味を表すニックネーム“男神”と呼ばれており、中国でも1000人以上を動員するファンミーティングを行っている

第3位:木村拓哉 点数:61.39

第4位:山下智久 点数:59.09

第5位: 点数:57.68

第6位:乃木坂46 点数:56.74

第7位:齋藤飛鳥(乃木坂46) 点数:56.42

第8位:浜崎あゆみ 点数:51.6

第9位:野田洋次郎(RADWINPS) 点数:51.13

第10位:蒼井そら(元セクシー女優) 点数:50.1

何暁霞(カ・ギョウカ)さん

 

■プロフィール
何暁霞(カ・ギョウカ)さん

クロスボーダーネクスト(株)CEO。早稲田大学に留学後、中国向けマーケティングの会社に入社しSNSマーケティング事業の立ち上げなどに携わる。2016年にクロスボーダーネクストを創業し、現職。


取材・文/大貫未来(清談社)

 

 
小島瑠璃子と原泰久氏のツーショット(ツイッターより)
中国の大学に留学することを発表した小島瑠璃子のツイート(本人のTwitterより)

 

小島瑠璃子

 

小島瑠璃子の『weibo』アカウントをクリックすると表示される画面(2020年8月5日現在)